■J1でどれだけやれるかの試金石

ユベントス、ジュビロ磐田と同様の3-1-4-2を採用し、開幕戦の対戦相手であるFC東京の選手からも警戒されていた大分トリニータ。しかし結果的には、フォーメーションや戦術を云々する以前に、選手層のちがいで東京に負けてしまった感がある。

だからといって「やはりJ2で6位だったチーム。強くないな」で片づけてしまっては進歩がない。
大分と東京は同じJクラブだから、極端に力量差があるわけではないが、相対的な力関係は「日本対世界」と同様。大分以外のファン、サポーターも、他人ごとのように語ってはいられないはずだ。

大分で結果を残した、大分のなかでも特に優秀な人材である森重真人と東慶悟、そしてランコポポヴィッチ監督がいる東京は、大分からすれば、セレッソ大阪から見たドルトムントやフランクフルト、Jクラブから見た日本代表欧州組のようなポジションになる。そして東京は昨季J1で10位とちょうど真ん中の成績だったから、大分から見て一枚上手のクラブが水準になっている。つまり、東京とどのくらい互角に戦えたか、その度合で、J1でどれだけやれるかを類推することができる。その意味で開幕戦は試金石だった。

■圧倒的に攻めたFC東京

個人的には大分が先制しての1-1引き分けを予想していた。大分が先制するだろうというのはたんなる予感である。そこから先は予測だ。今季の東京は昨季よりも結果にこだわる姿勢を示していて、選手にその意識が浸透している。最悪でも勝点1を持ちかえるという意識が働けば、しゃにむに点を獲りに行き、同点にしたあと、負けたくないという意識が働いて1-1で決着するのではないかと考えたのだ。

ところが東京は慎重にゲームを進めるどころか圧倒的に攻めることを選び、21本のシュートを撃って大分のゴールをこじ開けた。大分のホームだから2点どまりになったものの、味スタなら3点は入っていただろう内容だった。
その意味で、東京は期待値よりも高い結果、大分は期待値よりも低い結果を出したことになる。

この内容だと、東京は昨季の中位ではなく、上位グループに入るだろうと、力量の判定を上方修正しないといけない(なにしろ過去五年間、J1の優勝チームは開幕戦に勝ったチームのみだ)。つまり、開幕戦の位置づけ、見方は、上位チームに対して昇格したてのプロビンチアがどのくらい抵抗できるか、といったものに変えないといけなくなった。

だとすれば、1-2という最少失点差での敗戦は、決して悪い結果ではない。

■カウンターの内容、精度を高める必要がある

相手との力関係もあって大分の特徴はセットプレーとカウンターになる。そこはよくあらわれていた。昨年の昇格プレーオフでは対京都サンガF.C.戦で森島康仁をキッカーに起用するなど「奇策」が目立つ大分。トリック(サインプレー)も多く、東京にとって「想定内」(権田修一)だったが、それでも木村裕志のショートコーナーからチェ ジョンハンのコントロールした落ちるシュートに森島と若狭大志が走りこみ、ディフェンスとゴールキーパーが触ることができずに東京は失点した。

危険なカウンター攻撃も何度か仕掛けることができていた。ただ、そのカウンターに不満が残る。大分はできることなら、昨年のプレーオフ決勝のように、高い位置で奪ってからのショートカウンターやハーフカウンターでフィニッシュに持ちこみたいはずだった。しかし東京に押しこまれてしまったため、ロングカウンターが多くなり、距離と時間がかかるぶん最後の精度と勢いが足りずに得点に到らなかった。

今後は前めからカウンターを仕掛ける戦術を構築するか、あるいは自陣内の低い位置からでもエクトル・クーペル監督時代のバレンシアのように精度の高いカウンターを実現するか、対策を考える必要があるだろう。