総合情報をどこから仕入れるか?

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■「うちも」トークは自社の優位性をわかっていない証拠

顧客に向けたプレゼンで、「その機能なら、うちの商品にもついていますよ」と言ってしまったことはないだろうか。「うちも」「当社でも」が口癖になっている営業担当者は、おそらく提案段階で相当な苦労をしているはずだ。「うちも」というフレーズは、自社の商品やサービスが競合と同格だということを暗に伝えることになる。営業の場面で、それは逆効果。他社と同じことを理由に選ぶ顧客はいないので、あとは価格で勝負するしかなくなってしまう。

顧客に伝えるべきは「うちも」ではなく「うちは」「当社は」という差別化ポイントだ。競合との違いを強調してこそ、顧客は価格ではなく提案内容に注目して、その価値を検討してくれる。

営業担当者が「うちも」トークになってしまうのは、自社の商品やサービスの差別化ポイントを把握していないからだろう。もちろん基本的な商品特徴や競合の存在は意識しているに違いない。

ただ、実際に競合に対してどこにどのような優位性があるのか、というところまでは整理できていない。また、顧客がいま付き合いのある競合がどこか、ほかに積極的にアプローチをかけてきている競合はどこか、競合はいまどのような提案をしているのか、といった情報も欠けている場合が多い。そのため胸を張って「うちは」と打ち出せないのだ。

では、差別化に必要な競合の情報は、どこから収集すればよいのか。もっとも確実な情報源は顧客である。法人営業は、そもそも顧客以外に情報を入手するルートが少ない。コンシューマー向けの場合は競合商品を自分で購入したり、インターネット上のレビューを参考にすることも可能だが、競合情報を豊富に持っているのは、やはり問屋や小売店などの直接の取引先である。BtoBでもBtoCでも、やはり頼りになるのは顧客からの競合情報だ。

とくに自社のロイヤルカスタマーである顧客からは、比較的容易に競合情報を入手できる。近年は個人情報保護法の影響で以前よりあけすけではなくなったが、「他からアプローチありましたか?」と素直に質問すれば、たいていのことは教えてくれるだろう。

自社のファンではない顧客の場合は、情報を積極的に開示する顧客と、まったく出さない顧客の両極端に分かれる。情報を出す顧客は、競合同士を競わせることが目的。たとえば「A社さんは、このオプションが無料なんだよね」と明かして、提案の見直しを迫ってくる。難しいのは秘密主義の顧客だが、結果が出た後に「A社さんのほうがオプションは魅力」と失注理由を教えてくれることもある。これは次回に役立つので聞き逃さないようにしたい。

大切なのは、それらの情報を集めて全体像を分析することだ。営業担当者個人にそれを任せるのはどうしても限界がある。マネジャーやマーケティング担当に情報を集約させて、競合との差別化ポイントを分析する仕組みをつくったほうがいいだろう。

(※本記事は『諦めない営業』(横田雅俊著、プレジデント社)からの抜粋です。)

(カーナープロダクト代表取締役 横田雅俊 構成=村上 敬)