/これまで吉田兼好は、伝承をそのままに受け売りして、吉田神社の神官の出などとされてきた。ところが、慶応の小川剛生教授が『兼好法師』(中公新書)で史料を洗い直すと、まったく違う実像が見えてきた。/『徒然草』とその時代 文章だけを読んでいると、出家者とはずいぶん呑気なものだったのだな、と思う。しかし、これが書かれた一三三一年ころは、そんな生やさしい時代ではなかった。鎌倉幕府の滅亡と建武親政が瓦解する様