すき家の給与が吉野家より100万低い理由

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あなたは予算書・決算書を正しく理解できているだろうか。「プレジデント」(2018年3月19日号)の特集「会社の数字、お金のカラクリ」では、そのポイントを8つのパートにわけて解説した。第3回は「割算思考」について――。

吉野家VSゼンショー、好調なのはどっち?

決算書の読み方をレベルアップしたいなら決算数字を割算する「割算思考」を身につけましょう。割算分析によって、規模の異なる同業他社とも比較が可能になります。ここでは牛丼チェーン大手の吉野家HDと、ゼンショーHDの決算数字を基に解説します。その結果が図です。

まず全体の売上高から、原材料費などの売上原価を差し引いた売上総利益を総売上高で割った「売上総利益率」では吉野家HDが、約6ポイント上回っていることがわかります。私は同社の内部事情に精通しているわけではありませんが、吉野家HDはゼンショーHDと比較して「はなまる」の讃岐うどん、「吉野家」の牛丼など数種類の食品に注力することで、企業全体で仕入れを効率的に行い、相対的に原価を抑えられたのではないか、と推定できます。

次に、「売上営業利益率」を見ると吉野家はゼンショーに約2.5ポイント下回る結果に。飲食業界は、人件費に多くの費用が必要な業態です。そこで、決算書の詳細を見ると、吉野家は売上高に占める人件費、特に正社員への給与比率が高く、社員の平均年齢は10歳以上、年間平均給与も100万円以上ゼンショーHDを上回っています。

■決算書は世の中の誰もが閲覧できる情報

また割算思考を用いることで決算書上には直接記載されない項目の分析も可能になります。例えば、「有利子負債÷営業CF」からは、企業の借り入れが何年分の営業活動によって返済可能かがわかります。これが5(年)を超えるならば、借り入れの割合が多く、財務活動を見直す必要があるかもしれません。

また、仕入れから売り上げにつながるまでの期間「在庫回転期間」や、売り上げの発生から現金化につながるまでの期間「売上債権回転期間」からは企業の安定性・効率性がわかります。

上場企業の決算書は世の中の誰もが閲覧できる情報です。分析手法を身につけて、企業の課題分析のために積極的に活用してみましょう。

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木村俊治
木村会計事務所代表
公認会計士、税理士。神戸大学経済学部卒業。主な著書に『1分間決算書』『決算書が読めない社員はいらない』(ともにクロスメディア・パブリッシング)などがある。

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(木村会計事務所代表 木村 俊治)