交流戦が間もなく始まる。8年前、球界再編騒動の奇貨のようにして生まれた制度だが、この8年で、NPBはかなり変化したように思う。過去7年で、パリーグは6勝1敗と勝ち越した。

kouryuu20120514



僅差の時もあったが、ここ2年はパリーグの圧勝。

とかく日陰の存在とみなされることが多かったパリーグが、実力的に優位であることを示したことで、いろいろなことが変化した。

まず、セパの野球の違いがはっきりしたことも大きかったように思う。

指名打者制のあるパリーグでは、先発投手が長い回を投げることが多い。また即戦力の大学、社会人野球の有望投手がセリーグに流れる中で、松坂大輔からダルビッシュに至るまで、高卒の有望投手を獲得し、エースに育て上げる道筋ができた。

こうした傾向が続いたことで、パリーグは投手と打者が真っ向から勝負をする試合が多くなっていった。

これに対し、指名打者のないセリーグは細切れの投手起用が多かった。また、個々の能力と言うよりはチーム全体で戦う伝統的な戦法が今日に至るまで続いてきたように思う。

セパの対戦で、パが優勢に戦っているという現実は、パがセよりも半歩新しい野球に踏み込んだことを意味しているようにも思う。

また、パリーグの選手にあったセリーグへのコンプレックスが多少とも改善されたのではないか。

交流戦が始まってから、働き盛りの選手の、セからパへのFA移籍が見られるようになった。これまでも2004年の稲葉篤紀（ヤクルト→日ハム）のような例は散見されたが、訳ありだったり、力が衰えての実質的な無償譲渡だったりした。
2007年の石井一久（ヤクルト→西武）、2010年の内川聖一（横浜→ソフトバンク）などは、交流戦によってセパのイメージ的な格差が縮まったことが一因ではなかっただろうか。

地上波での野球放送は激減したが、折から、BS、CSなどによる多チャンネル化が進み、パリーグの試合が日常的に放映されるようになったことも相まって、パリーグの選手も全国的に広く知られるようになった。

さらに言えば、セパの選手がチームを越えた連帯感、仲間意識を持つようになったのではないか。2004年の球界再編では古田敦也選手会長以下、セパ両リーグの選手が結束して経営者に対峙した。このときに選手間の団結心は高まったと思うが、交流戦を通じて日常的にリーグを超えた選手たちが顔を合わすことで、仲間意識はさらに醸成されたと思う。昨年の3.11後の選手会の素晴らしい対応と無縁ではないと思う。

相対的に球界の盟主、巨人の地位、影響力は低下したと思われる。今年も大型補強をしており、相変わらずパワーはあるが、それでも昔のように巨人の意向に11球団がなびくということはなくなりつつあると思う。観客動員数も阪神に次いで2位となり、野球チームとして見たときは、普通のチームになりつつある。良いことだと思う。

仮に2004年、渡邉恒雄氏がもくろんだように、NPBが10球団の1リーグになっていたとしても、私は昔日の「巨人王朝」を再現することは難しかったと思う。巨人というチーム自身が持っている戦略、戦術的な旧幣さと、昔とは比較にならない他球団の意識レベルの高さがあるからだ。また、巨人が勝つことで球界が潤うという図式は、テレビ放映の環境が激変していることを考えればすでに終わっている。

パリーグの比重が相対的に高まったこと、そして「交流戦を制するものがペナントを制する」と言われるように、交流戦が始まったことで、ペナントレースがより複雑になり、面白くなったことも収穫だろう。

しかしながら、交流戦は8年目を迎え、かつてのような鮮度が失われている気がする。セとパの球団が戦うことは、すでに珍しいものではなくなった。観客動員は伸び悩み気味である。何らかのてこ入れが必要なのかもしれない。

たとえば、「NPB杯」を設定してセパの勝数争いを表彰するとか、両リーグで本塁打数、奪三振数、盗塁数なども競うとか、いろいろな企画が可能ではないか。

セリーグの一部の球団からは、観客減などを理由に縮小、廃止の声も出ているようだが、そういう後ろ向きの、守りの視点からものごとが発展することはない。

交流戦はファン、選手の視野を広げたと思う。野球の本質を見失わない、という前提はあるが、より面白い内容にしてほしいと思う。