売るに売れなくなった家で「稼ぐ」方法

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決して年収は高くないのに、お金を貯められる人がいる。どこか違うのか。雑誌「プレジデント」(2017年2月13日号)の特集「金持ち夫婦の全ウラ技」より、人生の3大出費のひとつ「住宅」にまつわる知恵をご紹介しよう。第7回は「不動産活用」について――。(全12回)

不動産会社が売却を勧める理由

人口が減少傾向にある昨今、都市部でさえ空き家が増え、スポンジ化現象と呼ばれる状況です。私の主戦場である世田谷区でも、そんな時代の波を感じています。相続などで手に入ったり、転居によって不要になった不動産は売られるか、そのまま放置されていることが多いですね。実際、売るときにしか専門家に声をかけない人がほとんどです。

大手の不動産会社に活用方法を相談しても、結局、売る一択になってしまいます。大手は売買を行って初めて大きな利益になりますから、「売るよりアパートを建てたほうが、長い目で見れば得ですよ」といったアドバイスは出てきません。

しかし、都市部、特に東京や大阪などの大都市ならば、不動産を活用するすべは少なからずあります。

まず、1番コストがかからないのがコインパーキング。更地にして駐車場にしたてれば、1〜2年で初期費用はペイします。ただし、空き家を更地にしてしまうと、固定資産税が約6倍に跳ね上がってしまい、収益を大きく圧縮してしまう可能性もありますので注意しましょう。トランクルームも人気です。特に最近は業者の方から「もし物件があったら紹介してくれ」という声をよくかけられるので、まだまだ需要が増えそうです。

初期費用を十分にかけることができるなら、リフォームして貸家にしたり、更地にしてアパートを建てるといった選択もあります。入居者があれば長期間の収益が見込めます。

海外赴任等によって一定期間、空き家になるケースもビジネスマンには多いでしょう。その場合も、面倒がらずに人に貸せば住宅の傷みが少なくてすみます。この場合、たとえ賃料が安くなっても「定期借家契約」にして、契約満了時には必ず家を明け渡してもらえるようにしておきましょう。

マンションでも、シェアハウスにしたり民泊の施設として貸し出すという方法があります。法整備も進んでいませんし、管理規約で民泊を禁止しているケースもありますので、正当にやらないとトラブルになりますが、初期費用をかけずにお金にしやすい方法だと思います。

では、都市部以外の不動産はどうか。1番困るのが、田舎の実家から相続した田畑ですね。一昔前ならソーラーパネルを設置して売電という手がありましたが、最近では下火です。タダで自治体などに寄付すると申し出ても、引き受けたがらないケースが増えています。この場合は農林水産省の農地集積バンクに貸したり売ったりするという方法があります。農地の課税が強化されているので、節税にもなります。

このように不動産を持っていれば継続的に収益を上げる方法はいくらでもあるのです。にもかかわらず、不要な不動産をそのままにしておくと、収益にならないどころか、リスクにもなるということも知っておいてほしいですね。固定資産税を払い続けなければならないだけでなく、誰かが勝手に住みついて周囲の治安が悪くなったり、火事を出す可能性もあります。

だから大手の不動産会社だけでなく、地元の不動産屋にも声をかけてみるといいと思います。「倉庫を欲しがっている商店が多いから、倉庫にしてみては?」といった情報が入る可能性もありますよ。

Answer:不動産は売ってしまう前に、活用法を考えよう

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楯岡悟朗(たておか・ごろう)

世田谷区尾山台のきねや不動産取締役。2級ファイナンシャル・プランニング技能士の資格を持つ不動産活用コンサルタント。著書に『ここで辞めたらただの負け犬!』(中経出版)がある。

 

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(きねや不動産取締役 楯岡 悟朗 構成=宇野アキラ 撮影=北村泰弘)