羽生結弦

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日本スケート連盟が14日の理事会にて、昨年の全日本選手権を欠場した羽生結弦選手に、特例シードとして2017年末に開催される全日本選手権の出場権を与えることにしました。これは非常によい決断、英断と言えるでしょう。

フィギュアスケートの全日本選手権に出場するには、まず前回大会で好成績をおさめた選手がシードとして出場権を獲得し、それ以外の選手は地区予選を勝ち抜いて出場することになります。

しかし、実際は多くの有力選手は予選に出場することはありません。それは国際大会に派遣された場合などは、その前後の期間(大会のある週および前後1週)にある予選を免除されるからです。つまり、グランプリシリーズに2戦出場するクラスのトップ選手ともなれば、地区予選と国際大会の日程が重なるように調整することで、予選に出ることなく全日本に出場することもできるわけです。

その意味では、今回羽生選手に与えられた特例シードというのも有名無実と言ってもいい程度のものです。グランプリファイナルと世界選手権を制した紛れもない世界トップの選手が、国際大会に派遣されないはずもなく、特例シードがなくても予選免除で全日本には出場できるはずです。特別扱いをしたというほどのこともない、きっとそうなるであろうことをあらかじめ決めたというだけのこと。

それでもこの特例シードを与えたのは、羽生選手に平昌五輪へのベストな調整過程を保証するためのものです。

もし予選からの出場という原則通りであれば、羽生選手は予選の日程にあわせて国際大会の日程を組むことになります。たとえば羽生選手が以前予選から突破したときのように「東北・北海道選手権」から「東日本選手権」に進んで出場権を得ようとする場合。東北・北海道選手権は10月最初の土日を含む形で行われ、東日本選手権は11月最初の土日を含むような日程で行われるのが通例ですので、予選免除での出場を望む場合は、それに合わせて国際大会の日程を組むことになります。

しかし、グランプリシリーズは第1戦ロシア大会が2017年10月20日〜22日ですので、GPシリーズに出場しただけでは東北・北海道ブロックの予選は免除されません。その場合は、原則通り国内予選に出場するか、別途国際大会に出場するか(日本で行われるジャパンオープン、あるいはカナダで行なわれるオータムクラシックなど)、何らかの手を打つ必要があります。

もちろん、これは例年行なっていることですので、問題となるようなことではありません。問題はありませんが、「この時期に絶対出なければいけない」という縛りは不自由であることは確かです。今回の連盟の決断は、十二分な実績を持つ選手が「ベストな日程での調整」を思い通りにできるように、不自由さを取り除き、あらかじめ保証を与えたということ。放っておいても大きな問題にはならない話でも、「万全」を目指して心を砕いた、よい配慮だったと言えるでしょう。「余計なことを考えず、望み通りの日程で大丈夫だからね」という温かさ、羽生選手にもぜひ意気に感じてもらいたいものです。

(文=フモフモ編集長 http://blog.livedoor.jp/vitaminw/)