日本の敗退はオーストラリアでも驚きをもって報じられた。『FOX sports』のウェブ版では、「日本はおそらく試合前から準決勝のことを考えていたから、どこか遠慮がちなプレーになってしまった」と指摘した。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 オーストラリアでも、日本がUAEにまさかの敗戦を喫したニュースは大きな驚きをもって迎えられた。

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 メディアやSNSでの記述をひと通り確認してみて、最も多く目に付いた単語は「upset(番狂わせの意)」。さらには、記事やブログの投稿では「stun」という動詞も頻繁に用いられていた。これは、もともとは“唖然とさせる”という意味だが、スポーツ関連の新聞の見出し用語では“金星を挙げる”の意で使用される。
 
 こういった単語を使うのには、当然ながら理由がある。自国の代表“サッカルーズ”がニューカッスルでの準決勝進出を決めてからというもの、その相手は「日本になるだろう」、いや「日本になるに違いない」との根拠のない前提が、メディアにもファンの中にもあった。それがゆえの日本敗退に対しての驚きのリアクションだと考えれば合点がいく。
 
 準国営放送『SBS』のサッカーポータル『the World Game』の記事は、メインの見出しを「UAEが日本から金星で、サッカルーズとの準決勝へ進出」と打った。
 
 同じ記事の導入部分では、「UAEが王者日本との準々決勝で番狂わせ(upset)を演出。PK戦までもつれこんだシドニーでの勝利の後、予想と反しての(unlikely)オーストラリアとの準決勝に駒を進めた」との一文があった。筆者の結果に対しての意外だという思いが、ひとつのセンテンスの中の「upset」や「unlikely」といった記述からひしひしと伝わってくる。
 
 『FOX sports』のウェブ版は、『デイリー・テレグラフ』紙のトム・スミシーズの署名入り記事を転載。その見出しには「UAEが日本を準々決勝でノックアウト。今大会最大の驚きを演出」 とあり、本文中では「すべての人々にとっての最大の驚き」という表現で、驚きの度合いを表現しているのが面白い。
 
 この記事の中で最も印象的だったのは、以下の鋭い指摘の一文だ。
 
「日本は、おそらく試合前から準決勝のことを考えていた。だからどこか遠慮がちなプレーになってしまい、UAEに主導権を握られて、失点まで喫した試合の立ち上がりのような展開になってしまったのかもしれない」
 試合から一夜が明けてから、高級紙『シドニー・モーニング・ヘラルド』のウェブ版に載ったロイターの配信記事は、昨夜の試合の結果とは異なる類の“驚き”を伝えた。
 
「ショッキングなアジアカップの結果にもかかわらず、日本は問題を抱えたアギーレ監督続投へ」との見出しのこの記事は、アギーレ監督の八百長疑惑のこれまでの経緯、試合後の大仁会長の記者対応についても詳報。告発受理に加えて、今大会で結果を残せなかったアギーレ監督の「続投」が保障されるのは意外という論調だ。
 
 昨日の試合の生中継でFox Sportsの人気コメンテーター のサイモン・ヒルが何度となく発した「That should have been a equaliser (このシュートは同点弾となるべきだ)」のセリフ。何度となく惜しいチャンスを外して天を仰ぐ日本の選手の姿を映し出す画面で、彼が発したこのセリフは耳に残ってしばらく離れそうにない。
 
 あるサッカー関連サイトに書き込まれていた以下のコメントは、日本戦を見た一般的な当地のサッカーファンの思いが凝縮されているように思う。
 
「日本が負けたのは驚きだが、決めるところを決めないと勝てないのがフットボール。最強のライバル(日本)の敗退でサッカルーズの優勝の可能性は高まった」
 
 一夜が明けてからは、オーストラリアのメディアも、すでに自国のサッカルーズが次戦をどう戦うかに関心が移っている。日本の今大会での戦いぶりは、残念ながら、すぐに過去のものとなってしまいそうな気配なのは寂しい限りだ。
 
文:植松久隆(フリーライター)