筒香が訴えた野球指導の改革 「頭の中がアップデートされていない」

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 古い指導者たちはアップデートせよ!

DeNAベイスターズ筒香嘉智選手(27)が球界改革へ強烈なメッセージを投げかけた。アマ球界は子どもファーストでなく「甲子園を求めるのは大人」、「勝利至上主義の弊害」など、オフのイベントがあるごとに自らの考えを披露。現役トッププロ選手の勇気ある「ぶっちゃけ発言」が、大きな話題となっている。

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 1月14日、OBである大阪府堺市の少年野球チーム、堺ビッグボーイズのイベントで、筒香は自らの経験も振り返りながら球界に警鐘を鳴らした。

「僕は野球を始めた小さいころから、所属チームで『勝たなアカン』と言われ続けてきた。横浜高校でも、勝って甲子園大会に行き、日本一を目指すことが目標だった。もちろん勝つこと、勝ちを目指すことがダメだと言っているわけではない。感じるのは指導者の自己満足。ストレスを発散しているのではないかと思うこともある。勝つことが常に優先されるので、姑息な手を使って勝ちにいったりしても子供たちの将来のためにならない。一番勝ちたいのが、選手でなく監督やコーチだからだと思う」

「先日、ある少年野球チームを見学にいったら監督や指導者が、ミスをした選手に暴言を浴びせ、罵倒していた。『へたくそ』『使えないんだよ』『帰れ』。子供たちはできないのが当たり前なのに、なぜそれを怒るのか。本来は一番の味方になってあげるべき選手の親まで、選手を追い込むことがある」

「高校野球は甲子園があるために、かなりの数の選手がつぶれていると思う。でも、甲子園に本当に行きたいのは誰かというと、結局、監督や部長ではないかと。成長過程の子供たちに勝つことはそれほど重要だろうか。勝利至上主義の弊害の一つは、指導者の実績や功績、関係者や親など大人たちの満足のためのものになってしまいがちな点にある」

「強い打球を打つことが楽しさにつながるし、細かいことを言われずにフルスイングをしていた子供が、のちのちそれが役に立ったというケースがかなり多いと思う。小さいころから細かいことを詰め込みすぎると、小さくまとまってしまいがち。日本にスーパースターが出ないのはそのためだと思う」。

 1週間後の20日には、出身地の和歌山・橋本市スポーツ推進アドバイザーとして小、中学生のスポーツ指導者向けに講演。「筒香節」は止まらなかった。

「多くの指導者は自分が経験したことばかりを言っていると思う。頭の中がアップデートされていない。時代は明らかに違う。常にアップデートしていかないと、子どもたちの将来は守れない」

古くから言われる「上からたたけ」の打撃指導について「感覚は人それぞれ違う。プロでも活躍している選手ほど平行にバットを入れている。ちょっと下から入れている選手も多くなっている」。

 指導法に疑問を持っていた。ボールを手元まで呼び込んで打つこだわりを持つが、「ポイントを前にして引っ張れ」とあるコーチに指導されたことで、スランプに陥った時期があった。また15年に参加したウインターリーグで、開催地であるドミニカ共和国で視察した少年野球では、子どもを見守り、自主性を尊重し、才能が将来大きく開花するように指導していた。「日本の野球を何とかしないといけない」。心に引っかかっていた違和感が確信に変わり、行動に移すきっかけになった。

 野球界の改革を熱く訴えた20日はくしくも、センバツ出場が有力視される春日部共栄(埼玉)監督の体罰が発覚した。「野球界がいきなり大きく変わることはできないが、これからも情報を発信していきたい。最初は反対意見も出ると思うが、大人が変わらないと子どもがつぶれてしまう。失敗したら怒鳴ったり罵声を浴びせるのではなく、また次にチャレンジできる環境を作ってあげてほしい」。

 リスクの伴う発言であることは理解している。今後への影響が出るかもしれない。覚悟をもった27歳の叫びは、どこまで届くだろうか。

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]