担当M(以下M):今年のJリーグも新指揮官を迎えているチームが多数あります。J1では鹿島だけですが、J2では札幌、草津、千葉、東京V、G大阪、鳥取、愛媛、北九州、福岡、長崎、熊本と11クラブで監督が交代しました。

ラモス(以下R):J1で去年、浦和、大宮、FC東京、川崎、湘南、甲府、新潟、磐田、C大阪、神戸、広島の11クラブが、J2では山形、千葉、東京V、横浜FC、松本山雅、岐阜、鳥取、神戸、徳島、福岡の10クラブが、新人監督を迎えたか途中で監督交代をしました。40クラブのうち、33クラブが去年から今年にかけて新しい監督になっています。

M:これだけ代わったら、誰がどんなサッカーをしようとしているか覚えるのも大変ですね。それにシーズンが進むまで、チーム力がどうなっていくか見えてきません。

R:そのとおり。これまで何度も言ってきたけれど、3年間任せてみないと本当の監督の力量は見えませんよ。簡単にチーム作りができるのなら、みんな優勝争いに絡めますって。

M:監督という職業は、いかに不安定な立場なのかよくわかりますね。

R:1年目や2年目の途中までは、なかなか監督の仕事の成果は出にくいものですよ。

M:それでも、今年のチームがどの程度活躍するか探ろうと思ったら、どこに注目して観察しますか?

R:僕はコーチですね。はたして監督のことをよくわかっているコーチなのか。監督が連れて行ったコーチだったらベストですよ。自分のことをわかって、自分にないところを補ってくれる人と一緒に仕事をしているでしょうから。だけど、もし自分のことを、性格なんかも含めてよく知らない相手だったら、どこまで相談していいか分からない。だから、それまでにあまりつながりのない人がコーチに就任していたりすると、僕は監督の力をすべて出すのは難しいと思います。

M:ラモスさんが東京Vの監督だったときは柱谷哲二さんがコーチでした。

R:僕は新人監督だったから、いろんなミスをしたと思います。たとえば試合中は、相手のフォーメーションやマッチアップ、試合の流れなんかをずっと考えながら見ていたから、選手の疲れなんかがわからないときもありました。そんなときに、哲っちゃんが「あの選手の動きが落ちてます」と言ってくれることがあって、それで交代策を考えられたりしたんです。本当に頼もしいコーチでした。

M:今年で言えば、一番典型的な例は昇格した大分の田坂和昭監督ですね。清水でコーチとして長谷川健太監督を支え続けたのち、大分に行って監督としての能力が高いことも証明しました。

R:そういう例もありますから、どんなコーチがいるのかを調べると、そのチームのことがよくわかると思います。監督だけじゃなくてスタッフもチーム力を高める重要なキーなんですよ。