カルチュア・エンタテインメントとTSUTAYA主催の映像企画発掘プロジェクト「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM 2018」(以下、TCP)。その最終審査会と過去受賞作の製作発表が2018年11月15日に恵比寿ガーデンプレイス ザ・ガーデンホールで開催された。

今回応募された企画数は史上最多となる670。審査の結果、グランプリは該当なしとなるものの、準グランプリ・TSUTAYAプレミアム賞を堀江貴大の「先生、私の隣に座って頂けませんか?(仮)」、準グランプリ・Filmarks賞を大川五月の「妊娠してる場合じゃないの!(仮)」が受賞。さらに審査員特別賞に塩田悠地の「Mirror Mirror(仮)」が選ばれた。

■準グランプリ・TSUTAYAプレミアム賞

「先生、私の隣に座って頂けませんか?(仮)」堀江貴大

[企画内容]人気漫画家の早川佐和子は、自身の夫が不倫をしている事実に気づき、ある新作漫画を描き始める。それは夫の不倫と自らの新たな恋愛を赤裸々に描いた不倫漫画だった。それを読んだ夫は不安と疑念に駆られていく。「佐和ちゃん、君も不倫してるの…?」不倫への報復活動を喜劇的に描く、“不倫エンターテイメント映画”。

[受賞後コメント]いろんな人に手伝ってもらって、ずっとこの映画のためにやってきたので、本当にうれしいです。

■準グランプリ・Filmarks賞

「妊娠してる場合じゃないの!(仮)」大川五月

[企画内容]予想外の妊娠から外国人とのハーフの子を産んだ菜摘。母親にも自分らしく生きる権利があると主張するも、どうやら日本社会ではご法度の様子。敢なく撃沈後、ヤケクソで投稿したあるツイートが、菜摘をさらに翻弄することになる。産後の仕事、黒人への差別意識など日本の問題点をコメディタッチで浮き彫りにする。

[受賞後コメント]心臓がバクバクなんですが、これからもっとがんばって面白いものを作って、何年後かにここへ戻ってお届けできるようになりたい。

■審査員特別賞

「Mirror Mirror(仮)」塩田悠地

[企画内容]カリスマモデルの”華”(本名:花子)には世間に隠している秘密があった。実は双子で、引きこもりの姉、葉子がいること。しかし、そんな姉がひょんなことから突然AVデビューをしたことで、花子は全てを失ってしまう。やがて二人は、世間を巻き込みながら争い、激しくアイデンティティを奪い合う。しかし、その中で彼女達は二人だけの結末を迎える。

[受賞後コメント](ファイナリストの企画が)どれも素晴らしかったので、自分が取れたらいいなくらいにしか思ってなかったんですが、本当に取れてよかった。

■その他の最終審査会選出4作品

大好きなアイドルのマネージャーになったアイドルヲタクが仕事と恋と趣味に葛藤する「半ヲタ!(仮)」(米村唯)。食糧難になった未来の日本で芋を求め、危険な旅をしていく様を描く「芋を旅する(仮)」(池田暁)。命に関わる強風に襲われた人々がどう行動するのかを描く暴風パニックムービー「Over the Wind(仮)」(齋藤栄美)。冤罪で服役した主人公が映画監督志望の留学生と真犯人を探していくロードムービー「throwback(仮)」(奥野俊作)。

主演の夏帆も登壇! 過去受賞作が劇場公開決定

過去の受賞企画から2作品、2019年の劇場公開が決定。製作発表が行われた。

ひとつは、2016年に審査員特別賞を受賞した箱田優子の「ブルーアワー(仮)」が、『ブルーアワーにぶっ飛ばす』というタイトルで2019年公開が決定。本作の発表では、箱田優子監督とともに、主演を務めた夏帆、シム・ウンギョンも登場。

箱田監督は「昨日ここに立って、もう(作品が)できたという感じ」と振り返った。主人公の砂田を演じた夏帆は「初対面から箱田監督と似ていると感じた」と述べた後、「砂田が大好き。一番やりたかった役に巡り合えたので、自分をさらけだそうとがんばりました」とコメントした。

登壇した主演二人のほか、渡辺大知、ユースケ・サンタマリア、でんでん、そして今回のTCPで最終審査員を務めた南果歩の出演も発表された。

さらに、2016年のTCPで準グランプリを受賞したヤング・ポール監督の「ゴースト・マスターズ!〜呪いのビデオができるまで〜(仮)」が『ゴーストマスター』というタイトルで公開決定。

登壇したヤング・ポール監督は「作品の根の部分は変わらず、他のスタッフが入ったことで思っていた以上の世界が開けたのが嬉しかった」とコメントした。

注目度を増す映像企画プログラム

過去受賞した企画では、2015年グランプリの『嘘を愛する女』(中江和仁監督)が1月に公開。また、同年の準グランプリ『ルームロンダリング』(片桐健滋監督)も7月に公開され、さらに11月からはその続編がTVドラマとして放送されるなど、次々と映像化が進んでいる。

TCPでは毎年、年齢、性別、国籍、学歴、プロ・アマを問わず企画を募集。受賞作品には5,000万円以上の総製作費・制作体制がバックアップされる。

応募数の増加が示す通り、原作小説やコミックの映像化が目立つ昨今の日本の映画業界において、オリジナル脚本を映画化できる稀有なプログラムとして注目度が高まっている。【取材・文/hikari、FILMAGA編集部】

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