第6世代Intel Coreプロセッサー「Skylake」の登場で、PC用の主力メモリはDDR3からDDR4へと移り変わることになりそうです。依然として価格面でメリットがあるDDR3、高速動作が期待できるDDR4のいずれのメモリを使うにせよ、「どれだけの容量を搭載すれば性能面で満足できるのか?」を知っておくことは、快適なPC環境を構築するのに大いに役立ちます。ということで、TechSpotが、Skylake世代のPCに、4GB・8GB・16GBとメモリ容量の違う状況で、各種ソフトウェアを実行してベンチマークや使用感を徹底比較しています。

How Much RAM? 4GB vs. 8GB vs. 16GB Performance - TechSpot

http://www.techspot.com/article/1043-8gb-vs-16gb-ram/

TechSpotはCPUがCore i7-6700K 、マザーボードがAsrock Z170 Gaming K6+、グラフィックボードがGeForce GTX 980、ストレージ(SSD)がCrucial MX200 1TB、OSがWindows 10(64bit)という構成で、DDR4-2666メモリのみ4GB/8GB/16GBと容量を変えることで、メモリ容量がパフォーマンスに与える影響を調査しました。



なお、ネットブラウジングやOffice、メールソフトなどの一般的な使用感についていえば、4GBから16GBとメモリ容量の大きな差はほとんど体感できないレベルで、いずれのメモリ容量でも快適に操作できたとのこと。ただし、マシンスペックを要求する比較的負荷の大きな作業においては、メモリ容量の差がパフォーマンスに大きな違いを与えることが、判明しています。

◆アプリケーションパフォーマンス

・Adobe Premiere CC

メモリ容量別にAdobe Premiere CCにおけるエンコード時間を比較するとこんな感じ。なお、グラフの数値は小さいほど高性能であることを示しています。



4GBメモリと8GBメモリとの間には大きな性能差があるのに対して、8GBメモリーと16GBメモリとの間にはほとんど差がありません。このことからメモリ容量はプログラムの処理ごとにある「必要十分な量」があり、それを超えている限り、容量を増やせば増やすだけパフォーマンスが上がるというわけではないことがよく分かります。

・7-Zip

圧縮・解凍ソフト7-Zipで512MBの辞書ファイルを使って圧縮した場合の速度(MIPS)は、16GBメモリが圧倒的なパフォーマンスを示し、メモリ容量が多いほど、処理が高速化しています。



1秒間に処理できるKB数で比較すると、16GBメモリは8GBメモリの11倍以上という圧倒的な差。このような状況下では、メモリは増やせば増やすほどパフォーマンスアップが期待できるといえます。



◆ベンチマークソフトウェア

・Blender

3D制作ソフトBlenderを使ってのベンチマークを測定。メモリを6.1GB使用するテスト状態では、搭載メモリが4GB、8GB、16GB間でほとんど差はなし。



・Lammps

原子・分子並列シミュレータLammpsでメモリ使用量10.5GBの場合、16GBメモリに比べて8GBメモリでは約10%のダウンで、4GBメモリは8GBメモリに比べて3倍以上もパフォーマンスが低下しています。4GBと8GBとの間の4GBというわずかなメモリ容量差で、決定的な性能差が体感できる結果となっています。



◆ゲーム

TechSpotによると、ゲーミングPCで快適にゲームをプレイするにはシステムメモリ容量は8GBあれば十分であることが、過去のテストから分かっているとのこと。そこで、今回の実験では、ゲームプレイと並行して、ブラウザGoogle Chromeで約2.2GB分に相当する65個のアクティブなタブを開いた状態で、よりメモリ使用量が必要とされる状況にした上で各メモリ容量別にテストしてゲームプレイの快適性をチェックしています。

・Grand Theft Auto V

Grand Theft Auto Vでは16GBメモリ搭載時に約9GBのメモリを使用することが確認済みとのこと。ただし、実際にプレイしたフレームレートを比べると16GB、8GBでは同じ数値で、4GBメモリにおいてもわずかに1フレームのみ性能の低下が見られただけで、メモリ容量の違いはほとんどゲームの快適性に影響を与えていないことが分かります。



・Batman:Arkham Knight

Batman:Arkham Knightでのフレームレートの比較はこんな感じ。やはり、メモリが4GBでも十分な性能を発揮しています。



・F1 2015

中にはF1 2015のようにメモリ容量が4GBと16GBでまったく差が現れないという結果が出ることもあります。これらのゲームでは、8GBもメモリを搭載すれば最高レベルのパフォーマンスを得ることが十分可能であり、それ以上のメモリを搭載することは性能アップにはつながらないということが分かります。



以上の通り、ゲームのようにグラフィックボードの性能が大きく物を言うことでPCのシステムメモリの容量がパフォーマンスにほとんど影響を与えない場面もあれば、Adobe Premiere CCのように4GBメモリよりは8GBメモリ以上の方が望ましい場面や、7-ZipやLammpsなどのようにメモリが4GB、8GB、16GBで劇的なパフォーマンスの違いにつながる場面など、シチュエーションごとに求められるメモリ容量には違いがあることが確実です。

もっとも、消費電力を除けばメモリを大量に積むことでパフォーマンス面で有利になることはあっても不利になることはないのも事実なので、「迷ったら大容量メモリを搭載する」というのもアリ。DDR4メモリが一般的なIntel Z170チップセット環境では、「心の安寧のために16GBメモリ×4=合計64GBメモリを搭載しておく」というハイエンド志向ユーザーも大幅に増えそうです。