メットライフアリコ広告表示をした飛行船(「Wikipedia」より)

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 メットライフ生命保険は、アメリカ最大の生命保険会社であるメットライフの日本法人。日本における外資系生命保険会社の先駆け的存在であり、日本支店を開設したのは1954年のことだ。当初は日本在住の外国人向けに営業を開始し、一般向けに営業を始めたのは73年。当時の名称はアメリカン・ライフ・インシュアランス・カンパニー日本支店、通称アリコジャパンとして長らく営業してきた。

 2011年にアリコがメットライフ傘下になったことを受けて通称をメットライフ アリコに変更し、14年に社名をメットライフ生命保険株式会社、ブランド名をメットライフ生命にそれぞれ改めた。

 会社として「多様性(ダイバーシティ)」と「包括性(インクルージョン)」を重視しており、米国メットライフでは、同分野のさまざまな賞を受賞している。特にNational Association for Female Executives(NAFE 全米女性役員協会)からは、「女性役員の働きやすい企業トップ50社」に、過去9年間のうち8回も選出されている。

 従業員数は約9000名、保険料収入は1兆7476億円(いずれも15年3月末)に上る大企業で、同社の保険を扱う代理店も全国で1万店舗を超えている。テレビCMやスヌーピーキャラクターが描かれた飛行船の広告を目にする機会も多い。

 そのような、コンプライアンス重視の働きやすい環境であるはずの同社において、凄惨な暴力事件が起きていたのだ。

●流血の大惨事

 都内の営業所に勤務する同社社員A氏は15年の年末、就業時間後に開催された中途採用社員の歓迎会に参加していた。

 A氏は直属の上司B氏から早めに来るように連絡を受け、集合時間の20分ほど前に会場に到着すると、会場ではすでにB氏や支店長のC氏など数名がすでに来ており、飲酒を始めていた。その後だんだんと参加者が集まり始め、20名弱のメンバーが揃ったところで歓迎会がスタートした。

 開始から1時間半ほど経ち、食事が一通り出終わった頃、A氏はC氏に呼ばれる。席にはB氏とC氏がおり、A氏はC氏の右隣に座った。

 するとC氏はA氏に対して「お前は月に1回は遅刻するな」と説教を始め、話をしながら数発、拳でA氏の左頬を殴りつけたのだ。1発目はさほどでもなかったが、C氏の殴り方はだんだんと強くなり、3〜4発目に拳はA氏の下顎奥歯のあたりに命中し、激痛が走った。A氏は殴られないようにC氏に抱きつき、やめてくれと制止。C氏が「もう手は出さないから離せ」と言ったので、A氏は手を離した。

 その後、A氏が直近で契約をとった顧客の保険について、契約後すぐに保険料の引き落としができなくなって早々に失効してしまった件を叱責され、C氏はまたA氏の左頬を強く殴ったので、A氏は席に倒れ込んでしまった。するとこんどはB氏が店の壁にかかっていたハンガーでA氏の後頭部を殴りつけ、倒れたままのA氏にかぶさるような姿勢となったC氏が、A氏の顔面を執拗に殴り続けたのだ。

 殴打が一瞬おさまりA氏が席に座り直したと思いきや、またC氏はA氏にひじ打ちを食らわせ、その勢いでA氏は後頭部を壁に強打。口を切ったA氏は流血し、シャツやテーブルにも血が飛び散った。おしぼりで口を押さえていたA氏の後頭部に、B氏はさらにハンガーで殴打。頭からも流血する大惨事となってしまった。

 C氏は直後、「気をつけろよ。必ず(保険の)復活やれよ!」と言い残し、A氏が気づいたときにはもう店を離れていた。この間、およそ20分ほどの出来事であった。

●警察が捜査へ

 後日診察を受けたA氏は、「左後頭部打撲、口唇受傷により7〜10日間の加療を要す」との診断を受けたが、その後のレントゲン検査により、上顎骨骨折、左側外傷性顎関節炎、下顎左側第二大臼歯歯根破折も受傷していたことが判明。口腔内にも内出血があり、食事を摂るにも支障が生じる状況であった。また精神的にも強いショックを受け、しばらく出社することができない状況が続いた。

 調べによるとA氏は本件暴行事件以前にも、同社社員より暴行を受けていたことが判明し、警視庁中央警察署に被害届を提出済である。

 暴行には出血も伴い、被害者の制止も聞かずに執拗に続けられていた様子であり、かつ上司にあたる人物が率先して暴行に参加し、その場で誰も止める者がいない状況であった。

 コンプライアンス遵守が厳しく求められる金融業界にあって、同社は「法令を守りルールにしたがった行動をとることに全社を挙げて取り組んでいます」と宣言しているが、本件についてはどうとらえ、どのような対処をおこなうのだろうか。筆者からの取材に対して、同社はこのように回答している。

「当社は今般ご質問いただきました事案について把握し、真摯に受け止めております。また、すでに、関係する社員が安心して執務できるよう、必要な措置を講じております。現在事実関係について厳正な調査を行っており、現時点で詳細をコメントすることは差し控えさせていただきますが、当社はパワーハラスメントを含むいかなるコンプライアンス違反も許容せず、そのような事実が判明した場合には、迅速、適切かつ厳正に対処いたします。」

 この言葉通り、同社はB氏に対して諭旨解雇処分、C氏に対しては懲戒解雇処分を下した。警視庁は引き続き両名の逮捕に向けて、捜査を続けている。
(文=新田龍/働き方改革総合研究所株式会社代表取締役、ブラック企業アナリスト)