建設中の物件が自然災害に遭った場合の補償は?



建設中の物件が、例えば台風などで倒壊してしまった場合、その後の工費などの補償はどうなるのでしょうか? 今回は、そういった建設途中の物件が自然災害に巻き込まれた場合の補償について、不動産業者の方に聞いてみました。





――建設途中の物件が台風や地震などの自然災害で倒壊してしまったりして、一から建て直しをしないといけなくなった場合、工費などの補償はあるのでしょうか?



建設途中の物件にトラブルが起きた場合ですが、まず火災は施工業者が加入(支払いは建築主側へ)している建設工事保険でカバーされます。しかし、地震や洪水などの自然災害の場合は、施工業者側には補償の義務がありません。というのも、ほとんどの建設工事保険は自然災害をカバーしていないのです。



――そうなんですね!? では建設中に地震や洪水で被害を受けた場合はどうすればいいのですか?



まず、建設する前の段階で、対応した保険に加入しておくことが必要です。地震の場合は地震保険、洪水の場合は水害を補償する火災保険へ加入しないとダメですね。また、どちらも「建設中の物件」に対応したタイプの保険でないといけません。火災保険や地震保険は完成後、施工業者から建築主側に引き渡されてから有効になるものもあるので注意が必要です。建築請負工事を締結する際に、施工業者がどのような保険に入っているかも確認しないといけませんね。



――そうした保険に入っていない場合は……



補修費用は全額建築主側負担となります。ただ、保険に入っていても満額補償されるわけではありません。洪水の場合は、全損でも火災保険で支払われる満額の70%が上限です。



――地震保険はどうなのですか?



地震保険は火災保険の契約のオプションという形の契約になります。単独での契約はできません。また地震保険の保険金額は、主契約である火災保険の金額の30〜50%の範囲内での契約になります。



――ということは、火災保険の保険金額が2,000万円だと、地震で被害を受けた際の補償金は最大で1,000万円までしか契約できないということですよね?



そうなります。



――地震の際の支払い金額というのは、どんな割合なのですか?



地震で全損した場合は保険金額の100%の支払いになります。先ほど言われました、1,000万円の地震保険をかけていた場合は1,000万円が支払われる形ですね。また、『地震火災費用保険金』という保険も存在しますが、こちらは最大で300万円の補償になります。自然災害に少しでも対応するには、これらの保険に加入しておくしか方法はありませんね。



――なるほど。これらの火災保険や地震保険は、どこまでカバーできるものなのですか?



住宅用の保険は保険会社によって種類や名称は異なりますが、基本的には



・住宅総合保険……火災や落雷、風災や雪災など、住宅の総合的な被害を補償するもの。



・火災保険……火災・雪・風などの被害を補償。一番ポピュラーな「住宅火災保険」と呼ばれるもの。水害を補償してくれるタイプもある。



・地震保険……地震による火災や倒壊、また津波による被害を補償する保険。ほかに噴火による被害も補償。火災保険に加入しないと入れない。



といった保険で、火事や水害、地震のトラブルはカバーできます。ただし、どの保険も加入しているからといって、必ず満額補償されるわけではないので、注意は必要です。





建設中でも完成後でも、自然災害に対する補償というのはなかなか難しいようです。地震保険も補償額のパーセンテージを考えると、入っておくべきか入らないほうがいいのかは悩ましいところですね。



(貫井康徳@dcp)