シャロッツビルで行進する白人至上主義者の団体 ©共同通信社

 これはトランプ政権始まって以来、最大の危機だ。

 ことの発端は、8月12日、米東部バージニア州シャロッツビル市において、白人至上主義を掲げるKKKなどの団体、数百人が“抗議デモ”を行ったことにある。彼らは南北戦争時に奴隷制存続を主張して敗れた南部側の英雄であるリー将軍の銅像を市が撤去すると決めたことに対して、抗議したのである。

 これに反発した反対派のグループと衝突、白人至上主義者側の車が群衆の中に突っ込み、1人が死亡、19人がケガをする事態となった。

 ところが、その3日後、トランプ大統領は記者会見で、手元のペーパーを離れて、こうまくしたてたのである。

「双方とも悪い。あなた方も同じ意見だろう。ジョージ・ワシントンは奴隷を持っていた。その像も取り外すのか。トーマス・ジェファーソンはどうだ?」

 トランプ氏が話している間、ケリー首席補佐官は、じっと俯くほかなかった。

「トランプ氏は、白人至上主義者の名前も出さず“各方面”という曖昧な言葉を使う一方で、反対派を“オルタナ左翼”と呼びました。アメリカという国の成り立ちからしても、大統領が白人至上主義者を明確に批判しなかったことが問題視されました」(現地特派員)

 翌16日、ミリー陸軍参謀総長は、〈陸軍は人種差別や過激主義、憎しみを許さない〉と綴り、空軍のゴールドフィン参謀総長もこれに同調。各軍トップが大統領を暗に批判するのは異例のことだ。

 さらにアップルのティム・クックCEOは、「双方を同じとみなすことは、米国人としてのわれわれの理想に反する」と発言し、ユダヤ人団体への寄付を表明した。

「とりわけ経済界にとって、この発言は致命的です。元ゴールドマン・サックスのコーン国家経済会議委員長が政権を去るのでは、とも囁かれました」(前出・特派員)

 トランプ氏は18日になって、人種差別的な発言で知られるスティーブ・バノン首席戦略官兼大統領上級顧問を解雇。事態の収束を図ったが、政権の一部からはついに「道徳的権威を示せないものは大統領として失格だ」と、トランプ解任を求める声まで上がり始めている。

(小山 貴)