「数字集計担当者」なら、マネジャー失格である
あなたは職場で、単なる「数字集計担当者」になっていませんか? 部下の顔を見れば「今週の売り上げは、ちゃんと上がるの?」「あの案件は、いつ上がるの?」しか言わず、有効なアドバイスをするわけでもない人は、集計以外の意味をなしません。
下からの報告にハンコを押して本社に回したり、実績の上がったメンバーに高い評点を与えるだけでは、真のマネジャーとは言えません。各メンバーと「育成目標」をすり合わせ、それをメンバーが了承し実行するプロセスを踏むようにしましょう。
後輩を任されて失敗した苦い思い出
職場で後輩たちの面倒を任されたり、マネジャーの役割を担ったりするようになると、「メンバーたちから認められる存在になろう」と気合いが入るものです。
しかし、実際に任されてみると、日々の活動報告を受けたり、実績数値をチェックすることに追われたりして、他の仕事が何もできない状態に陥る人は少なくありません。
実は私も、入社2年目で10人近い後輩の面倒を任されて「てんぱった状態」になったことがありました。それまではトップセールスで、自分の仕事さえしていればよかったのですが、毎日毎日、
「先輩、次は何をすればいいのですか?」
と尋ねられ、指導するという慣れない“筋肉”を使い、すっかり疲労してしまいました。自分の仕事をこなしてから、夜になって後輩への指導をするのですが、アドバイスの内容がだんだん単調になってきます。
「今日は何件訪問したの? いくら売れたの?」
「それじゃ足りないな。明日は頑張れ」
などと数字の確認を繰り返していたら、後輩たちから「あの人は自分の営業はできても、それ以上の器ではない。だって、頼りにならないもの」とリーダー失格の烙印を押されてしまいました。
セールスの仕事の延長でしか、マネジメントを考えていなかったために生じた問題でした。自分は後輩から認められたいのに、実際の行動は煙たがられてしまう。このジレンマはつらいものがあります。とても苦い思い出です。
数値目標以外に「育成目標」が不可欠
それでは、忙しいマネジャーが後輩に一目置かれる存在になるには、どうしたらよいのでしょうか。その答えは、組織の役割に関係があります。
組織には、単に実績数値を上げるだけでなく、その過程でメンバーの能力向上も期待されています。したがってマネジャーは、組織の数値目標を個人に割り振るだけでなく、各メンバーに対する「育成目標」を持っている必要があるのです。
マネジャーは、各メンバーの特質を把握し、彼らが将来何をしたいのかを踏まえた上で、「今日は何をやった、いくら売り上げた」という話を聞くだけでなく、
「君には、大型の案件を取りまとめられるようになってもらいたい」
「君には、新規顧客に対する提案力を高めてほしい」
といったスキルや役割に対する「育成目標」を提示し、半期ごとにすり合わせ、それをメンバーが了承し実行するプロセスを踏む必要があるわけです。
これを共有しておくだけで、日々の報告の意味合いや、アドバイスの内容が変わってきます。お互いの目的意識が揃っているので、それと照らし合わせた検証ができるわけです。
逆に言えば、このような上位目的を確認しておかないと、日々の会話は単なる実績報告にとどまり、「数字集計担当者」と陰口を叩かれることになるのです。