ちゃんと知りたい、ALSとはどんな病気なのか:アイス・バケツ・チャレンジを経て

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研究資金を集めるためのキャンペーンで大きな話題になったが、ALSとはどんな病気なのか。なぜこの病気がそれほどまでに恐ろしいのか。

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ネットの世界から映画の世界まで、スポーツから政治まで、Ice Bucket Challangeのキャンペーンに賛同した有名人はいったいどれくらいに及んだのだろう。ALS(Amyotrophic Lateral Sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)治療の研究にあてられる資金を集めるための挑戦だ。

動画の拡散を通して行われ、そのなかで主演者たちはバケツ1杯の凍りつく冷たい水をかぶり、24時間以内に同じことをするように他の人々を指名する。同時に行われるのが、患者たちの支援を行うアメリカの主要な協会で、キャンペーンを開始したALS協会への100ドルの寄付だ。

目的は、この病気に冒された人々に対する連帯の意識とメッセージを広めることだ。これは、市民を科学研究のための寄付を行うように促すには必要な条件だ。

この行為の実際の有用性についてはいくらか議論がなかったわけではないが、結果は、これまで集まった金額を見ればわかる。わずかな日数の間に、ALS協会に集まった金額は4,000万ドルを超えた。イタリアでは、国内でのキャンペーンの受入先となったイタリアALS協会が、寄付の急上昇を記録している。

しかし、ALSとは何なのか? そしてある人がこの病気にかかるということは何を意味するのか? キャンペーンの成功にとどまらず、この重病について知るよい機会だと考えよう。

ALSとはどういう意味か

ALSは、運動ニューロン、すなわち神経系を筋肉組織と接続する神経繊維を襲う神経変性疾患で、進行性の身体麻痺をもたらし、健康や、生活の質、寿命に破滅的な影響を及ぼす。

“amyotrophic”という言葉は、“a”(欠性の接頭辞)、“myo”(筋肉)、“trophic”(発達)というギリシャ語に由来し、筋肉の衰弱、萎縮を意味する。また、“lateral”は、病気に関わっている主要領域のことで、運動皮質や脳幹だけでなく、まさに脊髄の側索を含んでいる。

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どれくらいの人がかかるのか

ALSはいわゆる希少疾病に属し、かかるのは2万人に約1人だ。5万人の人口につき毎年1人、新しい病人が出る(Orphanetのデータ)。イタリアでは、診断は現在少なくとも3,500下されており、1年に約1,000件の新しい症例が出ている。一般に、50歳以降に発症し、60歳前後が最も多い。80歳以降と青年期は特にまれで、小児期には記録されていいない。全体として、男性の方が女性よりも多くかかっていて、男性と女性の比率が1.5対1だ。

病気の原因

ALSの原因はまだ研究中だ。というのも、多因性の病気で、その発生はさまざまな付加的原因によるものだからである。そのなかには、遺伝的性質、グルタミンの過剰(神経細胞にとって有害だ)、いくつかのニューロンの成長因子の不足、そして毒性物質にさらされるなどのような環境的要因がある。

診断キットは存在しない。病理は、症状が現れて初めて見分けることができる。したがって、いまのところ、これを未然に防いだり、発生時にブロックすることを考えることはできない。まさにこのために、研究は、処置と治療法の開発だけでなく、診断法と、運動ニューロンがその機能を失い始める厳密なダイナミズムの理解にも目を向けている。

ALSにかかるとどうなるのか

ALSの症状は非常に多様で、他の病気の症状と間違えられ、少なくとも最初段階では、気付かれないことが非常に多くある。通常、最初の兆候は、虚弱と、一方もしくは両方の足、もしくは手でつかまっての歩行困難、動作の不正確さ、筋肉の痙攣や小さな発作だ。症状がよりはっきりと現れる身体の部位は、最初にダメージを受けた運動ニューロンと結びついている筋肉である。病気の様々な形態によって違いがあり、人によって異なる仕方で現れるために、診断の枠組みがさらに複雑になり、治療の時期が遅れる。

より進行した段階では、ALSは声や言葉を発音する能力や、飲み込むこと、かむことを困難にする。そして次第に体のすべての筋肉の萎縮と麻痺へと進んでいき、最終的な段階では、しばしば窒息死へと至らしめる。

病気の最も恐ろしい側面のひとつは、病気に冒された人が、最終的な段階においてさえ、思考やコミュニケーションの能力を失わず、そのため、最後まで自分の状態について意識をもったままで、どんどん動かなくなっていく体に閉じ込められることだ。

治療法の展望

ALSを治すことのできる治療法はまだ存在しない。利用可能な薬の大部分は、単に症状に作用するか、一時的な緩和剤だ。したがって、まだ非常に社会的インパクトの非常に高い病気のままだ。しかし、「Riluzole」という薬が存在し、グルタミンに起因するニューロンへのダメージの進行を遅らせる(したがって病気の進行を遅らせる)ことができる。そして、呼吸器のサポートが患者の寿命を延ばすのに効果的であることが証明されている。

さらに、病気に耐え、患者の自立を長く持続させるのに役立つ活動や生活スタイルがある。例えば、有酸素運動(散歩、水泳、自転車)は筋肉を強化して、循環系を活動的に保つ。また、言語の発音の問題には言語聴覚療法士の処置が、患者を襲う不安や鬱病の状態と戦うには心理的サポートが、よい影響をもたらす。

研究はどれくらい進んでいるのか

近年、ALSに関する研究(と知識)は増大していて、すぐに決定的な解決策が見つかるという希望がより現実的なものとなっている。臨床試験は世界中で数多くあり、最近では、いくつかの処置が、成功の事例を記録した。ただし、この点に関して医師たちの見解はまだ非常に慎重ではあるが。

ALSの複雑さと多くの不明瞭な側面のために、科学者たちは、 病気の発生の原因や、その進行に関わるメカニズムの研究--正確な治療目的を示唆することができるかもしれない--から、新しい有効成分の開発や適切な遺伝子治療の考案まで、多くのプランを並行して、非常に多様なアプローチも用いて研究することが必要である。

ALSとの戦いがより有望に思われる分野の一つが、幹細胞である。あるイタリアの研究(まだ進行中だ)の最近の臨床実験は、非常に勇気づけられる予備的結果を出した。