済美vs高知

写真拡大 (全2枚)

夏までの限られた時間での再起を誓う名門高知 

5回表、二死満塁から5番・安樂(済美)が走者一掃のタイムリー

 果たして、あと1ヶ月あまりでトップフォームに到達するのだろうか。心配でならない。この試合で先発した済美・安樂 智大投手(3年)のことではない。明徳義塾の5年連続夏甲子園出場を阻止せんと第2シードから挑む高知のことだ。

 明徳義塾戦のレポートで記されているように、現在夏を見据えた投げ込みの段階にある安樂は、6回83球を投げ被安打5・6奪三振・1四球で1失点。「今日はボールが走っていなかった」と本人も認めるように、4月中旬より落差が増したスプリットなどと比べ、ストレートは最速142キロ。3回裏一死から9番・関真一塁手(3年)に左中間二塁打、続く上田 隼也中堅手(3年)に中前打を浴び1点を失ったシーンも、130キロ台ストレートが高めに浮いたところを捕えられたものである。

 ただ、この3回をのぞけば高知打線は安樂を打ち崩せず。初回を除き毎回ランナーを二塁まで進め、6回には二死一・三塁のチャンスを作るも、最後は高低で目線を変える安樂の投球術に翻弄された感は否めない。2番手・山口からは4安打で2点を奪った7回裏・一連の攻撃は見事だったが、これが公式戦ならば恐らく安樂は完投していただろう。

 それ以上に厳しい結果に終わったのは先発右腕・酒井 祐弥(3年)が5回4失点、左腕・鶴井 拓人(2年)も4回2失点に終わった高知投手陣。いや、もっと言えば川上翔大(3年)を含めたバッテリーの配球である。

 

済美戦に先発した酒井祐弥

 象徴的なのは、1対1で迎えた5回表二死満塁で5番・安樂に中越走者一掃二塁打を浴びたシーン。それまで4四死球を与え、さらに3ボール1ストライクのカウントだったとはいえ、酒井・川上翔大バッテリーが選択したのは彼が最も得意とする真ん中やや外よりのストレートだった。

 最速138キロと持ち味のストレートは回復傾向にあるとはいえ、この配球はあまりに無謀である。フォーク、スライダーといった落ちるボール、大きなカーブも武器とする酒井の強みをより引き出し、なおかつ大量点を防ぐには、ここは押し出し覚悟でも変化球を選択すべきだっただろう。

 これが強豪校への力試しという段階・時期ならばまだいい。ただ、高知が1ヶ月半先の夏の高知大会で立ち向かう相手は安樂以上の投球術と、安樂以上の精度で長打を放つ明徳義塾・岸 潤一郎(3年・主将)である。済美を「仮想・明徳義塾」として戦える舞台で、彼らの残した経過と結果はあまりにも勿体無いものだった。

 その気配を察してか試合直後には1時間近くミーティングを行い、さらに3年生に30分間の選手間ミーティングを課した高知・島田達二監督。「練習中している中でも粗さやスキがある」課題克服を急がなければ、3年連続決勝戦「1対2」に終わっているライバルへのリベンジ舞台にすら立てない可能性も十分ある。

(文=寺下 友徳)