非難浴びるピケ…ナダルは誹謗中傷に苦言「過激派の表現手段」

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 2018 FIFAワールドカップ ロシア 欧州予選の最終2試合に向けてトレーニングを開始したスペイン代表。しかし、DFジェラール・ピケ(バルセロナ)に対するサポーターの誹謗中傷が話題の殆どを占めてしまっている。

 引き金となっているのは、バルセロナを州都とするカタルーニャで1日に実施されたスペインからの独立是非を問う住民投票だ。以前から出身地カタルーニャの独立を支持する姿勢を見せてきたピケは、スペイン政府が違法とする今回の投票に参加することを明言した。そして、政府が派遣した警官隊が投票する住民の制圧に乗り出し、800人以上の負傷者が出るという惨事が起きると、涙ながらに「自分たちはただ投票をしたかっただけ」と訴えたうえ、マリアーノ・ラホイ首相を「あの程度のレベルしかない。英語を全くわからずに世界を回っている」と痛烈に批判した。

 以上のような政治的なスタンス、そして宿敵レアル・マドリードに対する歯に衣着せぬ発言から、スペイン代表ではホームゲームでもブーイングを浴びるのが常となっているピケ。今回の言動が火に油を注ぐ結果となり、2日に行われた初日の練習では一部のサポーターからおびただしい音量の指笛や野次を浴びることとなった。

 だが、このような状況は他の代表メンバーにとっても迷惑な話であり、練習後の会見に臨んだMFチアゴ・アルカンタラ(バイエルン/ドイツ)は、ピケに関する質問ばかりが飛ぶことに「フットボールの話ができずに居心地が悪い」と遺憾の意を表した。また、MFコケ(アトレティコ・マドリード)に至っては、「同じ話の繰り返しだ。このテーマにはうんざりしている」と述べ、会見を途中で打ち切っている。

 当然ながら、この話題はスペインのスポーツ界全体にも波及。レアル・マドリードのファンで知られるテニスのラファエル・ナダルも、現況に苦言を呈している。カタルーニャでの惨事について、「心臓が締め付けられる思いをした」と告白したナダルは、ピケに罵詈雑言を浴びせかける人々を非難した。

「ブーイングを聞くのは、それが誰に対するものであっても不快なものだ。また、それを行う者も理解できない。ラディカリズム(急進主義)が蔓延するのは悪しきこと。極端な思想を持った者、狂信的な行為を行う者は、何らポジティブなものをもたらさない。一部の人々のピケへの態度も間違いなくそれに該当する。過激派の表現手段としか言いようがない」

 なお、欧州予選のグループGで首位を走るスペイン代表は、2位のイタリア代表に勝ち点で「3」、得失点差で「18」の差を付けており、アルバニア代表と対戦する6日のホームゲームに勝てば、予選突破が事実上決定する。

 自身を敵視する人々からのブーイングは免れようがないピケだが、スペイン代表を11大会連続のW杯出場に導く活躍を見せ、それ以外のサポーターから拍手を贈られる姿に期待したい。

文=北村敦