まどか☆マギカのスピンオフ作品の主役は、死ななかったマミさん! 『魔法少女まどか☆マギカ〜The different story〜』(芳文社)は、BD特典CDを元に新たに作りなおした、原作とは全く違うルートのまどか☆マギカの物語。マミさんの視点で描かれるもう一つの、魔法少女達の話。キュゥべえは相変わらずなので安心です。

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『魔法少女まどか☆マギカ』の劇場版が現在公開中です。
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やっぱ面白い。面白いんですよ。くそー1年経ってるのに、全く飽きない。
映画版は凝った作りで、今までのまどか☆マギカの総集編にも関わらず、全く新しく見せてくれる作品でした。
でもやはり、「新しいまどか☆マギカが見たい!」というファンは多いでしょう。
新しい映画まで待てない!

そんな人のためにオススメなのが、マンガ『魔法少女まどか☆マギカ〜The different story〜』。
どんな話かを簡単にまとめるとですね……なんと……マミさんが主役だ! 
ヤッター!!!
(マミさんとは:巴マミ。ヒロインの鹿目まどか達の一年先輩で、魔法少女としても先輩。クルクルに巻いた金髪の髪と大きなおっぱいが特徴。優しくてお上品な少女で、得意魔法はリボンの緊縛。魔法武器としてマスケット銃を操る。アニメ3話で、お菓子の魔女に頭をバリバリ食べられて死亡。この様子は通称「マミられる」といわれる。マミさんには、さんをつけろよデコ助野郎!)
つまり、マミさんが生きている世界の話です。
ヤッタネマミチャン!!!
まあ、とはいっても『魔法少女まどか☆マギカ』の世界で、キュゥべえが当然いる世界です。
それなりの覚悟の上で。

物語は、アニメ第一話より遥か前の段階から始まります。
マミさんもまだ新人。もう一人の主人公、佐倉杏子も契約したばかりの時期の話です。
(佐倉杏子とは:赤髪ポニーテールが目立つ、魔法武器の槍を駆使して戦う超攻撃型魔法少女。初期魔法では幻惑が使えたが、今はとある理由で使えなくなっているため、肉弾戦特化。アニメでは常にお菓子を食べていたが……?)
ブルーレイ5巻の特典ドラマCD『フェアウェル・ストーリー』を軸にした物語が展開されます。

まさにマミさんが孤独だった時期です。一人ぼっちで見滝原を守っていました。
となりの風見野で戦っていた杏子が、取り逃がした魔女を追ってやってきたところで二人は出会います。
マミさんはねえ、いい子なんですよ。いい子すぎるんですよ。
普通は損得を考えて、グリーフシードを落とすから魔女を倒すんです、魔法少女は。キュゥべえがそう言っていたから間違いない。
しかしマミさんはみんなを守るために戦わなきゃ、と命がけで立ち向かい続けていました。損得は考えません。
そんなマミに命を救われて、杏子は「マミ先輩!」と呼んで慕うようになりました。
ここで、なんとマミ・杏子コンビが結成されるのです。
まどか☆マギカ本編では、複数人がチームを組んで実際に戦うのは一周目のマミさん・まどかくらいなので、非常に珍しい。
(一周目の意味がわからない人は、本編10話を見よう!)

この頃、杏子は家族と温かく暮らしていました。
杏子の祈りによって家族は救われ、杏子は影で魔法少女として戦う。誰かを守るために。
とても幸せな日々でした。
そこに巴マミという、人のために尽くす少女と出会ったことで、杏子は言います。
「マミさんはどこをとっても、あたしの理想なんだ」
マミさんは困惑しますが、こう言います。
「ずっと前から私も、魔法少女の友達がいてくれたらなって、実は思ってたの」
マミさんと、杏子の、魔法少女コンビ結成。二人は、ともに戦います。
マミさんの家で杏子はお茶を飲んで。
杏子の家庭で、マミさんはご飯を食べて。
本当に、本当に幸せな光景でした。

幸せは、崩れるんだ。
上巻では、とある事件をきっかけにして、杏子がその優しさ故に、マミさんと別れるシーンまでが描かれます。
二人の孤独な少女が生まれた瞬間です。
 
中巻からがこの作品の本編とも言える「もう一つの物語」のスタートです。
上巻は「TV版の前の話」なのですが、中巻は完全に別物語。パラレルワールド。
お菓子の魔女シャルロッテにマミられる前に、美樹さやかが契約したことで、マミられなかった世界を描きます。
(美樹さやかとは:ショートカットがよく似合う、魔法少女なりたての元気な女の子。かわいい。攻撃武器は剣で、大量に出して投げることも、手に持って戦うこともできる。誰よりも早い回復能力を持っている。かわいい)
正義感が人一倍強く、マミさんに憧れているさやかは、マミさんとコンビを組んで戦うようになります。
マミさんの望みは、友だちがほしい。誰かと一緒に戦いたい。
誰かと一緒に、この街を守りたい。

どこまでもピュアなんですよ。あかんでしょってくらいに。
この作品のマミさんは、本当に寂しがり屋で、優しい。
人の技にも名前つけようと張り切っちゃったりするくらいにね。ロッソファンタズマ!(杏子用につけた技名)
だからこそ、誰かを傷つけたくないという杏子は自ら離れ、人を裏切った自分を恨んださやかも離れていきます。
ごめんね、マミさん。
みんな、みんなマミさんが好きなんです。
好きだから別れた。
マミさんはそれが悲しくて、辛くて泣くんだよ。

アニメとは別角度。アニメ三話で「やっぱり私、駄目な子だ」と言ったマミさんの感情が柱となって、杏子、さやか、ほむら、まどかの思いが入り乱れます。
何かを救いたいとか、何かを守りたいとか以上に、とてつもなく中学生らしいマミさんの一面が描かれるこの作品、本編では見られなかった、けれどもこの子たちならそうするのだろうなという姿がたんまりと見られます。
杏子の優しい苦しみ。さやかの葛藤と自虐。マミの孤独。
特に中巻の展開は原作アニメと驚くほど異なっています。
恭介にまどかが「上条くんの腕を治したの、さやかちゃんなんだよ」と言うシーンなど、えっ、という展開もあり。
ほむらも出番は少ないものの、原作では見せない絡みなどがあって、見事な立ち回りをしています。
スピンオフとして、もう一つのループとして、まどか☆マギカの世界をマミの目から見られる描きおろし作品なんです。

杏子が上巻では一切お菓子を食べていないのに、中巻では食べ続けていたりと、細かいところも面白い。
キャラの性格は基本変わっていません。物語は全く違います。
断言できるのはキュゥべえは全然かわってないよということです。
さすがキュゥべえ。そこにしびれないあこがれない。
とてもユニークな視点のスピンオフ作品。映画前後編を見た勢いで、買って読んじゃえ。
アニメ版も劇場版も見てない人は、ハノカゲ版コミカライズを読んでからがベストだと思います。
下巻は来月発売ですよ。


原案:Magica Quartet、漫画:ハノカゲ
『魔法少女まどか☆マギカ〜The different story〜』(上)
『魔法少女まどか☆マギカ〜The different story〜』(中)
『魔法少女まどか☆マギカ〜The different story〜』(下)


(たまごまご)