By Mike Lau

iPhone 4Sから搭載されている音声認識アプリケーション「Siri」の元となる対話型情報検索システムを開発した「Siri,inc」の創業者であるAdam Cheyer氏が、サンフランシスコで開催されたLISTEN 2014に登壇し、Siriの開発秘話を語りました。

Adam Cheyer - Siri, Back to the Future on Vimeo

大きな拍手で迎えられて、Cheyer氏が登壇しました。



講演タイトルは「Siri, Back to the Future」で、Siriの開発秘話について語るとのこと。Siriは2010年にAppleによって買収された後、iPhoneに搭載されました。AppleにおけるSiriの開発に関しては機密なので、今回はAppleに買収される前のSiriに関する話。タイトル通り、講演は現代から過去へ向けて、Siriの歴史を遡る形で進められました。



AppleがSiriを公表したのは2011年10月のこと。Cheyer氏は「Appleストアで、FacebookやTwitterのアイコンが壁にデザインされているの見ていたわたしは『いつかSiriのアイコンがFacebookやTwitterと並ぶときがくる』とずっと信じていました。だから、Siri搭載のiPhone 4Sの発売は、人生で最も嬉しかったできごとの1つです。開発者のみなさんに言いたいのは、自分の目指している『成功』が何なのか、はっきりと思い描き、強く信じることです」とiPhone 4Sが発売された当時の気持ちや、成功するための心がけを語りました。



Appleストア店内に描かれている各社のアイコン。Cheyer氏はココにSiriが並ぶ日が来ることを思い描き、モチベーションにしていたそうです。



次は、2010年2月にSiri,incがApp Storeで初めてSiriのアプリをリリースした時の話。Siriの公開から2週間後にCheyer氏はスティーブ・ジョブズ氏のオフィスに呼ばれ、その後家に招待されます。Cheyer氏はSiri,incの共同創業者と一緒に、ジョブズ氏やAppleの幹部とミーティングを行い、最終的にSiri,incを売却することになりました。



これは、リリースされた当時のSiriのアプリ。



Siriの開発チームの面々で、最高のメンバーに囲まれて開発を行えたとのこと。



2007年は初代iPhoneが7月29日に発売された年。iPhoneの発売で携帯電話市場に大きな変化が生まれ、Cheyer氏はiPhoneの発売から2〜3年後にスマートフォンがどのような進化を遂げるのか、それを念頭において新製品の開発に取り組みました。そして、同年12月にSiri,incを立ち上げます。



Siri,incは出資を得るために、Siriのような音声認識アシスタントのシステムのプラットフォームの「ACTIVE Ontologies」をリリース。



Siri,incはもともと科学技術の発見・応用を通して、知識・経済・繁栄・平和へ貢献することを目的とする世界最大の研究機関「SRIインターナショナル」のスピンオフ企業です。このSRIインターナショナルが実施していたAIプロジェクトの「Cognitive Assistant that Learns and Organizes(CALOプロジェクト)」が2003年にアメリカ国防高等研究計画局(DARPA)から1億5000万ドル(約141億円)の助成を受けます。



CALOプロジェクトにはSRIインターナショナルの他にも、アメリカ全土からAIを専門に研究している大学や企業が参加し、「学習し整理する認知アシスタント」の開発に着手。



CALOプロジェクトがDARPAから助成金を受け続けるには、毎年実施されるテストを通過する必要がありました。DARPAはアメリカ政府の組織であり、その資金は簡単に言うと税金でまかなわれています。要するに国家を挙げてAIの開発に資金を投入したわけです。



さらに時間は1999年までさかのぼります。9月9日午前9時にCheyer氏は、11人の研究者からなる「Computer Human Interaction Center(CHIC)」という組織を立ち上げ、メディアを呼んで発表会を行いました。発表したのは家・自動車・オフィススペースにおけるAIに関する研究についてで、音声認識TVやスマート冷蔵庫、自動車のAR技術などのプロトタイプを公開。Cheyer氏は「CHICのInternet of Things(IoT)に対するSiriのような概念は1999年から進められていたことです」と語ります。



そして、Siriのリリースから約24年前の1987年には、当時AppleのCEOであったジョン・スカリー氏がEDUCOMで行ったキーノートで「The Knowledge Navigator Video」というムービーを公開しています。The Knowledge Navigator Videoには当時のAppleが思い描いていた音声認識アシスタントの構想が描かれていて、当時からSiriのようなアイデアが生まれていたことに驚きです。



The Knowledge Navigator Videoにはタブレット端末のようなデバイスが登場し、メッセージの受信や予定などを持ち主に教えてくれます。Cheyer氏は「The Knowledge Navigatorこそが、最も進化したSiriの形だと思います」と話しました。



Cheyer氏がさらに驚くべきこととして付け加えたのは、The Knowledge Navigator Video内の未来の世界が、実は2011年の世界を描いていたということ。ムービー内のカレンダーを見ると、AppleがSiriを発売する2週間前を指していて、この事実には観衆も拍手を送っていました。まさか、Appleが24年にも渡るロードマップを計画していたとは思えませんが、「さすがApple」と納得できそうなところがAppleのすごいところなのかもしれません。