ホラー作家・飴村行は、伝説の漫画雑誌「ガロ」編集長だった長井勝一氏(故人)に一度だけ会ったことがある。生まれて初めて漫画の持ち込みに行ったときの相手が、長井編集長だったのだ。明日から本気出す、はずだったその日飴村が手にしていたのは、人生を変えるつもりで描いた渾身の勝負作だった。父と長兄が共に医師であり、自らも医療系の大学に進んだものの、勉学には一向に身が入らず、映画や音楽といったサブカルチャーに心