ゲイが働きやすい企業とは?

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【ゲイリーマン発 日本のリアル】

 就活の解禁が3月に後ろ倒しになったことが話題になっており、今頃ソワソワしている大学3年生も多くなっているのではないでしょうか。

 ほとんどの学生さんにとってはアルバイト以外で「働く」ということ自体が初めての体験になりますし、学生の時のように気の合う人とだけ関わっていれば良いというわけでもなく、社会人になるといろいろな人と関わることになります。

……みたいなことを周りのいろんな大人に言われまくり、10年近く前の筆者もけっこうビビってましたよ。

 だからこそ様々な情報に敏感にもなりますし、しかも心配事があるときは悪い情報ばかりが印象に残ってしまうもの。特にLGBTの場合、会社に入ってからセクシュアリティのことがバレて差別に遭ったら、バカにされたらどうしよう。こんな風に思う気持ちもとてもわかります。

 しかしながら学生時代にしていた心配は杞憂に終わることがほとんど。大学や専門学校の就職課や親や先生たちはなんやかんやと辛い話ばかりする傾向がありますが、ほとんどの大人はその日その日をちゃんと暮らして行っていますし、ほとんどのLGBTもいろいろ面倒なことはあっても差別や偏見もひょうひょうとかわして楽しい社会人生活をよろしくやっているものです。今日は、そんな就活を控えたLGBTの中の、ゲイの子たちに向けた筆者からのメッセージをお伝えしたいと思います。

LGBTが働きやすい企業ランキング

 この時期になると、毎年決まったようにどこかしらのLGBT団体などが「LGBTが働きやすい企業ランキング」みたいなものを作り、LGBTの就活生たちに発信しています。

 筆者はこうした実態調査をして、結果を大々的に発表すること自体は意味のあることと思いますが、一方でこうしたLGBTによる一面的な格付けというものは、あまりに盲目的に過信してしまうと、これから社会に羽ばたこうとしている若者たちにとって職業の選択肢の幅を狭めてしまう可能性を含んでおり、一概に賞賛されるべきものではないとも考えています。

※ただし、見た目と戸籍上の性別が違うトランスジェンダーの方にとっては、トイレ使用時の配慮の有無や公的証明書を提出したときに差別に遭わないかどうかなどの点で、非常に重要な指標になるかとは思います。筆者はあくまで一人の働くゲイとして、ゲイの若者に向けたメッセージとして記事を書いていますので、ご了承ください。

 こうした「LGBTが働きやすい企業」として名前が挙がる企業は、主にLGBT向けの差別的扱いを禁止するルールが存在しているかどうかや、実際にカミングアウトをして従事している従業員の人数、ゲイパレードへの参加や出資の有無等によって判断されているようです。

 そして、具体的に名前の挙がる企業のほとんどは外資系投資銀行や外資の超大手企業が中心となっており、毎年十数社〜20社くらいの企業名が挙げられています。これらの会社はだいたいの場合、欧米の本国にてLGBTコミュニティに向けた人事戦略を実施しており、それを現地法人である日本支社でも行っているというような形で実施されています。

 こうした動きに一般メディアも気付き始め、最近になってこのような企業群を指して、きちんとした調査もせず「LGBTに人気の企業ランキング」としてそのまま取り上げたりしている某経済誌などもありました。

働くゲイのイメージ 実態とのギャップが浮き彫りに

 しかしながら、こうした企業群を「LGBTに人気!」と言われても、筆者にはなんとも言えない違和感がありました。実際のところ、筆者も、筆者のゲイの友人たちも、仕事を選ぶときに自分のセクシュアリティをそこまで強く意識したことがなかったからです。

 世間一般のイメージでは、少し前まで「ゲイ=みんな水商売」と思われていて、ニューハーフとの区別がつかない人もかなりいました。だんだんと時代は進み、水商売以外にも「ゲイが多いと言われる仕事」として、ファッション業界や広告、クリエイティブ業界等が認識されるようになりました。

 しかし、これも実態とは異なっています。

 ここに、『LGBTと職場環境に関するアンケート』として非営利団体である虹色ダイバーシティが行った調査結果があります。この調査によると、すべての業界・職種から回答があったそうですが、上位から順に並べたのが以下の職種です。

1位 医療・福祉職……12.8%
2位 営業職……12.3%
3位 一般事務……8.3%
4位 広告・美術・クリエイティブ系……7.7%
5位 教育関係……7.6%

 見てわかるの通り、トップの医療・福祉系でも1割強と、そこまで職種にバラつきは見られません。世の中に出回っている求人票の比率とそんなに変わらないようにも思います。この結果から、どんなことがわかってくるのでしょうか。
(後編に続く)

著者プロフィール

ゲイライター

英司

東京・高円寺在住のアラサーゲイ。ゲイとして、独身男性として、働く人のひとりとして、さまざまな視点から現代社会や経済の話題を発信。求人広告の営業や人材会社の広報PR担当を経て、現在は自社媒体の企画・制作ディレクターとして日々奮闘中。都内のゲイイベントや新宿二丁目にはたびたび出没(笑)

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