イメージしやすい数字に置き換える

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ソフトバンクテレコムは、主に法人向け固定電話サービスやデータ伝送・専用線サービスを提供。約2800人の営業担当がiPadを手に商談に向かう。

訪問先でのプレゼンは提案内容によって異なるが、10分から15分。提案書は、スライド資料が10枚から30枚程度、それに2分前後の動画を挿入することが多い。

営業マンのために提案書を制作するのが、営業・事業推進本部のプロジェクト推進室だ。現場の制作スタッフは25人ほどで、案件ごとに3人ずつのチームが編成される。1件の制作期間は1〜2週間。年間約300件の資料を手がける専門部隊だ。

提案書づくりで最も重視するのが全体のストーリー。メンバー3人が3日ほどかけてアイデアを出し、個条書きでまとめていく。このとき重要になるのがデータ類だ。

「まず社内外から調査データなどの使えそうな数字をできる限り集め、そこからストーリーを組み立てます。普段から新聞や雑誌で面白い数字を見つけると、資料化して職場で共有しています」(ソフトバンクテレコム プロジェクト推進室 森谷亮達さん)

データの扱いにはこだわりがある。

「採用するのは、サービスの効果が一目瞭然で実感できるものがメーンです。棒グラフは右肩上がりのものを用い、ポジティブな印象が残るようにします」(ソフトバンクテレコム プロジェクト推進室 課長 丹羽みずきさん)

使いたいデータが右肩下がりになる場合は、横棒グラフにするほどの徹底ぶりだ。

制作過程では室長や同僚の意見を聞く。「スライド枚数が多い」「話の展開が急」「1枚に盛り込みすぎ」「内容と写真が合っていない」などはダメ出しの定番だ。

例えば図のシートの作成過程では、「6000万人」「536億PV」がわかりづらいと指摘されたという。メンバーは知恵を絞り、お客様にわかる表現を模索する。「東京ドーム何個分」「労働人口とほぼ同じ」などの言い換え案も出たが、身近でわかりやすいことから現在のものが採用された。

資料制作専門の部署であるがゆえ、こうしたノウハウは蓄積され、次に生かされる。

1. 意外性のあるデータを使う

商品内容から入ると唐突なので、インターネットの利用時間が伸びているという社会現象から。「テレビを超えた」という意外性のある情報もプラスした。

 

2-a. 右肩上がりの棒グラフ

使う棒グラフのほとんどが「右肩上がり」だ。6年間で10倍へという短いキャッチに加え、上に矢印を重ねることで、勢いとポジティブな印象が強化される。

2-b. 説明しなくてもわかるグラフ

ソフトバンクでは、営業マンがわざわざ説明しなくてはいけない複雑な表やグラフの入った資料は失格。「パッと見でわかるか」を重視する。

 

3. イメージしやすい数字に置き換える

「6000万人」「536億PV」と言われてもよくわからない。上司の指摘を受けて上のシートの次に下のシートを加えた。「誰もが、瞬時にピンとくる数字」に置き換えることで、この数値がもつすごさを効果的に伝えている。

 

4. 円グラフは、できるだけ「80%以上」

50〜60%だとインパクト不足。中途半端な印象を与えることになるので、できるだけ80%を超えるものを含むようにする。目立たせたい部分に青を使い、それ以外はグレーにし、メリハリをつけている。

(伊田欣司=文 向井 渉=撮影)