――ワールドカップ・アジア最終予選を控えたタイミングですので、どうしてもタイ王国代表についても聞かせていただきたいのですが、「優しく質問する」のでよろしいでしょうか?
 
 大丈夫ですよ(苦笑)。
 
――ティーラシン選手は2007年にタイ王国A代表に初選出され、翌年6月にバンコクで行なわれた南アフリカ・ワールドカップのアジア3次予選で日本戦に先発フル出場されています。当時のことは覚えていらっしゃいますか?
 
 もちろんですよ。いまドイツでプレーしているカガワ選手も出ていましたよね。
 
――はい、香川選手はあの試合がA代表初スタメンだったんです。私もスタジアムで観ていたので、その事実は良く覚えています。
 
 そうだったんですね。確か0-3で私たちが負けた試合でした。
 
――その通りです。ティーラシン選手は、ここ最近の日本代表の試合を観ることはあるのでしょうか?
 
 日本代表の試合は時々ですね。ACL(アジア・チャンピオンズリーグ)で対戦する機会のあるJリーグチームの試合の方が多く観ていると思います。
 
――日本代表についての印象は?
 
 日本代表には今も昔もヨーロッパでプレーする選手が多く、洗練されたチームという印象を持っています。9月6日に行なわれる日本代表との直接対決は、私たちにとってこの最終予選のホームゲーム初戦にあたるんです。非常に厳しい試合になるだろうとも思っています。私たちは常にアジア代表の座を賭けて戦わなければなりません。しかし同じアジアの国です。もし日本代表が勝ち上がり、万が一タイ王国代表が勝ち上がれなかったとしても、私は日本代表を応援するつもりでいますよ。
 
――8月17日には、ワールドカップ・アジア最終予選のタイ王国代表メンバーが発表になりました。ムアントン・Uからはティーラシン選手を含む10名が選出されています。所属チームで日々一緒に練習してお互いをよく知る選手が半数近くいることは、タイ王国代表にとっても強みのひとつだと感じます。
 
 まったくその通りだと思います。
 
――今のチームには日本代表と戦っても十分に勝つチャンスがあると思うのですが?
 
 本当にそう思っていますか(大笑)? 日本代表は非常にレベルが高くアジア屈指の強豪国のひとつです。正直タイ王国代表はまだそこまでのレベルにありません。しかし勝負事ですから私たちにもチャンスはあると思うんです。サプライズを起こせるように頑張りたいと思っています。
 
――最近ではタイ王国代表が魅せるパスサッカーを、FCバルセロナになぞり「タイ版“ティキ・タカ”サッカーだ!」と評するメディアも多くいます。キャティサック監督(キャティサック・セーナームアン/タイサッカーの一時代を築いたストライカー。愛称は「ジーコ」)はボール保持をベースにした攻撃的なサッカーを浸透させているのでしょうか?
 
 キャティサック監督の掲げるサッカーは、ムアントン・Uで取り組んでいるサッカーとは異なります。しかし先程もお話ししたように代表でもムアントン・Uでも、ともにプレーする選手が多いこともあり、皆がスムーズに順応出来ているんです。
 
 確かに攻撃的な側面を取り上げられることが多いことも理解していますが、監督はまず『勝つこと』を一番に掲げたうえで、どうするのかということを私たちに強く話してくれています。
 
――先日タイサッカー協会(以下、FAT)が2026年のワールドカップ本大会出場を見据え「長期的な若手育成計画(The World Cup for Thailand starts here!)」を発表しました。その会見の席で「2018年、2022年大会の出場は時期尚早であり、そこまでの力はないと」とFATスタッフがコメントしていますが、ティーラシン選手としてはそれをどう感じていらっしゃいますか?