【編集部的映画批評】止まらない最後の『踊る大捜査線』の人気、その秘密は“シンプル”さ
2周連続で観客動員数ランキング1位で、早くも動員200万人、興収25億円を突破した『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』。人気シリーズの最終作とあって、その勢いは止まるところを知らない。前作『踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!』は、73億円の興収だったが、『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』の173億円と比べると半分以下と振るわなかった。今作の人気の秘密はどこにあるのだろうか。
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『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』
青島らが属する湾岸署の管轄内で開催されている、国際環境エネルギーサミットの会場で誘拐事件が発生。警察は捜査にあたるが数時間後に被害者は遺体で発見される。その事件が解決されぬまま、第二の殺人事件が発生。さらに新たな誘拐事件までもが発生し――。(作品情報へ)15年という年月はあまりにも長い
「踊る大捜査線」のTVシリーズが始まったのは1997年1月。その後、映画や舞台、書籍、ゲームなど様々なジャンルに展開。映画だけでも、海外版も合わせれば7作品もつくられた。誕生してから15年という歳月は途方もなく長い。当時、高校生だった人がおっさんになっている。これだけ長い期間を続けていると、刷り込み現象がおこる。『ロッキー』や『スター・ウォーズ』のように、テーマ曲の「Rhythm And Police」を聴くだけでもテンションが上がるというものだ。今回のオープニングは、音楽をバックに今までの出来事がフラッシュバックされて映し出される。その映像を観ただけでも15年の思い出がよみがえり、なんだか泣けてくる。私も、社会人なりたてのテレビマン時代、よくこの音楽を「何かを調査する時の定番BGM」として使わせてもらったものだ。単純明快なところが良い
そんな思い出が詰まったシリーズの最終話。最初のシーンは、下町のからあげ屋から始まるのだが、これを観た時は「え〜、色ものっぽいな」と、正直なところ残念に思った。だが、ここから先も確かに“ネタ”的なものはたくさんあったが、あくまでそれはサブ要素であり、芯は通っていた。元々のこの「踊る〜」シリーズは、所轄と本庁の刑事との確執や警察機構の矛盾・問題に視点を当てた作品である。「現場」を織田裕二演じる青島が、「キャリア官僚」を柳葉敏郎演じる室井が、それぞれの立場で「正しいことって何?」ということに苦悩しながら、組織が変化していく未来を夢みる。そんな一番大事な部分が今回の作品は色濃く出ていた。また、『踊る3』の時のような、話の視点があちこちに飛ぶことなく、「少女誘拐殺人事件」を中心に単純明快、わかりやすくまとまっている。だから“芯”をしっかり観ることができて、“ネタ”をスパイスのような良いアクセントとして感じることができたのではないだろうか(犯人とのラストの戦いはちょっと行き過ぎ感はあるが…)。すっきりしていて終わる気がしない
ただ、今回、あまりにもきれいにまとまっていたので、「FINAL」のような気がしなかった。リアルな中での出来事を扱った作品の最終回は難しい。ファンタジー作品の『ハリーポッター』の場合、「一番の悪の親玉のヴォルデモートを倒す」とクライマックスがわかりやすい。しかし、「踊る〜」の場合、「警察組織の最適化」が最大の目標。だが、それを達することはできない。それができてしまうと、一気にリアルさがなくなる。なぜなら、現実世界でそれが達成していないからだ。そうかと言って、今までの登場人物をいろいろ出演させてお祭り騒ぎのようにクライマックスを持っていくと『踊る3』のようにまとまりがなくなってしまう。リアルを題材にした作品の終わりは非常に難しいものだ。一事件に焦点を当ててまとめた本作は、シンプルですっきりしているだけに、まだまだ続くようだ。だが、これが最後。これから先の湾岸署は、皆さんの心の中にある。踊る大捜査線 THE MOVIE [DVD]posted with amazlet at 12.09.20フジテレビ (2003-06-18)
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