アニメ版で大破炎上した後が心配されている『祥鳳』

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【ほぼ週刊艦これ通信】

前線を支える役目の軽空母

 本来、潜水艦相手にタンカーや輸送船を守る戦いならば、小型の軽空母でも充分任務を果たせる。単独行動の多い敵潜水艦相手に、何百機もの編隊を出撃させる必要はないからだ。

 また、ちょっとした水雷戦隊程度の敵ならば、軽空母の搭載機だけでも充分あしらえる。何しろ大砲や魚雷よりも、航空機のほうが遙か彼方から攻撃できるからだ。

 正規空母は敵との決戦に向かい、軽空母は後方の補給線を守る。アメリカなどは第二次世界大戦中、ほぼ週一ペースで軽空母を竣工させ、膨大な数の輸送船団をがっちり守りきっていることから、その方針の正しさは立証されている。

 もっとも当時の日本は、今回取り上げる軽空母『祥鳳』の場合、平時で紆余曲折あったとはいえ、建造に数年かかってしまっているのだが……。

「私だって、航空母艦です。やります!」

『艦隊これくしょん -艦これ-』では、諸肌脱いだ女射手、といった姿の『祥鳳』。勇ましく見えるが、言動は健気で真面目。流鏑馬や通し矢、あるいは神社で破魔矢を売る姿が似合いそうなキャラクターだ。

 モデルになったのは、高速給油艦『剣埼』を改装した軽空母。のちに同じく改装される『高崎』→『瑞鳳』の姉妹艦で、潜水母艦『大鯨』を改装した『龍鳳』とも経緯は同じと言える。

 ただ『剣埼』の場合、高速給油艦としては結局完成しなかったらしい。とりあえず起工はしたものの、軍縮条約の影響下でどう扱ったものか揉めていたようで、結局は潜水母艦として竣工。実際に運用もされてから、今度は軽空母へと改装されている。

 水上艦隊に燃料を届ける高速給油艦となるはずが、潜水艦の補給を担当する潜水母艦となり、さらに船団護衛を行う軽空母にと……。健気に頑張ろうとしている『艦これ』でのセリフもあって、まるで宴会中、あれこれ頼まれ忙しく走り回っているタイプに思えてくる。『艦これ』ではすっかり女将キャラとして定着した『鳳翔』や『間宮』辺りの手伝いとして、料理を作ったり運んだりしているような裏方として。

「え?『珊瑚って好き?』って……?嫌いです!」

 最終的に『祥鳳』は昭和17年(1942年)1月26日、横須賀で就役。同年5月7日、南太平洋の要衝ポートモレスビー攻略を目指す「MO作戦」に参加。その主力となった第五航空戦隊『翔鶴』『瑞鶴』とは別に、『祥鳳』は単独で船団護衛を行っていた。

 が、一足早く敵に発見され、敵正規空母2隻の空襲から味方を守り通しながら、自身は爆弾13発・魚雷7本という過大な攻撃を浴びてしまった……。

 翌日、その仇を討つように『翔鶴』『瑞鶴』が史上初の「空母対空母」のみの戦いを行ったのが、「珊瑚海海戦」である。

『祥鳳』が悲運に見舞われた原因としては、相手に暗号を解析され待ち伏せを受けたことや、偵察の不手際から事前に敵空母を発見できなかったことなどが挙げられている。

 彼女の喪失は太平洋における日本空母では最初のものであり、また続くミッドウェー海戦において『赤城』『加賀』『蒼龍』『飛龍』が敗れる理由を、すでに暗示していたともいえるのだ。

(取材・文/秋月ひろ)