今を象徴する演出「ベールダウン」。

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以前、「自分の妻や夫をどう呼んでいるのか」や「結婚式の演出費用」についての記事をお送りしたことがある。
実は上記の2つの記事の根拠となるデータを集計してくれたのは、株式会社リクルートの「ブライダル総研」であった。
そして今回は、同社が発行する『ゼクシィ』が主催となって10月19日にある記者発表会が行われている。昨年の4月から今年の3月31日までに結婚したカップルの結婚スタイル(首都圏)の詳細をまとめた「結婚トレンド調査2011」の発表会が開催されたのだ。ここで披露された内容がまたしても興味深かったので、皆さんにもお伝えさせていただきたいと思います!

まず、パッと目につくのは挙式・披露宴にかける総額が増加傾向になっているということ。2011年の平均額は356.7万円で、昨年(336.5万円)より20.2万円も増加している。ここ5年で見てみると、2006年(312.2万円)より約45万円も増加していることになる。
じゃあ、具体的に何にかける費用が増加しているのか? データを見ると、5年前と比較して招待客人数が増えているわけではない。そこで気になるのが「招待客1人あたりの費用」ではないだろうか。こちらに関しては今年の平均額が5.9万円で、2006年(5.0万円)に比べると増加傾向にあることがわかる。
では、1人あたりの費用の一番多くをかけているのは? それは、何と言っても「料理と飲み物」でしょう! この部分の式全体における平均額が、ここ5年で10万円増加しているという集計が実際に取れている。近年、ずっと顕著な「感謝の気持ち」や「おもてなし志向」が一番表しやすいポイントは、まさに「料理と飲み物」なのだ。

では、なぜこんなにもゲストにお金をかけるようになったのだろう? それは、このデータを見るとわかりやすいかもしれない。
「披露宴・披露パーティを挙げた理由」(複数回答)というアンケートが行われ、それに対しての回答のトップ3を占めるのは「親・親族に感謝の気持ちを伝えるため」(72.8%)、「親・親族に喜んでもらうため」(61.1%)、「友人など親・親族以外の方に感謝の気持ちを伝えるため」(57.6%)なのだ。これらは、どれも“他人軸”と表現すべき回答ではないだろうか? 逆に“自分軸”ともいうべき「以前からあこがれていた」(47.8%)、「親・親族に勧められたから」(7.5%)、「けじめなので」(30.8%)といった回答は、明らか“他人軸”に圧倒されている。

では、結婚式の中で目に見えた変化はあったのだろうか? ……あった。“他人軸”に傾いている現代の結婚事情は、演出面にも形となって表れている。
皆さん、「ベールダウン」という演出を御存知でしょうか? 挙式の入場の際、新婦はお父さんと入場するのが王道。そしてその時、お母さんはまったく表に出てこなかった。
しかしベールダウンを行う場合は、最初にお母さんが登場する。何のために? それは、新婦のベールを下げるため。新婦のベールはキスの際に新郎が上げるため、それを下げたまま入場するのがかつての主流だった。しかし、この演出ではお母さんがベールを下げる。その役割を果たすために、最初に現れるのだ。

この演出、現場で見ていると実に感動するらしい。色んな思い出が甦っているお母さんの思いと、ベールを下げてもらっている新婦の思いが会場中に伝わるとのこと。これが、“ゲスト満足度”を非常に高くさせているのだ。
このベールダウン、今年の「挙式に関して実施した演出」の第3位に入っているという大躍進ぶりだそうだ。何しろ、2011年の調査では実施したカップルの割合は41.4%! 昨年の25.8%と比較して、大幅にアップしている。
「新郎新婦が華やかに見える演出よりも、“きずな”を強調する演出が定着している気がします」(『ゼクシィ』編集長・伊藤綾氏)

この“きずな婚”の傾向は、結婚式の10年スパンの変遷を見ていくとわかりやすい。
80年代は、いわば“派手婚”の10年間だった。背が高いイミテーションケーキ、金屏風などは当たり前。新郎新婦にスポットが当たるのがスタンダードな時代である。
そして、バブル崩壊後の90年代は“地味婚”の時代。「物よりも本質である」という考え方で、お食事会だけだったり、それどころか入籍だけで済ませるカップルも多い10年間。この時期も、主役はあくまで新郎新婦だ。
次の2000年代は、大きな転機が訪れた。「アットホーム」という言葉である。邸宅式の式場(ゲストハウス)が増えたのもこの時期で、ゲストハウスで行う“アットホームでナチュラルなスタイルの結婚式”が、みんなの心をとらえた。そして画期的だったのが、この時代から主役が“2人”から“みんな”に移っているということ。ゲストと新郎新婦の両者が主役になって挙げる披露宴が主流になったのだ。

そして、2010年代。今、ブライダルマーケットのメインターゲットは80年代生まれの30歳前後になっているという。彼ら彼女らは、“アットホーム”だけでは満足してくれない。そこで顕著になったのが、今話題の“きずな婚”である。単にアットホームなだけではなく、そこに気持ちや思いやりが入ったようなものが、現代の風潮。しかも、主役は“みんな”のままだ。これぞ、2011年の結婚トレンド。

こころなしか、年々成熟している気がする結婚スタイルの流行。私もいつかは、忘れられない結婚式を挙げてみたいです!
(寺西ジャジューカ)