映画『RIVER』ビジュアル(C)2011 ギャンビット

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 2008年6月に秋葉原で起きた通り魔事件をモチーフにした映画『RIVER』が2012年3月より全国公開されることが明らかになった。メガホンを取るのは、映画『軽蔑』『余命1ヶ月の花嫁』などの廣木隆一監督。福島県出身の廣木監督が東日本大震災後、真摯(しんし)に「映画を撮ること」と向き合い、脚本を変更して被災地での撮影も加えることにしたという作品だ。

 2008年6月に起きた秋葉原通り魔事件は、「秋葉原無差別殺傷事件」として報じられることもある通り魔事件。同事件の影響により、今年1月まで秋葉原の歩行者天国は中止されたことは記憶に新しい。

 本作は、同事件で恋人を失ったヒロインが恋人との思い出がある秋葉原を訪れることで再び前を向いて歩き出すまでを描いた作品となっており、もともとは廣木監督のライフワークである“歩く”プライベート的な映画として企画が進行した。だが、今年3月に東日本大震災が起きたことにより、福島県出身の廣木監督は脚本を変更。「映画などやっている場合ではないのではないか」と葛藤(かっとう)しつつも、今の日本を描くため、被災地での撮影も加えて、完成にこぎ着けた。秋葉原を流れる神田川に映る月の情景からの連想で、主題歌はオードリー・ヘプバーン主演の映画『ティファニーで朝食を』の「Moon River」に決定。これは廣木監督が直感で決めたのだという。

 主演を務めるのは、大林宣彦監督による2007年公開の映画『転校生 −さよなら あなた−』で映画初主演を果たした蓮佛美沙子。今年は新垣結衣主演のテレビドラマ「全開ガール」や12月公開の映画『源氏物語 千年の謎』にも出演している女優で、来年には再び大林監督とタッグを組んだ映画『この空の花』の公開も控えている弱冠二十歳の注目株だ。本作では恋人を失ったことにより引きこもりがちになったヒロイン・ひかりの、閉じた心が再び開くまでの過程をみずみずしい魅力で見事に演じきっている。

 秋葉原を歩くひかりと出会う女性カメラマンや若者、メイド喫茶のスカウトマンなど、さまざまな事情を抱えた人々との出会いを通して、現在の日本を描いた本作。出演陣にも柄本時生、田口トモロヲ、中村麻美などがそろっており、秋葉原通り魔事件や震災など、ただのショッキングな事件を題材にしただけではない、奥行きのある作品に仕上がっている。来年の全国公開に先駆け、今年11月に開催される第12回東京フィルメックスにてプレミア上映を迎える予定だ。(編集部・福田麗)

映画『RIVER』は2012年3月、ユーロスペースほか全国順次公開

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