トップの日本商業開発は平均年収1368万円で3年後離職数はゼロ。

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従業員が少ない中堅企業にも好待遇の企業はある (写真:xiangtao/PIXTA)

4月に入り、就職活動は会社説明会から選考へと軸足を移しつつある。就職活動生は、いよいよ面接を受ける段階にあるだろう。一方、改元に伴う10連休前をメドに内定を出す会社も多く、内定率が昨年より上昇している。


一方、エントリーした企業の合否が出た結果、志望企業の「持ち駒」がなくなってきた学生もいるだろう。さらには、「ほかにもっといい企業はないか」と再び企業選びから始めている学生もいるかもしれない。

その際には、志望業界の中堅・中小企業にも目を向けてほしい。リクルートワークス研究所によると、2019年卒対象の大卒求人倍率は1.88倍だったが、従業員規模別では違った様相になる。従業員5000人以上の大企業では0.37倍と0.5倍を切る厳しい競争率になっている。つまり、大企業には就活生に有利な売り手市場という感覚はない。

大企業は売り手市場でも厳しい競争率

しかし、従業員300〜999人だと1.43倍と1倍を超え、300人未満では9.91倍と、超売り手市場になっている。そしてそうした中には、大企業よりもいい待遇の企業も少なくない。

そこで今回、中堅・中小企業を数多く掲載している、『就職四季報 優良・中堅企業版』(2020年版)から、従業員数1000人未満の企業を対象に、平均年収650万円超、かつ新卒3年後定着率が80%超の企業を抽出した。それが「給料が高く新卒も辞めない中堅企業ランキング」で、掲載4755社のうち222社が該当企業となっている。なお、平均年収が同じ場合は、3年後定着率が高い順に掲載している。

ランキングで平均年収1000万円を超すのは、1位の日本商業開発(1368万円)を筆頭に、2位九州朝日放送(1316万円)、3位ケネディクス(1107万円)、4位東北放送(1034万円)、5位サンケイビル(1013万円)の5社で、不動産とテレビ局が占めた。さらに不動産3社は新卒3年後定着率も100%だ。

日本商業開発は、商業施設建設を前提に底地を取得し、テナント誘致後に売却するビジネスを手がける。初任給はなんと50万円と大手企業を大きく上回る水準だ。サンケイビルは、傘下にフジテレビがあるフジ・メディア・ホールディングスグループに属しており、グループの業績を支えている存在だ。

年収800万円以上の28社を業種別で見ると、上位3業種は、不動産業9社(1位日本商業開発、3位ケネディクス、5位サンケイビル、6位平和不動産、8位ダイビル、9位東京流通センター、10位日本土地建物、17位京阪神ビルディング、26位ムゲンエステート)、建設業7社(18位コーナン建設、20位日比谷総合設備、21位菱機工業、22位不動テトラ、25位ショーボンド建設、27位大成設備、28位オリエンタル白石)、テレビ局4社(2位九州朝日放送、4位東北放送、16位高知放送、24位新潟放送)と好調な業界と規制業種となっている。

不動産やテレビ局、建設に好待遇企業が目立つ

ランキングに掲載した会社の新卒採用数は少なく、2015年の新卒採用者数の平均は10.8人だった。最も多い採用者数は、77位中部テレコミュニケーションの45人。同社は中部地方5県で各種通信サービスを提供している。最も少ない採用者数は1人で、16位高知放送など14社となっている。

新卒3年後定着率が100%の企業は半数以上の118社となっている。対象が多い業種は順に、化学14社、不動産12社、商社・卸売業11社である。大手企業の子会社だけでなく、独立系の企業も多い。

従業員規模が大きくない企業にとって、新卒採用や入社後の教育は、一般的に負担のかかるもので定着率も大手企業に比べて低い。その中で、採用数が少なく3年後定着率が高い会社は、働きやすい職場環境を整備するとともに、人材育成を行っているものと推察される。

ランキングに掲載した会社は、就職活動生にとって知名度が決して高いとはいえず、会社研究の対象となった会社は少ないだろう。超大手企業、大手企業だけでなく、中堅・中小企業にも目を向けてほしい。