Appleが無料配信したU2の「Songs of Innocence」は収益面でも大きな成功をもたらした事が判明
アイルランドのロックバンドU2のニューアルバム「Songs of Innocence」は5億人のiTunesユーザーに無料配信が行われ、削除ができないために苦情が多発したためAppleがすぐさま「U2のアルバム削除ツール」を発表するなどのトラブルがありましたが、全世界で2600万ダウンロードという驚くべき数字をたたき出し、多くの利益をAppleとCD会社にもたらしたことが判明しました。
U2 Album 'Experienced' by 81 Million iTunes Users | Billboard
Appleのエディ・キュー上級副社長は今回のキャンペーンについて、「『Songs of Innocence』は2014年9月9日の無料配信開始以降、全世界で2600万ダウンロードを記録し、iTunes・iTunes Radio・Beats Musicを通して8100万人もの人々が作品に触れることになりました。なお、2003年のiTunes Store開店以降に販売されたU2のアルバムセールスは、1400万枚となっています」と語っています。また、U2はBillboard誌での声明で「Appleはミュージシャンが収入を得るために闘うハイテク企業で、多くの人が曲を聴けるように無料でアルバムを配信することは本当にすばらしいことで、バンドとして感謝している」とコメントしています。
U2の「Songs of Innocence」はYouTubeでも視聴することができます。
▶ U2 - Songs Of Innocence [Deluxe Edition] Full Album 2014 + Mp3 Download - YouTube
多くの無料視聴者がいた一方で、Appleで無料配布したバージョンには含まれなかった10曲のボーナストラックを含むCD版が予約だけで7万枚の売上げを記録。一か月前に無料版を配信したにも関わらず、CDのセールスが好調という事実にCD小売業の関係者は驚きを見せています。過去のケースでは、アメリカのラッパー「JAY-Z」が2013年7月に「Magna Carta Holy Grail」をリリースした際に、SamsungのGalaxy向け限定でCDよりも5日間前倒しで先行リリースを行いましたが、その後に発売されたアルバムは初週で52万8000枚もの売上げを記録。また、JAY-Zの妻であるビヨンセが新作アルバムをiTuens Store先行でリリースしたところ、37万4000枚という売上を記録しています。ただし「CD版のリリースがダウンロード版よりも遅れる」として、Amazonや大型スーパーマーケット「Target」といった小売業者からは抗議の声が挙がっています。
By JD Lewin
今回Appleが実施したキャンペーン全体からは1億ドル(約108億円)の利益が生みだされており、「2600万ダウンロード」という数値をもとにBillboard誌がはじき出した試算によるとユニバーサルミュージックには5200万ドル(約52億円)の利益が、U2側には約500万ドル(約5億円)レベルのロイヤリティ収入があると推測されています。AppleとU2はこの件についてコメントを拒否しています。
今回のU2によるアルバムリリースはデジタル・CDともに成功を収めていますが、さらに興味深いのはグラミー賞の規定を満たすために一部の店舗でのみ販売されたレコードバージョンが、オークションサイトのebayで1500ドル(約16万2000円)で転売されているという事実です。デジタルでの先行リリースや無料配信は、CDの小売り業者にとって不都合な存在とされてきましたが、今回のU2の成功例を見るとあながちそうとも言い切れなさそうです。