狙うべき銘柄とは

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 源平合戦の最終章である壇ノ浦の戦いでは、壇ノ浦の?潮の変わり目?が勝敗を左右したことは広く知られる話である。

 株式相場にも、このような?潮の変わり目?が存在する。大きいところを挙げると、例えば2003年のりそな銀行への公的資金注入。日経平均株価は2000年4月以降、ITバブル崩壊によって急落を続けていたが、りそな銀行への公的資金注入が決まると反発に転じた。この公的資金注入によって、政府の姿勢が企業の破たん容認から救済へと180度転換したと市場で判断されたからだ。

 また、2013年のバーナンキFRB議長(当時の)の発言による?バーナンキショック?、ライブドアへの強制捜査がきっかけとなった?ライブドアショック?など、潮の変わり目は実に様々な場面で起こりうる。

実質新年相場スタートが?潮の変わり目?に

 実は足元でも、潮の変わり目となりそうな事象が起きつつある。

 それが、?実質新年相場?のスタートだ。株の取引では、約定してから3営業日後が株の受け渡し日となる関係で、12月26日から実質的な2015年相場が幕開けする。26日以降に株を買うと、実際に株主としての権利を得られるのが2015年の1月4日以降になるわけである。

 普通なら、「2014年は好調な相場だったな。でも、投資チャンス逃してしまって勝てなかったから、来年も好調相場が続いてくれたら、きっと買ってやるぞ」などと願望と反省あいまうだけで終わるところだろう。実は、この実質新年相場の幕開けで、銘柄によっては相場の流れがガラっと変わる可能性があるのだ。

 2014年の株式相場は、春先こそ下落して始まったものの、その後は上昇基調が継続。日経平均は、12月にリーマンショック前の最高値1万8300円に迫る勢いを見せている。当然、今年の上昇相場で大きく稼いだ投資家も大勢いるだろう。

 大きく稼げば、当然、それだけ収める税金も増える。そのため年末の12月には、大きな含み損が発生している銘柄を売って損失を確定させ、損益通算によって支払う税金を減らす、いわゆる個人投資家の?節税対策売り?が頻発する傾向がある。

 では、どんな銘柄が?節税対策売り?の対象になりやすいか。それは、株価が何倍に大化けするなど、個人投資家の人気によって一時的に大きく株価がつり上げられ、その後暴落しているような銘柄だ。

「そのような人気銘柄の場合、株価の値動きに釣られて買ったはいいものの、売り時を逃してしまって、そのまま塩漬けにしている投資家がかなりいます。節税対策をする場合、利益が乗っている銘柄を売っても意味がないですから、売るのは必然と損失が発生している銘柄になります」(金融ジャーナリスト)

 ある人気アナリストによると、すでにその銘柄の相場が完全に終了しているにも関わらず、株式セミナーで「先生、○○(銘柄の名前)は大丈夫ですか。また上がりますか」などという質問が相次ぐという。「そんな株はとっとと売っぱらって、別の株を買いなさい」と言っても、なかなか言うことを聞いてもらえないと嘆いていた。要は、一時の人気株に関しては、塩漬けにしている投資家が多いということだ。

 相場が悪く、損をしている投資家が多い年であれば、?節税対策売り?をする必要がない。しかし、今年のような上昇基調の年には、節税対策売りが多く出る。そして、売りの対象となりやすいのは、一時的に人気に火がついて大相場を演じた銘柄である。

大相場を演じた後に急落した銘柄に注目!

 話を元に戻そう。26日から?新年相場?がスタートする。つまり、25日で12月の?節税対策月間?が終了するわけだ。もちろん、売った銘柄をそのまま放置する投資家も多いだろう。しかし、一部には一度損失を確定させた後、再び買い戻す投資家も少なくないと思われる。そう考えると、節税対策売りで株価が下落した銘柄は、26日以降、大幅反発となる可能性がありそうだ。

 実際、2013年に株価が50倍以上に暴騰するなど大相場を演じ、その後急落していたガンホー・オンライン・エンターテイメントは、同年12月26日にストップ高。27日も上昇し、2日間で20%も反発した。

「2014年、大相場を演じた後に株価が急落した銘柄といえば、まずミクシィや日本通信が頭に浮かびますが、他にも直近で急騰した後に急落している銘柄は少なくありません。中には、すでにこの動きを先読みして上昇に転じている銘柄も見受けらます」(前出の金融ジャーナリスト)

 もちろん、銘柄によってはピクリとも株価が動かないかもしれないし、年が明けてからも同じ流れが続くとは限らない。ただ、(1)将来性の高い銘柄、(2)信用買い残の整理が進んでいる銘柄であれば、年明け後も上を目指す動きが続く可能性はある。そういう銘柄を短期で割り切って勝負すれば、勝算は十分にあるのだ。

新井奈央(あらいなお)マネーライター。株式評論家・山本伸のアシスタントを務め、株や経済を勉強。その後フリーライターとして活動し、株や為替などを中心に投資全般の執筆を手掛ける。マネー専門のライターとして雑誌や書籍などの執筆で活躍中。そのかたわら、銘柄の紹介にも携わり、夕刊フジの月間株レース「株-1グランプリ」では、出場3度のうち2度、月間チャンピオンの座についている。