若者は本当に政治離れしてるの？
衆議院選挙の過去の投票率の推移をみると、時代・投票率の高低に関わらず年代別の投票率の順番に変わりはない。つまり今若者の投票率の低さを嘆いている中高年も、かつては嘆かれていた立場だった。いつの時代でもさほど政治に興味はないのが若者なのかもしれない。他方、最近では政治に関心を持ち活動をする高い意識を持った学生を最近メディアで目にすることが多い。
話を聞いたのは「僕らの一歩が日本を変える。」のメンバーで、参院選前に行った「10代の擬似選挙」のプロジェクトリーダーを務めた、法政大学1年生の水野翔太さん。
「10代の擬似選挙」とは、10代の政治への関心の向上を目的に「僕らの一歩。」と「TeensOpinion」が選挙公示期間中に10代を対象に街頭で行った模擬選挙だ。渋谷、横浜、仙台、大阪、名古屋、福岡の6都市で行われ、なんと4500人近い人から票を集めている。
「話を聞いてくれた人は、一生懸命考えて投票してくれました。一見チャラチャラしたコの方の方が却って積極的でした。『この政党はナイナイ』なんて友だち同士で話し合ったりしながら楽しんでました」
水野さんが「僕らの一歩。」に入るきっかけになったのは高校生の時に同団体が開催する「高校生100人 vs 国会議員」というイベントに参加したことだった。国会議員会館で行われ、40名以上の議員、官僚が参加したこのイベントは、FacebookとTwitterでしか告知がされていなかったにも関わらず、250名超の応募があった。その中、全国25箇所から選抜された100名の高校生に水野さんも選ばれたのだった。
とはいえ水野さんは政治に関心の高い環境で育ったわけでもなかったという。契機は2010年に名古屋で開催されたCOP10（生物多様性条約第10回締約国会議）。地元開催の国際的大イベントに携わりたく、ボランティアとして参加した。そこで今まで知らなかった新しい世界に触れ、生物多様性や政治に関心をもった。そこから「高校生100人 vs 国会議員」につながり、さらに「僕らの一歩。」につながったという。
地元開催のお祭り騒ぎに乗っかって行きたい、という極めて健全な高校生的欲求がボランティアという形をとるのはオジサン世代からすると少し意外かもしれないが、そのことには何の違和感もないと水野さんはいう。
「ボランティアはそんなに珍しいことじゃないと思います。全員でゴミ拾いのボランティアをしている部活もあります」
阪神淡路大震災が発生しボランティア元年と呼ばれた1995年から18年以上の月日が経ち、東日本大震災という大災害を経て、若い層の中ではボランティア活動による社会参画は特別なものではなくなってきているようだ。それでは政治という話題も彼らの中でカジュアルなトピックになってきているのだろうか。そこまでは至っていないと水野さんは言う。
「政治について色々と考えることはあったのですが、学校では話せるような雰囲気じゃありませんでした。同じような思いを持ち、話ができる人に出会えないかなと思い『高校生100人 vs 国会議員』に応募したんです」
その後、参加したことを自身のFBで発表すると、クラスメイトからも「スゲーな」などと肯定的に声を掛けられた。普段はおくびにも出さなくとも、政治について考えている同世代がいるという感触を得たと水野さんはいう。
政治に関心をを持つ10代が確実におり、模擬選挙でも活発な意見が飛び交う。オジサン、オバさんはすぐに若者の政治への無関心を嘆きたがるが、若者は意欲に満ち溢れ、未来に問題はないということなのか。
「問題なく大丈夫だという思いはありません。せっかく政治について意見を持っていてもそれを発信する場がないので、誰にいえばいいのか、どこで話せばいいのかがわからない人が多いと思います。その結果徐々に『どうでもいいや』という風になり、政治から離れていくのだと思います」
SNSにより政治に関心を持つ若者が可視化されているのは事実だが、せっかく関心を持ってもその受け皿を大人がしっかり用意できたいないというのだ。
「特に小学校、中学校、高校での政治教育をもっとやって欲しいです」
そういう水野さんは将来、地元の役に立つために地方自治に携わりたいというしっかりとしたビジョンを持っている。
「自分たち若者だけでは日本は変えられないので、大人の方たちも一緒にがんばっていけたらいいなと思っています。よろしくお願いします」
そこの大人のアナタ、10代の青年にお願いされてますよ。
(鶴賀太郎)
