Jリーグ開幕前のこの時期の仕事には、順位予想がある。これがかなり難しい。

 プロ野球ではお馴染みの順位予想だが、J1は18チームもある。プロ野球のように、オープン戦がたくさん行われるわけでもない。練習試合を非公開にするクラブも多い。全チームの現況を把握したうえで順位予想をするのは、ほとんど不可能と言っていい。個人的には引き受けたくない仕事で、辞退することもある。

 それでも、予想をしなければいけない場面はある。手元の情報が少ないなかで、僕はふたつの要素をもとに順位を決めていく。

 ひとつはストライカーの存在である。

 得点王を争うような選手がいれば、チームは勝点を積み重ねることができる。優勝を手繰り寄せたいなら、15点以上を稼ぐストライカーがほしい。

 たとえば、川崎Fには大久保がいる。鳥栖には豊田がいる。彼らは計算できる得点源だ。両チームともに上位を狙えるだろう。ガンバの宇佐美とパトリックも、1シーズン稼働すれば15点は難しい数字ではない。

 J1に昇格してきたチームは、得点源に不安を残す。山形にも松本山雅にも、2ケタ以上を見込める選手がいない。過去の実績に基づいた判断だが、両チームは苦しい戦いを強いられることになりそうだ。

 同じく昇格チームの湘南にも、絶対的な得点源は見当たらない。新外国人のブラジル人FWブルーノ・セザル・コヘアが、初めてのJリーグでどこまでできるのかは未知数だ。

 ただ、“湘南スタイル”と呼ばれる彼らのサッカーは、どこからでも得点できる幅広さを持つ。昨季のJ2では、3バックの一角を担う遠藤航が7ゴールをマークした。
過去2度の昇格シーズンは下位に沈み、1年でJ2へ逆戻りした。しかし、?貴裁監督のもとでチームの完成度を高めてきた今回は、「二度あることは三度ある」ではなく、「三度目の正直」を果たすのではないかと思う。

 話が少し逸れてしまった。ふたつ目の要素に触れよう。
 守備の安定感である。

 昨季の横浜F・マリノスが分かりやすい。総得点はリーグで6番目に少なく、2ケタ得点を記録した選手もいなかった。その一方で、失点は18チームでもっとも少なかった。リーグ7位という成績は、守備の安定によってもたらされていた。

 浦和レッズにも同じことが言える。広島から西川周作が加入したことで、2013年は「56」だった失点が「31」まで減少した。興梠慎三がリーグ終盤に欠場することなく、12点に止まったゴール数を3、4点上積みしていたら、浦和は優勝に手が届いたのではないか。

 さて、今シーズンのJ1である。
 ふたつの条件を満たすチームとして、僕はFC東京をあげる。

 昨季のJ1では9位に終わったが、33失点はリーグ4位タイの数字だ。権田修一、徳永悠平、森重真人、高橋秀人、太田宏介ら、守備陣には日本代表経験者がズラリと揃う。U−22日本代表候補の奈良竜樹も、札幌から期限付き移籍で加入した。中盤の守備的なポジションも含めて、とにかく人材は豊富だ。

 攻撃陣からは昨季11ゴールのエドゥーが抜けたが、前田遼一が加入した。ジュビロ磐田と日本代表で得点を重ねてきた彼が、16ゴールをマークすれば──昨季はプラス14だった得失点差がプラス20になる。昨季2位の浦和と同じ数字だ。優勝が見えてくると思うのである。

 ところで、2015年のJ1は2ステージ制で争われる。こちらの影響については、次回の更新分で触れたい。