埼玉県のとある路線バスで、2017年7月1日に通常1時間強の道のりが6時間かかるという、大幅な遅延見込みとこれに伴うダイヤ変更が事前に告知されています。何が起こるのでしょうか。

減便、終点変更も予告

 西武観光バス(埼玉県所沢市)は、同社が運行するとあるバス路線にて、2017年7月1日(土)に通常1時間10分の道のりが、約6時間かかるという大幅な遅延見込みを発表、当日に向け随時追加情報を案内しています。


三峯神社の駐車場にある三峯神社バス停で発車を待つ西武秩父駅行き。7月1日は、約2.2km西武秩父駅寄りのヘリポート発着に変更される(2014年8月、恵 知仁撮影)。

 その路線は、埼玉県秩父市の西武秩父駅と、「秩父三社」のひとつとされる三峯神社を結ぶ「三峯神社線」です。当日は通常1日7往復を3往復とし、運行区間を三峯神社終点から2.2km手前のヘリポートまでに変更するうえ、定刻では1時間10分という西武秩父駅からヘリポートまでの所要時間見込みを、「更に遅延の場合あり」としたうえで約6時間と予想しています。

 さらに、西武秩父駅午前8時30分発、午前9時10分発のバスにはそれぞれ続行便(2号車以降)を運行予定としているものの、路線バスのため運行台数や乗車定員に限りがあるとし、「満員の場合ご乗車いただくことが出来ません。特に途中停留所からご乗車のお客さまはご注意ください。西武秩父駅からのご乗車をお勧めいたします」といったアナウンスもしています。なお、本記事内の情報は、2017年6月29日時点のものです。

6月には最大5時間40分の遅延も

 ダイヤ変更の理由は、三峯神社が毎月1日限定で頒布する『白い氣守』(「氣」の一字が書かれた白いお守り)頒布日にあたり、かつ7月1日が土曜日であることから、「著しい渋滞」が予想されるためだといいます。西武観光バスの親会社である西武バス(埼玉県所沢市)に話を聞きました。

――これほどの運休と遅延の予想を出すのはなぜでしょうか?

 多くのメディアに取り上げていただいていることもあり、毎月1日に三峯神社へ参拝される方が増えています。このためマイカーが神社の駐車場から出てこられず、駐車場の入場待ち渋滞が発生しており、バスにも遅延が生じています。事前の告知は、あらかじめお客さまにその遅延情報を提供して、ご理解とご協力をお願いするためです。

 遅延見込みについては過去の実績を元に推測していますが、5月1日はゴールデンウィーク期間中だったこともあってか、平日にもかかわらず11kmの渋滞で最大4時間55分、6月1日は同じく平日でしたが12kmの渋滞で最大5時間40分の遅延が発生しました。7月1日は土曜日ということもあり、さらに著しい渋滞が予測されています。

いつからこの状況? 運転士や乗客はどうしてる?

――この状況はいつからなのでしょうか?

 2015年の段階では20分から1時間程度の遅延だったものが、2016年には2時間以上になることが多くなり、同年10月以降には3時間以上になりました。直近の頒布日である2017年6月1日(木)に発生した最大5時間40分の遅延が、過去最高です。

――実際にどれほどの人が乗るのでしょうか?

 4月1日(土)には往復合計で1199人、5月1日(月)には1019人、6月1日(木)には1194人のお客様にご乗車いただいています。土曜だった4月と木曜だった6月とでほとんど人数が変わっていないことからも、7月には大幅な増客が見込まれます。

――満員で乗れない場合もあるといいますが、運休するのはなぜでしょうか? 臨時便は出さないのでしょうか?

 渋滞により夕方までに神社へ到着できない恐れがあるため、往路は西武秩父駅8時30分発、9時10分発、9時30分発のみとしています。お客さまのご利用状況に応じてそれぞれの出発時間に続行便を出しており、過去には8台を運行したこともあります。

代替ルートなし 予備運転士も同乗し交代で運行

――運転士や乗客は6時間ものあいだ、どうしているのでしょうか?

 運転士はもちろん運転に専念していますが、長時間に及ぶことから安全対策と過労防止のため、予備運転士が同乗して交替で運行しています。お客様のなかには、渋滞が始まった時点でバスを降りて、30分から1時間ほど歩かれる方もいらっしゃいます。

――今後はどう対応していくのでしょうか?

 当社としては、今後も当路線をご利用されるお客さまに対して適切な情報提供を行ってまいります。なお、路線バスでは長時間お立ちになられるお客様も多いため、少しでも快適に参拝いただけるよう、確実に座ってご乗車いただける1日限定のツアーバスも2017年3月から運行しています。ただし、1日が平日に当たる月のみの運行です。


三峯神社の随身門。お守りの頒布はここよりも駐車場に近い三ツ鳥居周辺で行われる(2014年8月、恵 知仁撮影)。

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 三峯神社線のバスは、秩父地方の主要道路である国道140号を通りますが、山間の1本道で代替ルートはないそうです。

 ちなみに、バスを降りてからお守りの頒布場所までも行列ができます。西武バスによると、西武秩父駅8時30分発の便に乗った人がお守りを手に入れられるのは、14時から15時ごろだといいます。

 なお、お守りの頒布数や参拝者数について、三峯神社は非公開としています。

【地図】西武秩父駅から三峯神社までのルート


バスは国道140号、県道278号を経由して西武秩父駅と三峯神社を結ぶ(国土地理院の地図を加工)。