最後はマットに正座し、先生方への礼で終了。

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2020年に開催される、東京オリンピック。いやぁ、待ち遠しいです!
そういえば数年前、東京オリンピックでの「レスリング」実施が危ぶまれたことがありましたっけ。結果、夏季オリンピックへの残留が決定したレスリングですが、あれはショッキングな“騒動”でした。

あの時に芽生えた危機感が、この人を立ち上がらせた!? 3月21日、新宿スポーツセンターにて、プロレスラー・長州力が小中学生を対象とする「キッズレスリング教室」を開講しています。
何しろレスリングは、長州にとって最大の“ベース”。専修大学在学中の1972年、ミュンヘンオリンピックのフリースタイル90キロ級に出場するなど輝かしき足跡を残しており、新日本プロレスがスカウトに動くほどの“レスリングエリート”でもありました。
そんな彼が子どもたちを指導するという、今回の貴重な機会。ちょっと、見に行ってみましょうか!

というわけで練習場へ足を踏み入れると、飛び込んできたのは長州の笑顔。そしてその周りには、エナジー溢れる子どもたち(主に小学校低学年)がたくさん!

さて、この日のプログラムについてです。“レスリング未経験者”参加の1部と“レスリング経験者”参加の2部で分かれており、私が取材させていただいたのは未経験者対象の1部でした。ここでの練習メニューは、以下です。
●レスリングマットの円に沿ってランニング
●タックル
●受け身
●2チームに分かれてのゲーム。レスリングマット中央にボールを置き、端から両膝を付いた状態でボールを取りに行く。取ったそのボールを、膝付きのまま端にいるコーチ(長州ら)へ手渡しできたチームが勝利

それにしても、練習中の長州の笑顔が抜群! 「よーし、早く取れよ」「頑張れよ!」なんて声をかけながら、目尻下がりまくりです。さすがの現場監督っぷりだな。

ちなみに練習場後方には、キッズの父兄さん方が見学されていました。じゃあ、あそこにいるお母さんに話を聞いてようかしら。すみません! 今回、お子さんをこの教室に参加させた理由は何ですか?
「ウチの子は男の子だし、力もあるし、取っ組み合いが好きなんです。でも相手にケガさせちゃいけないし、こういう場で力を発散させてあげたいなと思いました」
なるほど。あのー、お母さんもプロレスはお好きなんですか?
「そうですね、はい(笑)」

そんなこんなで、レスリング教室第1部もそろそろ終わりの時間が来た模様。長州先生が「今日はご飯がおいしく食べられると思います」「毎日じゃなくていいから、週に何回かはこんな風に体を動かしてみてください」などなど子どもたちに呼びかけ、最後はマットに正座しながらの“礼”で終了となりました。
続いて長州選手への囲み取材で、こちらも今日の予定は終わりです。……何ですか? 他社の記者さん達が帰ったので、控室で私一人で長州さんに取材ですって!? 今日は、全く、そこまでの用意も覚悟もしてないんですけど……。

というわけで言われるがままに控室へ通していただくと、その奥には、あの長州力が。さっきまでの笑顔はどこへやら、ドカッとパイプ椅子に腰を下ろしていらっしゃいます。
あ、長州さんの真ん前の、この席ですね? すみません、失礼いたします。長州さん、お疲れ様でした。少しだけご質問させていただきたいので、よろしくお願いいたします。

――まず初めに今回のようなキッズスクールを開講したきっかけとして、どんな思いがあったのでしょうか?
長州 「ん?」
――こ、このようなキッズスクールを開講しようとしたきっかけを伺いたいのですが……。
長州 「もともと、やりたいと思ってたんですよ。そこに申し込みのアレがあって。うん」
――申し込みが。それは新宿スポーツセンターさんからですか?
長州 「あっ? いや、違います」
――子どもたちから、ですか?
長州 「(関係者に)どこからなんだ?」
関係者 「企業様からです」
長州 「あっ、そうか……」
――あっ、なるほど……。
関係者 「『レスリング教室をやりませんか?』というお話をいただいたので」
――な、なるほど。今日のような子どもたち向けのレスリング教室を開催されたのは、今回が初めてですか?
長州 「もう少し大きい、経験者の子どもたち向けにはあるよね。でも、こういう子どもたち向けには初めてですよ。うん、初めてだろうな。変な意味じゃないけど、今回はレスリングのセミナーという感じではないよね」
――今回でレスリングを好きになってもらえれば、ということですかね?
長州 「あぁ、興味示してもらえればいいことであって」
――長州さんの著書を読むと小さい頃からわんぱくで、高校からレスリングを始めたということですが……
長州 「やってるのは、中学校くらいからです。うん」
――中学くらいからですか。今振り返ると、子どもの頃に「あの人に教えてもらいたかったなぁ」という人はいらっしゃいますか?
長州 「いや、いない。うん」
――あっ、いないですか! なるほど。で、今回のように子どもたちに教えたり交流する場というのは、過去に何度かあったにしろなかなか無い機会だと思うのですが……
長州 「うん、そんなに無いですよ」
――そうですよね。今後、こういう企画を続けていきたいというお考えはありますか?
長州 「また、話をいただければですね。本当は一回きりでなく定期的に教えられたら、子どもたちの成長のアレも感じられて楽しいんだろうけどね」
――実際に指導中のお姿を見ていると、長州さんも子どもたちが好きなんだなぁという様子が見れまして……
長州 「楽しいですよ。元気いいし、走り回ってるし」
――今回の練習メニューは、長州さんがお考えになったんですか?
長州 「(部屋の奥にいるコーチ陣を指差し)みんな、大学の後輩なんですよ」
――あっ、専修大学の。
長州 「一人、ちびっ子を育ててる奴がいるから。色々メニューを考えながらやって」
――なるほど。(コーチの方に向かい)今回のメニューは、いつもやっているメニューを応用されて、という形ですか?
コーチ 「はい、そうですね」
――なるほど。長州さんもレスリングを始めた頃、今日と同じような練習をしていたわけですか?
長州 「そう!」
――膝つきでボールを取りに行ったりとか。
長州 「そう、うん」
――2部からは経験者向けの教室が始まるとのことですが、もうちょっと専門的な内容になりますか?
長州 「今日初めて会う子どもたちなワケでしょ? どのくらいのレベルのアレかわかんないのに、いきなり専門的なのはムリ! うん。ムリっていうか、怖いよね。今は昔と比べて色々うるさいってこともあるし。あんなに思いっきり走ってると、怖いよね。前の子とぶつかりそうで、何かあったりしたら。でも、止めようとしても止まんないし。見てて、怖いですよね。だから、怪我だけは注意して見てますよ。それでも怖い」
ーーちょっと話が飛ぶんですが、かつて世間で体罰が問題になった時期、各インタビューで長州さんは「俺は殴られても目から鱗が落ちたことは無かった」と仰っていましたが、例えば誰かにレスリングを指導される際、長州さんがその手の厳しさを出すことは無いわけですか?
長州 「あぁ、そういうのは全くないですよ! ましてや、あんな小さい子たちに……」
――ないですよね(笑)。はい、見てるだけでも本当に楽しいレスリング教室でした! ありがとうございました。
長州 「はい、どうも!」

“天下の長州力”が子どもたちに直接手ほどきする機会が訪れるなんて、思いもしませんでした。そして面と向かって長州力に話を聞く機会が訪れるだなんて、予想もしていなかった。「よし、腰を上げよう!」と、言われなくて良かったですよ……。

(寺西ジャジューカ)