仮想セネガルのマリに苦戦。個人能力に圧倒される場面も散見された。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

写真拡大 (全2枚)

 3月23日にベルギーで行われたマリとの親善試合を1-1の引き分けで終えた日本代表。この結果は、韓国でも報じられている。
 
「日本、“W杯予選・無勝脱落国”のマリに1-1の脂汗のドロー」(『スター・ニュース』)
「マリに辛うじて引き分け……依然として暗雲の中から抜け出せない日本」(『Best Eleven』)
「“終了直前に同点ゴール”日本、マリに1-1でギリギリの引き分け」(『sportalkorea』)
 
 など、ロシア行きに失敗した相手に苦戦を強いられたと強調するメディアが多い。
 
「日本、マリ戦の結果が衝撃的でしかありえない理由」と見出しを打ったのは、『スポーツ韓国』だ。
 
 記事は、マリは日本がロシア・ワールドカップのグループリーグで対戦するセネガルを想定した相手であったと紹介。さらに「日本にとっては意味が小さくない試合でもあった。昨年12月のE-1選手権の韓国戦で1-4の惨敗を喫して以来、初のAマッチだったからだ」と、昨年12月の日韓戦の結果も改めて振り返りながら、「日本の立場からすれば、ワールドカップの仮想敵を破り、E-1選手権以降の流れを断ち切ることが理想的なシナリオだったはずだ」と、この日の試合の位置付けを説明した。
 
 そのうえで、「アフリカ予選“無勝”の脱落チームであり、しかも主力が招集されていない状態のマリを相手に見せた無気力なパフォーマンスは、ワールドカップに向けて準備している日本にとっては衝撃的な結果でしかありえない」と指摘した。
 
 また、『Best Eleven』は、「ハリルホジッチ監督は、ロシア・ワールドカップまで外部からの厳しい批判にさらされ、茨の道を歩むことは避けられないように見える」と、指揮官の責任の重さを強調している。他紙と同様に、この日の試合が日韓戦の大敗以降初のAマッチであったと前置きしながら、「まして今回はE-1選手権とは異なり、ハリルホジッチ監督が呼びたがっていた海外組も十分に招集した状態だった」と綴り、日本のメディアから相次いで批判が挙がっていると報じた。
 
 もっとも、試合の内容に対する視線も厳しい。
 
『スポーツ・トゥデイ』は、「“ロスタイムに同点ゴール”日本、苦戦の末にマリと1-1でドロー」とヘッドラインを置き、ゲーム序盤は日本も着実に試合を展開していたとしながら、「一つのファウルが試合の雰囲気を変えた」というPKで失点した以降の試合内容については、「日本は後半45分までじれったいパフォーマンスを見せ、なかなかチャンスをつかめなかった」と酷評した。
 また、前出の『スポーツ韓国』は、より詳細に日本の試合展開を分析している。「日本サッカー、鈍い矛に錆びた盾まで“総体的難局”」と題した記事では、「ハリルホジッチ監督は1.5軍レベルのラインナップで試合に臨んだ」としながら、日本の攻撃について、「ことごとく決定力が欠けていた」と指摘。
 
 守備については、「日本はサイドや守備の裏のスペースを突くマリのスピードに危なっかしい展開が続いた。GKの好セーブで失点を免れた」と綴っている。また、同メディアは「狙いを外したキックがPKに、あっけなく崩れた日本の守備」とした記事も掲載し、この日の失点について、「日本の立場からすれば、無意味に与えてしまったPKだった」としている。
 
 ただ、それでも韓国メディアが高く評価した選手もいた。「接戦の日本、慰めは帰ってきた本田と浮上した中島」と報じたのは、『SPOTVNEWS』だ。
 
 記事は、「後半22分に本田が投入されると、パスが少しずつ回るようになった。だが、他の選手の両サイドに渡すパスやペナルティエリア内に入れるパスが不正確で、ゴールにはつながらなかった。攻撃の起点となる本田だけでは、流れを逆転させることには限界があった」と本田のパフォーマンスを評価。
 
 一方、中島については、「日本のバランスを取ったのが中島だった」とし、同点ゴールを決めるまでの展開を詳しく報じている。記事は、「格下を相手に問題点ばかりが露呈した日本の親善試合だったが、本田の復帰と中島の登場は、それでも慰みになった」と締めくくった。
 
 ベルギー遠征の初戦で、苦しい戦いを展開した日本。韓国も現在、日本と同じく欧州遠征に臨んでいる(24日/北アイルランド戦、28日/ポーランド戦)だけに、ライバル国の日本の戦いにも注目が集まっている状況だ。
 
 27日に行なわれるウクライナとの第2戦にも、韓国メディアの関心が注がれるに違いないが、日本は次戦で鬱憤を晴らすことができるか。
 
文●李仁守(ピッチコミュニケーションズ)