『家呑み道場』(給食系男子/ディスカヴァー・トゥエンティワン)
急いで家に帰りたくなる“テッパン酒の肴&おかず"125点。 (ほぼ)2ステップでできる早・安・旨レシピ集

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この夏、20代男女を対象に実施された調査によれば、54%(男性に至っては64%)が週1回以上「家呑み」をしているという(ライフメディア リサーチバンク調べ)。
また、日本政策投資銀行がまとめた酒類業界のデータ分析によると、この10年間で年々減少する「外呑み」消費量に対し、「家呑み」消費量は増加傾向。2010年度には遂に「家呑み」消費量(3,938百万リットル)が「外呑み」消費量(3,779百万リットル)を逆転した。

世は戦国の「家呑み」時代。
若者の酒離れ、なんてことを伝えた週刊誌もあったけど、家で一人で、または家族と一緒に呑んでいる人が増えているだけなのだ。

家呑みって自分のペースで呑めるし、経済的にも助かるんだけど、やっぱり困るのは「酒のつまみ」。毎日乾き物じゃ飽きるし、食事の余り物だとなんかわびしい。かといって、冷蔵庫の残り物でできるレシピは何かないかなぁ、なんてレシピサイトを調べてみて、調理工程数が5つも7つもあるとそれだけでゲンナリしてしまう。家から帰って、すぐにビールが呑みたいんだよ、美味しいおつまみとともに。

そんな状況にピッタリのレシピ本が登場した。その名も『家呑み道場』。《「帰って、即!」のかんたんおつまみ》の副題の通り、ほとんどのレシピの調理工程がなんと【2ステップ】でまとめられている。

本書は、「自炊で食費が40万円浮く!」というふれこみでレシピ本としては異例の大ヒット(7刷&約8万部)を果たした『家メシ道場〜1食100円でかんたんごはん』の第2弾。
以前レビューでも紹介したのだが、『家メシ道場』もわずか【3ステップ】で毎日のおかずが調理できてしまう手軽さが売りであり、驚きだった。でも、今回はさらにその上を行く【2ステップ】でできるという謳い文句に、「無理すんな!」って思わず言いたくなったほど。

でも、実際に作ってみるとどれも本当に簡単に調理できるものばかりで、しかも美味しい!
「ブリの照り焼き」や「湯豆腐」といった定番メニューはもちろん、酢豚ならぬ「酢鶏」や「告白オムレツ」「炒めない焼うどん」といった独創的でユニークなレシピ、市販のアジフライやコロッケを使い回すレシピなどなど、今作も充実度満載。また「呑み」というテーマ設定はなされているものの、ほとんどのメニューは普段の食事の「おかず」にもなる逸品ばかり。家族にふるまってあげるのもオススメです。

簡単で美味しい、という以上にこのレシピ本が優れているのが「検索性」。
第一章が《1人でササッと》、第二章が《2人で気軽に》、第三章が《3人以上でワイワイ》、第四章が《市販のお総菜&定番食材の使い回し》と、人数やシチュエーション毎にメニュー選びができる。
そして巻末の索引コーナーをめくれば、「ビールに合う」「ワインに合う」「焼酎に合う」「日本酒に合う」という《お酒の種類別レシピ索引》、「混ぜる・あえる」「炒める」「焼く」「ゆでる」「放置する」(←なんだコレ!?)といった《調理法別レシピ索引》、そしてもちろん《材料別レシピ索引》と、その時の胃袋具合や冷蔵庫の中身、お酒との組み合わせでメニューが選べてしまう。さらに、巻中にある「大人の家呑み検定」をやれば、《診断タイプ別》というマインドにあわせたメニュー検索までできるという無駄な充実度。
材料別や目的別にメニューを探せるレシピサイトは数あれど、ここまでレイヤーの多いレシピ集って珍しいだろう。
地味な部分だけど、忙しいときに、メニュー選びに迷ったときに、急なおもてなしに、これって本当に助かる!

また、無理に【2ステップ】に縛られることもなく、第五章《3ステップで〆の一品》ではちょっと豪華でガッツリ系のメニューもおさえてくれているのが胃袋的にもとても嬉しい。

レシピをまとめたのは、会社員・マンガ家・編集者・プランナーなどの調理道楽が業種の垣根を越えて集結した男性料理人ユニット「給食系男子」。イベントでの実演やテレビ出演、最近では「小説 野性時代」で連載までも抱えてしまったモテモテ「おっさん」集団だ。でも、本職料理人じゃない素人集団が「趣味」で本気を出しているからこそ、使う人が本当に求めている検索性や工程の効率化に気づけたんじゃないだろうか。
おまけに、おっさんばかりだったハズのメンバーが、若い人も交えて11人から14人に増えていた。つまり、熱量もその分増えているってことだ。

減ったのは工程数だけ! レシピ数も、メンバーも、カラーページも大幅に増えた「給食系男子」レシピ第2弾『家呑み道場』。
家呑みがますます進んじゃうよ、コレ。こっちの体重まで増えそうです。
(オグマナオト)