2026年大会から本大会出場国枠が48に拡大されることになったW杯。本当に歓迎すべき改革かーーとは、最近発行したメルマガの見出しだが、これにより本大会の雰囲気は一変するだろう。

 では、どう変わるのか。

 改革案では、48か国を4か国ずつ16のグループに分け、各グループ2位以内の国、計32か国で、決勝トーナメントを行うとされている。

 大会の期間は従来同様1ヶ月。決勝進出国、3位決定戦に進出した国が戦う試合数(7試合)も従来と変わらない。変わったのはその内訳。リーグ戦(グループリーグ)と決勝トーナメントの計7試合に占める割合だ。従来は3対4。リーグ戦3試合に対し、トーナメント戦4試合だったが、改革案は2対5だ。現行よりトーナメント色が濃くなる。

 従来1ヶ月を費やした32分の1以降を、20日程度で消化しようとすれば、トーナメントに頼るしか方法はない。しかし、その分だけトーナメントの品格は低下する。従来でさえ、きつい感じだった。詰め込みすぎ。短い期間に優勝チームを無理矢理を決めようとする強引さが目立った。ホーム&アウェイが基本のチャンピオンズリーグと比較すれば一目瞭然。優勝の重みという点で著しく劣った。4年に一度しか誕生しない世界チャンピオンだというのに、だ。W杯に対する欧州各国のモチベーションが、日本ほど高くない理由でもある。

 32強以降が、さらに3分の2の期間に短縮されれば、重みはさらに減る。また、わずか2試合しか戦わない48か国を32強に絞るリーグ戦にしても、リーグ戦が成立する最低限の戦いだ。トーナメントに最も近しいリーグ戦と言い表せる。一発勝負の様相は、いっそう濃くなるのだ。

 これに組み合わせの運不運、日程の運不運も加わるので不確定要素に満ち溢れた大会になることが予想される。つまり、番狂わせは、よりいっそう発生しやすくなる。日本にとってそれは歓迎すべきことだが、最初のリーグ戦を突破する確率は(日本の力が変わらないならば)ほぼ同じ。32から48に増えた恩恵を最も被るのはレベルの高い欧州なので、ベスト32が、これまでのベスト16と同じレベルになる。合否のラインは32強。ベスト16への道はこれまでより、遙かに険しくなる。

 4か国から2か国を絞り出すこれまでのグループは、組み合わせにもよったが、勝利が期待できそうな国が複数あった。第1シードの国には難しくても、第2シード、第3シードの国(前回で言えば、ギリシャとコートジボワール)には、上手く戦えば勝てる可能性があった。2位以内に何とか潜り込めそうなムードがあった。だが、3から2に絞るリーグ戦になると、勝利が望めそうな国が1つに減る。組み合わせ次第では、それさえ難しくなる。

 格上との戦いが連続する可能性が高い。日本の弱者ぶりは鮮明になる。日本の勝利はほぼすべて番狂わせ。立ち位置も明確になる。これまで以上に、だ。

 それに対する割り切りが持てるか。10年後、日本のレベルが現在と大差ないなら、それこそがカギになる。チャレンジャー精神は必須。

 これまでの代表チームに最も欠けていた点だ。2010年大会以外のほぼすべては、戦前、行けるゾ的なムードに支配されていた。前回が最たる例になるが、メディアが勝手に作り出した楽観ムードに、協会、監督を含むチームまで乗ってしまった。危機感に乏しい、クラブW杯決勝でレアル・マドリーを苦しめた鹿島とは、真反対のスタンスで大会に臨んだ。

 弱者のサッカーではなく強者のサッカーだった。小国のメンタリティではなく大国のメンタリティに基づき、どちらかと言えば、欲を隠そうとせず受けて立っていた。監督采配もしかり。番狂わせを狙う監督のそれではなかった。