篠崎が二度のビッグイニングで大勝

  教育界の全国的な傾向として、公立校の中高一貫化が進んでいる。東京都でもその傾向は、進学校としてより進学強化していくという方向で試みられているが、都立両国はその先駆的な立場でもあった。もっとも、この傾向は部活動の強化ということでは、逆風である。今年のチームも、バッテリーと主将の笹川君以外は付属中学からの選手である。その現3年生が中学2年時代の秋には、ソフトボール部(両国高附属中には野球部がない)の都大会で優勝している。そのメンバーが中心になっての高校野球最終学年の夏を迎えたのだ。

 進学校の都立両国だが、先発メンバーは全員3年生で、ここまで頑張ってきた。ただ、皮肉にも大会初戦となったこの日は試験の真っ盛りというバッドタイミングの日程となってしまった。

 高校野球は、どうかすると実力以上にスコアが開いてしまうというケースもよくある。何かの拍子でビッグイニングが出来てしまうと、よく、そういうことになる。この試合も、そんな展開になってしまった。

 都立両国は初回、先頭の堀口君が内野安打で出ると、バントで送って1死二塁。しかし、結局二塁へ走者を進めたのはこれだけという結果になってしまった。その裏、都立篠崎は先頭の加藤君が四球で出ると、バントと暴投で三塁へ進み、2死後4番西谷君が左中間二塁打して先制。それでも、続く吉野君を右飛に打ちとってチェンジとなった段階では、まさか次の回に8点ものビッグイニングになるとは思えなかった。

 2回の都立篠崎は、6番の渡邊君が右前打すると、続く鈴木湧君のバントが悪送球を呼んで一三塁。さらに8番高橋審君は三遊間を破って三走を迎え入れるが、ここで中継が乱れて二三塁となる。ここから、都立両国の守りはガタガタと崩れていくことになる。黒岩君の右飛かと思われた打球はポトリと前に落ちた。打たれまいと力んだ葛西君は、四球、死球と続けてしまい押し出し。さらには犠飛で、その中継ボールもミスを招くという悪循環で結局、この回の都立篠崎は打者14人で5安打5四死球に記録上だけでも4つの失策が重なって8失点。

 錦糸町の繁華街にあって、グラウンドが狭いうえに、中学との併用でもある。普段の練習では、まともに中継プレーの練習も出来ていなかったということも、どこかに影響していたことも確かであろう。

 3回も、打者11人で渡邊君、鈴木湧君、高橋審君と下位の3連続二塁打などもあって6点が入った。都立両国としては、修正出来ないまま5回を終えてしまい、最後の夏は残念な結果となった。中学時代から一緒にやってきた仲間も多いだろうが、ラストサマーはほろ苦いものになってしまった。

 都立篠崎は大量リードもあって、高橋審君とラスト1イニングを投げた1年生の依田君との継投で余裕の完封となった。

(文=手束 仁)