噂のCore i9シリーズ5モデルをインテルが発表。12から18コアを備えるデスクトップ向け最上位CPU
インテルが、台湾で開催中のComputex 2017において、ここ数週間ウワサとなっていたデスクトップ向けCPUの最上位シリーズ『Core i9』5モデルを正式発表しました。米国での価格は999ドルから1999ドルまで。

特徴は最上位で18コア/36スレッド、最下位でも12コア/24スレッドと、インテルのコンシューマー向けCPUとしては異例とも言えるほどコア数が多いこと。現行製品では最上位となる『Core i7-6950X』が10コア/20スレッドだったことを考慮すると、一気に1.8倍となる格好です。

【ギャラリー】Intel Xシリーズ プロセッサ(Core i9) (13枚)



開発コードネームはSkyLake-X(スカイレイク・エックス)、またはBasin Falls(ベイスン・フォールズ)。これまで通称『HEDT』(HighEnd DeskTop:超高性能デスクトップ)と呼ばれてきた、エンスージアスト向けCPUに位置づけられるモデルです。

さらに同じCPUソケット(LGA2066と呼ばれる新形状を採用します)では、Core i7の3モデル、そしてHEDTとしては初となるCore i5の1モデルが加わります。



このあたりの事情に詳しい方であれば、この「HEDT版にi5が加わる」というニュースは、Core i9と同じぐらいインパクトの大きなものである、ということがおわかりいただけるかと思います。

さて、今回発表されたHEDT級CPU計9モデル全体を見た際、現行モデルと比べた主な特徴は以下のようになります。現行ではCore i7のみ(ただし最上位のみExterme Edition)だったシリーズにi5とi9が追加最上位製品は物理18コアに(従来は10コアまで)全体としての呼称として、『Core Xシリーズ・プロセッサ』が追加CPUソケットが新型のLGA2066に変更。合わせてチップセットは同時発表の『インテル X299』に


中でも注目は、シリーズが3つとなった点と相まって、価格幅が広くなったことです。

そもそも、現行の第6世代HEDT版CPUはわずか4モデル(そしてしつこいようですがCore i7の1シリーズ)のみで構成され、また最廉価モデルとなる『Core i7-6800K』でも6コア/12スレッドで434ドル。最上位となるCore i7-6950X(XはExterme Editonの略)では10コア/20スレッドで1723ドルと、かなり高級な位置づけでした。

さらにHEDT版では、すべての製品が内蔵GPUを持たないため、ビデオカード(グラフィックスボード)が必須に。一般的なデスクトップ版CPUと比べると、この点でもコスト的に不利でした。



しかし今回(第7世代)では、最上位となる『Core i9-7980XE』でこそ1999ドルと「上限」は上がりますが、その分冒頭でも紹介したようにコア数は激増と言っていいレベル。

現行で中位となる『Core i7-6900K』は1089ドルで6コア/12スレッドですが、第7世代では『Core i9-7900X』が現行最上位と同じ10コア/20スレッドで999ドル。一つ上の『Core i9-7920X』では12コア/20スレッドで1199ドルと、こちらもコア数は大きく増加します。



そして大注目すべきは下位製品の充実です。
最廉価となる『Core i5-7640X』は、4コア/4スレッドながらなんと242ドル。4コア8スレッドの『Core i7-7740X』でも339ドル。さらに6コア12スレッドの『Core i7-7800X』でも389ドルと、第6世代の最廉価モデル以下となる価格、かつヘビーな自作PC派向けに人気の価格帯の製品が一気に拡充されます。

​​​​​​先ほどCore i9と同じぐらいインパクトがある、と記したのは、こうした人気価格帯の製品が一気に厚くなり、またお買い得度がグッと増すため。

HEDT版のCPUは、一般的なデスクトップ用CPUと比べ、メモリの同時アクセスチャンネルや実効のPCI Express転送速度などで有利のため、たとえ同じクロックでも性能はより高くなります。

ただしマザーボードやメモリなどは高価となりビデオカード必須となるため、総合コストでは不利ですが、250ドル級や300ドル級にHEDT級の製品が登場してくるというのは、自作PC派や最新タイトルをプレイするPCゲーマー、VR開発者などにとっては地味ながら影響の大きな話です。

さてこのように、第6世代までのHEDT版CPUは、同じCore i7とは言いつつも、明らかに「7の上がないから7が付いている」ようなところがありました。Core i9の登場はコア数激増を受けたところもありますが、ある意味ではそうした現状の追認的なところも感じられます。



なお、上記の表は、4コア版のみ実は開発コードネームが異なる、という解説。
同じCPUソケットを使うラインアップですが、i5-7640Xとi7-7740Xのみは開発コード『Kaby Lake-X』(ケイビイレイク・エックス。図中ではKBL-Xと略。左のSKLはSkyLakeの意)と名付けられた別設計コアとなり、メモリの同時アクセスチャンネル数が上位の半分である2チャンネルに減少。さらに動作クロックを制御するTurbo BoostテクノロジーやTDP(発熱と消費電力の目安)なども異なります。



さて、なぜ今回ここまでHEDT版CPUが充実し、またお買い得度(価格対コア数)がグッと上がったか、という理由ですが、これはやはりAMDの大ヒットCPU、Ryzen 7と5に対抗する意味あいでしょう。

AMDはこの好調をさらに勢いづけるべく、最大16コア/32スレッドとなるコンシューマー向け上位版製品『Ryzen Threadripper』(ライゼン・スレッドリッパー)を今夏リリース予定ですが、今回のインテルHEDT製品ラインアップの上下への拡充は、Ryzen対抗と考えるのが一番納得がいくもの。

若干余談ですが、上側のラインアップ図において、Core i9の上位に関して仕様が決まっていない点も、Ryzen Threadripperとの兼ね合いを見ながら決定するのでは、との噂さえ出ている状態です。



さて、今回このように追加されたCore i9ですが、気になるのは、「ではCore i9のモバイル版はあるのか?」という点でしょう。実はインテルのモバイルCPUでは「TDP 15W版で物理4コアを搭載するCore iシリーズ」の噂があり、コード名「Kaby Lake Refresh」の一部として、2017年後半から2018年初頭に発表か、と言われています。

今回のCore i9がコア数ベースでカウントされている点を考えると、これが薄型ノートPC用のCore i9として登場するのであれば、一応の整合性は取れており、またマーケティング的にも「i9」に適している気もします(その場合、TDP 35W版4コアCPUの一部もi9にシフトさせねばならない、という問題はありますが)。

いずれにせよ、今回のHEDT版(Xシリーズ)のCore i9とCore i5をはじめとした製品拡充は、ヘビーユーザー向けデスクトップCPU、そしてデスクトップPCのコストパフォーマンスに大きく影響するもの。

上述した上位版で伏せられている仕様や製品の登場予定タイミングなど、まだ不明点も多いのですが、Ryzen Threadripperと同様に、このクラスの製品を組むのであれば待ってみる価値はありそうです。
デスクトップPC派にとっては楽しみが増えたところでしょう。


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