24日、橋下徹大阪市長は、「大阪維新の会」の次期衆院選マニフェストともいえる「維新八策」に、憲法9条改正の是非を国民投票で決定する方針を盛り込むことを示唆した。

 来月10日をメドにまとめられるこの「維新八策」。「日本をグレートリセット」すると橋下徹大阪市長がぶち上げ、道州制の導入、首相公選制、参議院廃止などを骨子としている。なかには、憲法改正なくしては実現しない項目も含まれており、施行されればまさに日本に「維新」を起こす可能性のある政策ともいえる。

 不可侵ともいえる憲法9条に踏み込んだ橋下市長、この「維新八策」はどういった意味を持つのか。政治評論家の浅川博忠氏はこう見る。

「メディアは維新の会の公約と大騒ぎしているけど、『維新八策』が正式な文書として配布された様子はありません。維新の会のHPにも一切掲載されていない。これはやはり正式な公約というより、橋下さんの政治的価値観、方向性をリストアップしたものにすぎないと受け止めるべきでしょう」

 そもそも橋下市長の理念は、自立と競争を原理とする社会作り。一方で効率の悪いもの、無駄なものを政治の世界から徹底的に省く考えだ。「維新八策」のひとつ、国民が直接、首相を投票で決める首相公選制もそのひとつといえるだろう。首相公選制の実現を唱える、みんなの党の桜内文城(ふみき)参議院議員が、そのメリットを解説する。

「国のリーダーを国民ひとりひとりが決めるというのは、本来、民主主義社会では当たり前のことなんです。現在の議院内閣制は極めてわかりにくいものになっている。よい例が今の野田首相です。選挙で信任を受けることもなしに、いつの間にか総理大臣に収まりマニフェストにない消費税増税をやろうとしている。国民からすれば、頼んだわけでもないのになぜ?という疑問は拭えないでしょう。その点、公選制なら首相の執行権限、責任、任期が明確になり、行政の執行もスピーディになります」

 確かにこの6年余りで日本の首相は6人も代わっている。その間、国会は政局に翻弄され、政治は停滞を強(し)いられてきた。首相公選制なら、こうした弊害も回避することができる。

 だが一方で問題点もある。人々の熱狂をあおり、支持を集める政治家が登場しかねない危険性だ。首相公選がただの「人気投票」になってしまう可能性も否定できない。

「見栄えがよく、マスコミ受けするだけの政治家が、実力もないのに首相に選ばれてしまう危険性があります。また、その首相が小さな政党の所属だった場合、少数与党となり、かえって国会運営が難しくなるケースも予想されます」(前出・浅川氏)

 桜内議員が付け加える。

「逆に、公選で選ばれた首相のパワーが強大になりすぎることだってあり得ます。だから、首相は企業のCEOのように執行業務だけに専念し、立法権と予算編成権は国会に専属させるような改革も同時に進めるべきです」

 民主党によって「ないがしろにされるもの」という印象が植えつけられてしまったマニフェスト。橋下維新の会に期待する声は大きい。

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