ヤフーが検索戦線に復帰するためには
もしかしたらアップルは、グーグルのオンライン情報検索の強固な守りを突き崩せるかもしれない。
ウェブ検索における勝者は明らかにグーグルだが、ヤフーはまだ少しでも市場で結果を残せないかと考えているようだ(ヤフーのウェブ検索は、2009年にマイクロソフトに譲渡して以来、実質的には存在しないのだが)。
Recode のカラ・スウィッシャーの報道によると、ヤフーはアップルを説得して iPhone や iPad、その他の iOS デバイスのデフォルト検索エンジンをヤフー検索にしたいと考えているようだ。この戦略は、最近のアップルとグーグルの不仲を利用したものだろう。アップルは2012年にグーグル・マップと YouTube を iPhone のホーム画面から追放している。
この戦略は実に理にかなっている。ヤフー製品にとって、グーグルの Android デバイスやマイクロソフトの Windows デバイスは手の届かない存在だろうから。
スウィッシャーは、「ヤフー CEO マリッサ・メイヤーが推し進めるモバイル検索パートナーへのアップル採用計画は順調なようだ」と報じた。ヤフーに詳しい人々によると、「ヤフーは、検索プロダクトの外観などの詳細(プレゼンテーション)を準備をしていて、アップル幹部への提案を望んでいる」らしい。
このプランは少々強引に感じられる。ヤフーはウェブ検索技術をマイクロソフトに譲渡したあとも、この技術の改良に取り組んでいると報じられているが、「最も信頼されるウェブ検索エンジン」の座をグーグルから奪えるとは思えないからだ。
しかしそれは、我々が検索というものをグーグルと同じ視点で定義してしまっているせいかもしれない。ヤフーの最善策は、グーグルのやり方に追随しないことなのだ。
モバイルへの移行
ヤフー検索に関するマイクロソフトとの契約には抜け道があり、そのおかげでヤフーはモバイル検索に関する契約を自由に結ぶことができる。ヤフーはこの抜け道を都合良く利用してアップルの手助けをし、グーグルを出し抜くことができるのだ。
モバイルデバイスでは、人々はあまりウェブページを検索していない。検索しているのはアプリだ。
アップルの App Store は何十億ドルもの収益を生んでいるが、消費者がダウンロードしたいであろう関連アプリを推薦するのは得意ではない。同時に、ユーザがアプリの枠を超えた検索を行うのはほぼ不可能である。なぜなら、アプリをウェブページのように検索するテクノロジーは、まだメインストリーム向けには開発されていないからだ。
グーグルは最近、Android をアップデートしてアプリ内検索をシンプル化し、アプリ内の特定の場所に直接リンクを貼れるようにした。これは「ディープ・リンク」と呼ばれる手法だ。Android 開発者たちは、自分たちのアプリケーションを検索結果に含めることができるようになったため、こうしたリンクをウェブ検索に直接表示している。これによってユーザは、アプリ内の特定のページに移動できる。
ディープ・リンクと呼ばれるアプリ検索によって、開発者やマーケターがアプリケーションを配信する方法は一変するだろう。現在のウェブサイトと同じように、アプリも検索に向けて最適化されるようになるに違いない。しかし重要なのは、この種の検索のおかげで、ユーザが関連アプリケーションをこれまでよりも簡単に見つけられるようになることだ。
アップルはこのような検索エンジンを持っていない。これは、開発者と消費者の両方にとって大きな不利益である。ヤフーのテクノロジーは、ちょうどグーグルが Android でそうしたように、iOS のエコシステムを再構築する可能性がある。
そしてヤフーはこのテクノロジーをデスクトップにまで拡張するかもしれない。マイクロソフトとの取引に存在するもう一つの抜け穴によって、ヤフーはコンテキスト(文脈)検索を提供することができる。検索クエリに応じて、ウェブページへのリンク一覧の代わりに、フォーマット化された情報を提供するのだ。例えば「天気」で検索すると、天気予報サイトの一覧ではなく、現在の気温を表示するのである。
ヤフーは、クエリに対する文脈的回答として、デスクトップ検索から関連アプリのリンクを提供し、ダウンロードを促す。これはアップルと大勢の開発者の課題にしっかりと合致するものだ。
瞬時に情報提供
アプリ検索はまだ発展途上の分野である。そして、ヤフーが最近買収した二つのスタートアップ(Aviate と Sparq)が、アプリを中心としたヤフー検索の再発明に拍車をかけるかもしれない。
Aviate は「インテリジェント・ホームスクリーン」アプリケーションとして知られている。Android ホームスクリーン上のアプリケーションを再分配し、ユーザが必要とするアプリを、ユーザーが必要とするときに提供するのだ。例えば、もしあなたが朝によく Twitter を使用し、帰宅時の電車では Facebook を見ている場合、Aviate は Twitter を前面の中央に配置し、午後にオフィスを出る頃にはそれを Facebook に切り替えてくれる。
もし Aviate あるいはそのようなテクノロジーが最終的に iOS に搭載されるとなれば、それはアップルのあらゆるデバイスにおいてデフォルト・アプリケーション・マネージャになるだろう。ユーザが必要とするときに重要なアプリを優先表示し、使用頻繁の低いアプリケーションは背景に隠れることで、よりパーソナライズされたエクスペリエンスの提供が可能となる。Aviate のテクノロジーは、アプリ検索エンジンのインフラにも広く適合することだろう。
Sparq は、一月にヤフーに買収されたモバイルマーケティング会社で、ユーザがディープ・リンクを介してアプリからアプリへと移動できるテクノロジーを提供している。Sparqの製品はサービスが停止されてしまったが、ヤフーがその根底にあるテクノロジーを統合することは明らかだ。Aviateと合わせて、ユーザは検索バーを離れる必要なしに、モバイルコンテンツを発見しやすくなるだろう。これこそまさしくヤフーが、そして拡大解釈すればアップルが、求めていることなのだ。
アプリのマッピング方法は?
ヤフーがアプリ検索で成功するためには、まず開発者たちを説得して彼らのAPIがヤフーにアクセスするようにしてもらい、モバイル検索の一部としてヤフーを選んでもらう必要があるだろう。
ヤフー単体では、アプリ開発者たちにデータを共有してもらうのに苦労するかもしれない。しかし、モバイル開発者にアピールできるようなサービスを構築し、さらにアップルとも提携すれば、開発者たちはヤフーのモバイル検索エンジンに金銭的な関心を寄せるようになるだろう。彼らはヤフーにアプリの検索を許可するだけでなく、ヤフー検索を自らのの製品内で宣伝するかもしれない。
アプリ検索には、開発者たちがウェブサイトとアプリの関連性を構築する上で更なるステップが求められる。まずはウェブサイト上に、アプリケーション内のページコンテンツに到達する方法を指定するフィルターが必要だ。次に、その情報がアプリケーションで開かれる方法を正確に伝えるフィルターが必要となる。 グーグルは、Androidに用いた技術の詳細を開発者向けのサイトで紹介している。これに類似したツールを開発者のために構築することが、ヤフーの課題の一つだ。
コンテキスト検索とモバイル検索を実現することで、ヤフーは適切なアプリケーションを適切なタイミングでユーザに提示するモバイル検索エンジンを提供できるようになるだろう。これは今後、アップルがグーグルと競争するために必要となるものだ。
もちろん、メイヤーがアップルの重役たちに美しいスライドを見せたというだけでアップルはヤフーと提携するのではない。ヤフーとの検索パートナーシップを行えば、アップルは最大のライバルに対して何十億ドルという広告ビジネスを、しかも自身のデバイスを経由して提供しなくても済むようになるだろう。
将来的には、TechCrunchのコラムニスト、シーグラーが言っていた「グーグル・フリーな iPhone」を、ヤフーとアップルで実現させるかもしれない。それはハイリスクな賭けだ。しかし、ヤフーとアップルがこの賭けに出なければ、ウェブのときと同じように、アプリ検索でもグーグルの独走を許してしまうことになる
画像提供:TechCrunch(Flickrより)
Selena Larson
[原文]