男勝りの口調と、戦いと酒を嗜むセリフが人気

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【ほぼ週刊艦これ通信】

「ふむ……悪くないな」

 軽快で汎用性も高いが、その分どうしても防御力に劣った駆逐艦。ならその防御力を高め、速度と火力も増強した艦を造ればいい――そんな考えがあったのか、生まれたのが巡洋艦だ。

 戦艦を支援できるだけの火力と、駆逐艦並の速力をもったこの艦種は、やがて各国で重宝されるようになる。その利便性は、艦砲こそミサイルに変わったものの、現代に至るも巡洋艦という艦種が残っていることからも窺い知れると思う。

 特に第二次世界大戦中は、砲撃戦を重視した「重巡洋艦」と、駆逐艦を率い雷撃戦を行うことに主眼をおいた「軽巡洋艦」の二種が活躍した。これは1922年のワシントン海軍軍縮条約および1930年のロンドン海軍軍縮会議の影響で生まれた艦種。際限のない軍拡にストップをかけるためにも「どこからどこまでを巡洋艦とするか?(そして規制するか)」を定める必要があり、そこで総トン数や載せる艦砲のサイズによって軽/重の種別が設けられたようだ。

 日本の旧海軍でも、古鷹型(と準同型艦の青葉型)を経て妙高型の重巡洋艦が建造された。設計の段階では他国の重巡同様魚雷の搭載は考えられていなかったそうだが、実際に艦を運用する用兵側からの強い要望で、魚雷発射管が追加装備されたという。

 結果として、彼女たち妙高型は他国から「餓狼」と称されるほど、どう猛な印象を与える戦闘艦として海を駆けることとなった。

(註:「餓狼」については、居住性を犠牲にしてまで兵装を積んだことへの嫌味とも解釈されているが、いずれにせよ戦闘力の高さは疑いようがない)

「私は那智。よろしくお願いする」

 さて、ここで話は『艦隊これくしょん -艦これ-』(以下『艦これ』)に。この作品に登場するキャラクター=艦娘(かんむす)たちには、「改」「改二」という概念がある。

 あくまで傾向であり絶対ではないのだが、モデルになった軍艦の初期状態を擬人化したのが初期段階。「改」へパワーアップすると、そのモデルだった軍艦が改装された姿に近くなる。そして「改二」は「仮にもっと強化されていたら」あるいは「史実における最終形態」と呼べるような進化を果たすことが多い。

 つい先日のメンテナンスでこの改二が実装された『那智』は、妙高型重巡の2番艦として昭和3年11月26日に竣工した艦がモデル。姉妹艦の『羽黒』『妙高』と第五戦隊を編成、その旗艦としてスラバヤ沖海戦に参加。その後は北方警備を任務とする第五艦隊の旗艦を務めた。「5」に縁のある艦だったのかもしれない。

 そして第五戦隊然り、第五艦隊然り、『那智』は旗艦として仲間を叱咤激励しつつ率いて戦ったイメージが強い。その点は『艦これ』における男勝りの口調と、戦いと酒を嗜むセリフ、武士(もののふ)を思わせる性格付けに表れている。

「那智戦隊、出撃するぞ!」

 そう叫んで戦(いくさ)に赴く『那智』。妙高型4姉妹は今回の更新で全員に改二が実装され、史実では道半ばで倒れた彼女たちがなお戦い続けていたらさもありなん、という姿に生まれ変わった。

 その力を活かし、勝利の美酒を提督とともに味わうべく、『那智』は今日も戦いの海へ征くのだ。

(取材・文/秋月ひろ)