手柄総取り!「会議まとめるおじさん」の実態
まるでハゲタカ「会議まとめるおじさん」の被害に遭っていませんか?(イラスト:ずんずん)
会社がつらい、辞めたい……。そう思う人は、仕事そのものというより、職場の人間関係で行き詰まっていることも多いかもしれません。自分自身に原因があるとは限りません。会社のあちこちに生息する「困ったおじさん、おばさん」に追い詰められていることも。
そんな恐るべき現場を数多く見てきたのが、元外資系OLでコラムニストのずんずんさん。この連載では、そんな彼らの生態を解き明かし、対策も考えていきます。
こんにちは! ずんずんです。
旧態依然とした会社体質について問題提起するこの超社会派連載(?)も5回目となりました。
ネタを探すべく、
「困ったオフィスのおじさんはいねぇが」
となまはげのごとく夜の街を徘徊していた私です。
決して遊んでいたわけではありません。普段はTVを見たり、家でゴロゴロしたりしています。ふう……忙しい。
そんな中、友人たちと焼き肉を焼いていたところ、その友人の1人から、
「ずんずんさん、”会議まとめるおじさん”について書いてくださいよ」
と依頼を受けました。
会議まとめるおじさんとはいったい……?
と考えておりましたが、話を聞いていくうちに
あっ! 確かに会社にいたわ! 会議まとめるおじさん!
と、ハイボール片手にひざをたたきました。
まとめてるだけで評価されてしまうおじさん
会議まとめるおじさんとは、会議の最後の最後で、すべての意見をまとめて、いちばんいい意見をあたかも自分の意見のように発言して、おいしいところだけを持っていくおじさんです。
このおじさんはまとめてるだけで、特になにか自分で意見を言っているわけじゃないのに評価されてしまうんですね……。
あなたのオフィスにもいませんか?
今回の困ったおじさん、エントリーナンバー5「会議まとめるおじさん」について、その傾向と対策を取り上げていきます。
会議まとめるおじさんに困らされているIさんが勤めるのは、伝統のある専門商社です。長引く不況のあおりを受けて採用を差し控え、現在30代のIさんも若手といわれるほどでして、平均年齢がやや高めな会社でありました。
Iさんは新卒からこの会社に入り、いくつかの部を異動して今は海外とやり取りがある部署で働いています。
この会社は非常に保守的な会社でしたが、Iさん自身は熱い魂の持ち主でした。自分を育ててくれた上司や先輩、そして会社のために何ができるか、そしてこの会社が社会に貢献できることは何かとつねに考えているような男でした。この冷めた時代には珍しいタイプです。
しかし、そんなIさんにも会社に不満がありました。
それは、会議まとめるおじさんの存在です。
おじさんは、Iさんの直接の上司ではありませんが、上役にあたります。会議でIさんがどんな意見を言っても、最後の最後でこのおじさんが全員の意見をまとめ、Iさんの意見をあたかも自分が考えた意見かのように言ってしまうのです。そして、そのおじさんがなぜか「さすが! あの人はよく考えているよ」と評価されてしまうのです。
これではIさんとしては面白くはありません。会議まとめるおじさんが評価されているのを聞くたびに、
「いやいやいや! 何見てるねん! あいつ人の意見パクっただけやろ!!?」
と心の中でエセ関西人になってしまうこともしばしばでした。
自分のやりたい仕事をやるために
オーディエンスというものはなんて、浅慮なんだ……。
と自分の環境を嘆きながらも、Iさんはこのぐらいで会社を辞める気はありませんでした。前述のようにIさんは熱いソウルを持った男であり、自分の会社こそが社会的に意義がある会社だと信じていました。
そして、自分のやりたい仕事をやるためには、会議まとめるおじさんに、おいしいとこどりをされている場合ではなかったのです。
Iさんはこのおじさんにどうしたら勝てるか知っていました。それはおじさんよりも早く、したり顔でみんなの意見をまとめて、いちばんいい意見をあたかも自分の意見かのように言うことです。
きっとそうすれば、自分も会議まとめるおじさんと同じように評価されて、昇進だって早くなるでしょう。
しかし、それでは会議まとめるおじさんと同じ土俵で戦うようなもの……。
他人のふんどしで相撲をとるようなことは、Iさんはできないと考えていました。
そもそもそんなことをしていては、組織の中にイノヴェーションは生まれないとIさんは考えていました。
会議まとめるおじさんと同じ土俵に立たず、かつ自分の意見が適切に評価されるためにはどうしたらいいか……。Iさんは熟考を重ねました。
長きにわたる歳月の中で、Iさんが思いついたのは、
そうだ! ダミーの意見を入れよう!
ということでした。
会議まとめるおじさんは、まとめる能力が高いだけであって、個々の意見をちゃんと理解したり考えたりするわけではありません。
そこでIさんは、おじさんがまとめる発言をした瞬間、その意見に乗っけるようにして、自分の真の意見を言うようにしたのです。
つまり、Iさんは「ダミーの意見」と「真の意見」の2つを前もって用意して、ダミーの意見をおじさんをはめるトラップとして活用するようにしたのです。
ちょっと面倒ですが、はたから見ると、Iさんのほうがおじさんよりもさらに良い意見を言っているように見えます。そしておじさんからすると、まとめたところにさらに意見を上乗せされてしまったら、これ以上なすすべがありません。
こうして、Iさんは会議のイニシアチブをとるようにしていきました。
Iさんの会社は保守的な会社です。そのため、若手であるIさんがいきなり大きな仕事をまかされたりすることはありません。それでも、Iさんが会議でおじさんを押しのけてイニシアチブをとるようにしてから、周囲の目も変わっていきました。こうすることで、自分のやりたい仕事や自分の興味のある仕事にかかわりやすくなっていったのです。
恨みを買わず、かわいがられることも必要
Iさんの賢いところはこれだけではありませんでした。Iさんは、ダミーの意見を使って、つねに会議まとめるおじさんをやり込めていたわけではありませんでした。
3回に1回ぐらいは、いや……4回に1回ぐらいは会議まとめるおじさんに勝ちを譲ってあげるようにしていたのです。
おじさん自身、人の意見をパクっているなんて重々承知です。だからといって、それを毎回毎回やり込めていたら恨みを買ってしまうでしょう。そこで、たまには勝ちを譲ってあげることで、おじさんに花を持たせたのです。
そうすることで、会議まとめるおじさんに恨まれず、逆に「あいつはできる奴だ」とかわいがられるようになったそうです。
この試合に負けても勝負に勝つ心意気、まねしたいものですね。といったところで今日は失礼します☆