「夏の風物詩」のイメージが強いそうめんですが、夏のみならず年中提供するお店があります。出店する際は周囲の猛反対にあったそうですが、今や多くの顧客の支持を得るに至った理由はどこにあるのでしょうか。MBAホルダーの青山烈士さんが自身の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』で、その驚きの戦略を紹介しています。

驚きを提供する

人気のそうめん専門店を分析します。

● 阿波や壱兆(そうめん専門店)

戦略ショートストーリー

そうめんが好きな方をターゲットに「オリジナルの出汁」や「あたらしいメニューの開発力」「顧客との関係性」に支えられた『そうめんが一年中楽しめる』等の強みで差別化しています。

日替わりの新メニューを提供し続けることで、顧客を飽きさせないとともに、そうめんが夏以外の季節でも楽しめることをアピールすることで、顧客の支持を得ています。

■分析のポイント

驚きを提供する

多くの方にとってそうめんは夏に家で食べるものと認識していると思いますし、これが世間一般の常識といえるでしょう。暑い日が続いていますから、そうめんが食卓に並ぶ頻度もあがっているのではないでしょうか。

しかし、そのそうめんを「阿波や壱兆」は年中提供しているのです。

「阿波や壱兆」の創業者である田中氏はそうめん専門店を出店しようとしたときに多くの方に反対されたそうです。多くの方にとっての常識とかけ離れていますからね。当然と言えば当然でしょう。

その反対を押し切って出店したわけですから味への相当の自信があったのだと思われますし、そうめんを食べることが当たり前の世の中をつくるという覚悟のようなものを感じます。

その覚悟が表れているのがいままでに開発したレシピ数が400を超えていることです。このレシピが本にもなっていますが、そうめんのレシピを400以上も考案することは並大抵のことではないと思いますし、いまも増え続けていることはすごいとしか言えないですね。

そして、メニュー開発とともにすばらしい取り組みだと思うのが、常連客の好み(だしの濃さ)を覚えていることです。これにより顧客の好みに合わせて出汁の濃さを調整して提供しているわけです。

顧客の好みに合わせて商品やサービスを提供するということは顧客に密着する戦略のセオリーともいえますが、実行することは簡単ではありません。「阿波や壱兆」は実行できているからこそリピート客がしっかりとついているのでしょう。

また、顧客の気持ちは移ろいやすいものですから、どんなに自分の好みをわかってくれていても足が遠のくこともあります。それを防ぐためのカギにもなるのが、メニュー開発によってもたらされる「驚き」が味わえることです。「阿波や壱兆」にいけば、新しいそうめんと出会えるという期待感が顧客にあるからこそ、季節を問わず、多くの方が来店しているのでしょう。

最近では姉妹店である「そうめん居酒屋壱兆庵」をオープンさせましたが、今後、どのような動きがあるのか注目していきたいです。

◆戦略分析

■戦場・競合

戦場(顧客視点での自社の事業領域):そうめんが好きな方競合(お客様の選択肢):うどん屋、そば屋、パスタ店 など状況:国内のそうめんの生産量は縮小傾向のようです。

■強み

1.そうめんが一年中楽しめる

季節に合わせたメニューが豊富毎日食べても飽きない11時オープン翌朝9時クローズ

2.新しいそうめんと出会える

和・洋・中はじめ様々な味、新しい食べ方を発見できる驚きが味わえる

3.出汁の濃さを調整してくれる

顧客の好みに合わせて提供

→顧客の好みを覚えている

★上記の強みを支えるコア・コンピタンス

250年の歴史を持つ徳島の半田そうめん(太めで、コシが強く、もちっとした食感、喉ごし良しが特徴)店主の母が作ったオリジナルの出汁(だし)そうめんレシピの開発力顧客との関係性(アットホームな店舗の雰囲気)

上記のように、オリジナルの出汁とメニュー開発力などが組み合わさることで強みを支えています。

■顧客ターゲット

そうめんが好きな方

◆戦術分析

■売り物

そうめん

5つのそうめん定番メニュー

→代表的メニューは徳島の特産品であるすだちを薄くスライスして丸ごと入れた「すだちそうめん」。その他の定番メニューは「阿波や壱兆温めん」「素そうめん」「田舎ぶっかけ」「ねぎそうめん」。ハーフサイズも対応可能日替わりの変わりそうめん

→いままでに開発したレシピは400種類を超えています

そうめんの他に徳島を意識したおつまみやドリンクも用意している

■売り値

500円〜1,500円程度

■売り方

TVや雑誌など、多くのメディアにとりあげられているレシピ本を出版している

■売り場

東京都東中野に店舗を構える。カウンター席10席。オンラインショップにて、出汁や半田そうめんを販売している

image by: 『 阿波や壱兆』公式ホームページ

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