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世の中にはいろいろ仕事があるが、他の職業にはないサラリーマンだけの最強の武器とは何か、サラリーマンであり、かつ人気ビジネス書著者でもある金田博之氏に聞いた。

○他の職業にはない武器は4つある!

――ずばりサラリーマンだけの最強の武器とはなんですか?

ずばり、きましたね。私もずばり答えましょう。それは「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」の4つです。経営用語では経営資源の4つの要素として有名ですが、私はサラリーマンの「4種の神器」と思っています。

――「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」ですか?

はい。サラリーマンだけでなく、起業家を目指す方にとっても、この4種の神器を使えるサラリーマンの環境は有益なものです。最大限いかしていきたいですね。私の知り合いの起業に関するコンサルタントも「会社の仕事を徹底的にこなして、もう会社から学ぶべきものはないという人物ほど、起業したときの成功率は高くなる」といっています。

――具体的に聞いて良いですか? サラリーマンの武器としての「ヒト」とはどのようなことですか?

まず社内の専門家集団ですね。法務にしろ、経理にしろ、マーケティングにしろ、商品企画にしろ、会社は様々な分野の専門家が集まって、ビジネスをしています。つまり、会社に所属しているだけで、多くの専門家とふれあい、知識を吸収するチャンスがあるのです。

他にも、気にいらない人にしろ、気の合う仲間にしろ、多様性の中から自分にない知識や経験を学びとれることもあります。このような「ヒト」は、自分にとって大きな武器になります。

自分が好きな社員、好きな顧客とだけ事業をするのは非現実的です。もし、そういった状況を意図的に作ろうものなら、事業の拡大は困難ですし、そのような会社は高確率で衰退するでしょう。

ただ、自分がすべて差配できる状態になると、こういった状況に陥りがちです。サラリーマンであり、ある程度の規模の会社につとめていれば、なかなかこういう状態にはなりません。

つまり、サラリーマンでいるだけで、落とし穴に落ちずに人から得られる経験や知識をためていけるのです。

○「モノ」「カネ」とは

――なるほど。では4種の神器の2つ目、「モノ」とはなんですか?

例えば自社が売っている製品……、極端な例ですが、自動車を作ろうとすると大きな資本が必要ですよね。製品開発にしろ、マーケティングにしろ、起業家だとイチから作るのに労力がかかりますが、会社だとそういった機能をもっている部署が身近にあります。 会社という組織の中では、製品だけでなく、レストランにせよ、IT業界にせよ、会社員が担当している業務のどれが欠けても、それらが世の中に価値のある商品となって提供されることはないでしょう。

エアコンだろうが、薬品だろうが、消しゴムだろうが、自分がかかわった製品なりサービスなりが多くの人に喜ばれたら、とてもうれしくありませんか? サラリーマンは既にある会社の「モノ」を上手に活用することで、世の中に大きなインパクトを与えていけるのです。

あと、この「モノ」には、パソコンやプリンタや会議室など、会社の備品も含まれます。こちらの「モノ」についてはわかりやすい例ですが、こんな備品を使えるのも、実はおいしい環境なんですよ。

お金についてもサラリーマンの大きな武器です。例えば、新規事業を立ち上げるときに新規投資が1億円をこえるケースは、けっこうあります。それくらい大きな事業から得られる経験は、サラリーマンならではの経験ではないでしょうか?

○「情報」とは?

――「ヒト」「モノ」「カネ」についてはわかりました。4つ目の「情報」とは、具体的にどんなことですか?

例えば企業内部には様々なノウハウをまとめたマニュアルがあります。あるいは、研修資料、場合によっては企業秘密となりうる経営ノウハウも文書でまとめられているケースがあります。こういった整理された形で情報を手に入れられるライブラリーがあるのは、会社だからこそです。

私は過去に営業企画本部の責任者をしていましたが、会社の営業ノウハウを文書の形でまとめるのに相当の労力を費やしてきました。ノウハウを文書にまとめる作業というのは口で言うほど簡単な仕事ではありませんでした。会社にある情報というものは、相当の人的コストと経験が濃縮されたものなんです。これをサラリーマンなら堂々と使うことができるのです。すばらしいと思いませんか?

――なるほど、サラリーマンにとって、この4種の神器を活用する意識をもつだけで、サラリーマン生活が充実しそうですね?

実際はつらいこともあると思います。ただ、つらいときは、私はこの4種の神器のことを思い出して、会社を自分のために、あるいは世の中のために使う意識をもつようにしています。そうすることで、目の前のつらいことを自分にとってプラスになる経験に変えることができました。

ちなみに世の中には若くして起業し成功している優秀な起業家が大勢いますよね。私もできることならそうなりたかったですが、この4種の神器の存在に気づくのが遅かったかもしれません。若くして成功している起業家は、この4種の神器を自分なりにうまく使えているものです。

先日、『サラリーマンこそ最強の職業である』(マイナビ新書/893円)という本を出版し、様々な視点からこの4種の神器を活用する工夫を紹介しているのですが、私自身、この本にまとめた情報をもっと若いときに知りたかったと強く思います。事実、この書籍をご存じの私のお取引先の部門長クラスの方たちから「もっと早く知りたかった」「仕事に対する意識が変わる」「(最近元気のない)若手社員に早く読ませておきたい」といった声をいただいています。みんな、嫌々で仕事はしたくないんです。つらいサラリーマン生活を、楽しいサラリーマン生活に変える秘けつを多くの方に知っていただきたいです。

結局、出世するサラリーマンとそうでないサラリーマンの違いは、いかに早い段階でこの4種の神器の存在に気づき、自分のために使えるかの差です。それを私は30歳になって気づきました。20代前半からこれに気づいていたら、と思うと、ちょっと悔しい気分になってきます。

○「遅すぎる」ことはない! 今からでも神器を使おう

――この4種の神器の意義に気づかないまま40代を迎えると、手遅れだったりしますか?

私も間もなく40歳になります。40歳を超えても、この4種の神器を活用して自分を成長させ、やりたいことをやっていくのに「遅すぎる」ということは絶対にありません。

もちろん、若いときに気づくのに越したことはありませんが、いまや人生80年以上の時代です。40歳を過ぎても、残りの人生を考えたら、ぜんぜん遅くないですよね。

私は自分のビジネス経験を生かして2013年11月に『仕事に才能はいらない』(かんき出版/1,470円)という若手ビジネスパーソン向けのビジネス書を出版し、2014年1月には先ほどお話した『サラリーマンこそ最強の職業である』を出させていただきました。

これらの本でまとめた知識をみなさんのよりよい仕事人生のために役立てていただければ幸いです。みなさん、一緒に幸せなサラリーマンの道を進んでいきましょう!

金田博之1975年山口県生まれ。大学卒業後、グローバルに展開する大手ソフトウェア企業に就職。以来、入社1年目で社長賞受賞、29歳で副社長補佐に抜擢、30歳で部長、35歳で本部長に昇格するなど第一線で活躍。現在は日本の大手製造業で経営の中枢に参画し、グローバルに展開する事業を推進している。一貫してサラリーマンであることに誇りを持ち、会社人生を歩んでいる。個人ブログ「30代の人生戦略ノートと成長日記」は「週刊ダイヤモンド」に人気ブログ(2009年ビジネスの部)として紹介される。日本を元気にすることを目的とした団体「Design the Way」も主宰している。おもな著書に『初速思考』(日本実業出版社)、『仕事に才能はいらない』(かんき出版)、『サラリーマンこそ最強の職業である』(マイナビ)などがある。