『誰も知らなかったドアラ学 [決定版]』
著者/誰も知らなかったドアラ学制作委員会(テレビ愛知・流行発信)
発行/流行発信
ドアラ研究の決定版。特別付録として、ナゴヤドームの中日ドラゴンズ公式戦で流れる「ドアラのマーチ」のスペシャルVer.を収録したDVD付き。なお、版元の流行発信は、東海三県を対象にしたファッションカルチャー誌『スパイマスター』などを発行する、地元・名古屋の出版社。PHP研究所以外からドアラの書籍が出るのは、おそらくこれが初めてではないか。

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前略 ドアラ先生
ご無沙汰しております。おととし、先生が『コアラ坂』を上梓されたときにお手紙を差し上げた、愛知県在住のライターです。今年もプロ野球が開幕し、先生も中日ドラゴンズのマスコットキャラクターとして、さぞお忙しい日々をおすごしのことでしょう。

さて、ドアラ先生のデビュー20周年を記念して、先頃、先生を徹底研究した『誰も知らなかったドアラ学 [決定版]』という本が出ましたね。本書の巻末には、先生のデビュー当時のお写真も掲載されていますが、顔がなぜかピンク色で、今風にいえば“キモかわいい”(どちらかというと“キモ”の成分のほうが多めの)その風貌に思わず吹き出してしまいました。……あ、いや、失礼なことを申し上げてすみません。

しかし「人に歴史あり」といいますか、いまでは人気者の先生も、デビューしたものの、けっこう長いあいだ不遇な時代をすごされていたのですね。

1996年にドラゴンズに入団した森野将彦選手は、本書で《当時は存在感もなく、「ドアラがいなきゃいけない!」/全くそんな状況じゃなかったんですよ》と証言していますし、球団広報部にあって16年にわたり先生をサポートされてきたMIKこと石黒哲男さん(現在は球団企画部所属)でさえ、1997年に球団マスコット担当に着任した際には、新たに誕生したシャオロン先生を育てていくつもりだったとか。でも、そのとき、ファンのなかには「ドアラはどうなるんですか?」「ドアラをなくさないで!」と問い合わせる方もおられたそうですね。その声はわずかではあったものの、《シャオロンは大きいし、積極的に動けるマスコットもいた方が良いだろう》とMIKさんの心を動かし、結果的に先生は球団に残留されることになったのだとか(ちなみにMIKというのは「元石黒広報」の略なのですね)。

たとえ数は少なくても、自分の存在やすることを見てくれている方々がいるのだと思うと、とても励みになることは、私にもよくあります。じつは不肖私めも、ライターとしてデビューして今年で20年を迎えるだけに、先の話にはよけいに共感を覚えました。

先生との共通点はデビューばかりでなく、先生が1冊目のご著書『ドアラのひみつ』を出されたのと同じ年、2008年には私も最初の拙著を出版しております。ただ、世間で話題になった度合でいえば、まさに雲泥、月とスッポン、昨シーズンと今シーズンでのドラゴンズの選手の年俸総額の差(約8億円)ぐらい違います。

本書でのMIKさんの話によれば、『ドアラのひみつ』が出たときのフィーバーぶりは本当にすごかったそうですね。発売後、キャンプで沖縄にいたMIKさんは、取材依頼の電話がひっきりなしにかかってくるので、急遽名古屋に戻ることにしたとか。各メディアの取材ばかりか、DVDやCD、写真集のオファーまで殺到するなんて、それ以前から動画投稿サイトで人気が出始めていたとはいえ、出版後の反響の大きさには、物書きとして嫉妬すら覚えます。ただ、あまりに忙しくて、最終的にMIKさんは下血して入院されてしまったそうで、それは何とも大変でしたね……。

それにしても、最初にドアラ先生の本を出そうと思い立った方には、同じ出版界の人間として頭が下がります。本書には、その担当編集者、PHP研究所の太田智一さんのインタビューも収録されていますね。『ドアラのひみつ』が刊行された直後は、太田さんもまた、本の内容に関する取材のみならず、「キャラクターにくわしい人」「あのドアラの本をつくった人」などとしてメディアから引っ張りだこだったとか。

とはいえ、そんな太田さんも、やはりネット動画での人気を知って、先生を追いかけ出したものの、当初は《私が受け持っている書籍の企画では形にできるものではないと、度外視して見ていました》と語っています。それを企画化しようと思い立ったのは、東京のとある美容院のスタイリストさんの一言がきっかけだったそうですね。そこから、企画書、とくに概要説明欄に、いかに先生の動画再生回数が驚愕すべきものか、その人気の高まりについてびっしりと書くなどして、社内で訴え続けた結果、ようやく企画が通ったのだとか。

出版不況のなかで、出版社は冒険をすることを避け、売れた本の二番煎じ、三番煎じがまかり通るという傾向がますます強まっています。そもそも、先生の所属する球団の親会社は、出版部門も持つ新聞社でありながら、自分のところのマスコットの企画を他社に持って行かれたのですから、そう考えると何だかこそばゆい……いや、ここで愚痴を言うのはよしましょう。私はとにかく、太田さんの熱意に心を打たれました。また、企画化のきっかけをつくってくれたスタイリストの方にも、先生のファンとして御礼を言いたくなります。

『ドアラ学』ではこのように、先生の活躍を支えたり、ブームに貢献した人たちから裏話が明かされているほか、各界の専門家によって先生の人気のひみつが分析されています。たとえば、中京大学の湯浅景元教授は、スポーツ科学の見地からドアラ先生にさまざまな助言を与えていらっしゃいますね。そのなかには、ハチミツトーストは食後約50分でエネルギーになるので、先生がナゴヤドームの試合で宙返り(バック転)をする直前にも食べるといいという話が出てきました。奇しくも先生は食パンが大好物。まさにうってつけのメニューといえます。

ただ、年俸として食パンを支給されている先生は、昨年末の契約更改で、その支給が前年比25%ダウンの750グラムとなってしまいました。……なんて、蒸し返すようですみません! 今シーズンはぜひチームも先生もご活躍され、年俸アップに加え、+αでハチミツも支給されることをお祈り申し上げます。

本の内容をあまりバラすと、先生の営業妨害になりかねないので、そろそろこのへんにさせていただきます。ああ、でももう一つだけ。本書には、ダイアモンドユカイさんが《年齢もかなりいっちゃってることだから、むやみにバック転をするのは控えた方がイイんじゃないか?》との言葉を寄せておられますね。私としては、たしかに先生にはあまり無理をしてほしくないと思う反面、体が許すかぎり、いつまでもバック転に挑み続けてほしいとも思います。はばかりながら最後に、お互いに今後も末長く活動を続けられるよう、ときにがんばり、ときにユルく歩んで参りましょう! と、同期としてエールを送らせていただきます。

では、くれぐれもお怪我やご病気などなさらぬよう、ご自愛ください。またシーズン後、名古屋のパレードでお会いしましょう!
  ――地元の一ファンより 草々
(近藤正高)

『誰も知らなかったドアラ学 [決定版]』目次
*スポーツ学「ドアラの身体能力は?」:湯浅景元(中京大学スポーツ科学部教授)
*アイドル学「ドアラはアイドルなのか?」:森永卓郎(経済アナリスト、獨協大学教授)
*生物学「ドアラはコアラなのか?」:黒邉雅実(東山動物園・副園長)
*書道学「ドアラの書体はどんな印象を与えるのか?」:高橋史(筆跡アドバイザー・マスター、書道サロン墨麗代表)
*マーケティング学「なぜドアラは人気者になれたのか?」:太田智一(PHP研究所・電子部門チーフディレクター)
*MIK(元石黒広報)のドアラ飼育論!?
*私のドアラ論:森野将彦(中日ドラゴンズ)/つば九郎(東京ヤクルトスワローズ)/yukihiro (L'Arc〜en〜Ciel)/ダイアモンドユカイ(ロックスター)/陽岱鋼(北海道日本ハムファイターズ)/浅尾拓也(中日ドラゴンズ)
*Cheer Dragons 歴代のチアドラゴンズが語るドアラとは?
*ドアラが選ぶPHOTO10選 ※掲載された写真は「公式プリント どらプリ」で購入可能
*特別付属DVD「ドアラのマーチ」(唄/ダイアモンドユカイ)