「名古屋飛ばし」。さまざまな興行が、愛知を飛ばして別の都市へ行ってしまうことを揶揄した言葉だ。

名古屋周辺のエンタメファンにとっては実に忸怩たることだが、Jタウンネット編集部がこの「名古屋飛ばし」に関する投稿を募集したところ、実に多様な実体験が寄せられた。今回は、演劇ファンからの嘆きを取り上げたい。


1966年から2018年まで名古屋の興行界を支えた中日劇場。写真の中日ビルの内部にあった(Lombrosoさん撮影。Wikimedia Commonsより)

元SMAPですら飛ばされる

まずは、舞台を中心に活躍する俳優の村井良大(りょうた)さんのファンだという女性からのものをご紹介しよう。

私は、俳優・村井良大さんのファンです。2014年から、舞台を観に行っています。
地方公演が全くないわけではなく、あるのに、愛知にはこないんです。
県内に芝居やミュージカルに適した劇場・ホールが少ないから仕方ないかもしれません。
あきらめて、いつも東京へ行っています。大阪は、なんとなく悔しいので行きません。

名古屋で深刻な「劇場・ホール不足」。とくに商業演劇系では長らく名古屋での興行を支えてきた御園座・中日劇場・名鉄ホールのうち、御園座を除く2館が18年までに閉館。商業演劇を常打ちできる劇場不足に悩まされている。

関西でも旧新神戸オリエンタル劇場を改装した2.5次元舞台専用劇場が19年7月に開館予定だが、名古屋では2.5次元・ミュージカル・歌舞伎・小劇場演劇いずれもが既存の民営・公設のホールを借りて興行を行っているのが現状だ。

もう一人、名古屋市在住の作家を名乗る50代女性の方から。

「私の場合は、稲垣吾郎さんのお芝居が名古屋飛ばしなので東京か大阪に行っています。
お芝居関係はよく飛ばされますね。中日劇場もなくなってしまったのでこれからもいっそう飛ばされるでしょう」

確かに稲垣吾郎さんの舞台は、18年の主演作品「No.9 不滅の旋律」は東京・大阪・横浜そして福岡県は久留米シティプラザでの上演で、名古屋は飛ばされてしまった。他の公演も関東のみでの上演か、関東・関西での上演にとどまっている。

元トップアイドルの稲垣さんクラスでも「関東関西でできるからそっちに来てね」という無言のメッセージが興行主から発せられているかのようで、名古屋のエンタメファンの財布は苦しくなるし、この都市でエンタメ文化を育てづらくなってしまうだろう。

せめて劇場だけでも、御園座や(今はなき)中日劇場クラスのキャパシティを持つ劇場がもう1館建ってほしいところだ。

それにしても村井さんファンの方の「大阪はなんとなく悔しいので行かない」という意見に、名古屋育ちの母を持つ記者は共感してしまった。市の人口だけなら大阪約270万人に対し名古屋約230万人とそこまで大きな差はない。

引き続き、演劇に限らず、伝統芸能・音楽・テレビ・芸術など様々なジャンルで「名古屋飛ばし」の目に遭った!という体験談を募集したい。

※Jタウンネットでは、「名古屋飛ばし」にまつわる体験を募集しています。こちらのメール(toko@j-town.net)に、具体的なエピソード、あなたの住んでいる都道府県、年齢(20代、30代など大まかで結構です)、性別、職業を明記してお送りください。秘密は厳守いたします。