W杯が開幕する11日の第2試合で、ウルグアイと対戦するフランス。前日の記者会見でドメネク監督は「何の確証もない」と語るなど、強気な発言は一切なし。自信に満ちあふれているわけではないが、少なくとも「やるべきことはすべてやった」という落ち着きが感じられる。

 強化試合では、3戦して1勝1敗1引き分けとパッとしない結果に終わったが、これまで一貫して「重要なのは6月11日に準備ができていること」と批判をかわしてきたドメネク監督。その準備が整ったかどうかを訊かれると、「何日何時に向けて準備を整えると言ったって、実際はそれほど単純じゃない。サッカーは厳密な科学じゃない。我々の準備がウルグアイより少し先を行っていることを願うばかりだ」と慎重だ。

 ウルグアイが前日、試合会場となるグリーンポイント競技場でピッチの感触を確かめたのに対し、フランスは別の練習場で調整。選手たちは試合当日に初めて会場の状況を知ることになるが、これにはドメネク監督独特の主張がある。

 「私はつねにホームだの、アウェイだのという考えに抵抗してきた。私にとってグラウンドはつねに、緑の芝が生えた105メートル×68メートルの長方形、ラインはいつも同じところに引かれ、11人の選手が11人の選手とぶつかるところ。それは香港だろうとどこだろうと変わらない」と相変わらずの“ドメネク節”を披露した。

 初戦を必ず勝ちに行く、という姿勢で臨まないのもドメネク流だ。ウルグアイ戦の“理想のスコア”を問われた監督は、「まったくわからない。初戦に勝ってグループリーグを突破できないチームだってある。そりゃいつだって勝つに越したことはない。初戦は重要だが、すべてを決定づけるわけじゃない。まずは初戦を戦うこと。あとはそれからだ」と答えた。

 たしかに決勝まで進出した前回ドイツ大会も、グループリーグ最初の2試合を引き分け、3戦目に勝って辛うじて決勝トーナメント進出を果した。その一方で2年前のユーロ2008では、初戦ルーマニア戦をスコアレスドローで終え、その後2連敗を喫して敗退したのもまた記憶に新しい。

 ユーロ2008では、ジダン引退の後遺症を引きずるとともに、世代交代に失敗して敗れ去ったフランス。その後の2年間で新しいチームに生まれ変わることができたかといえば、それもたしかではない。MFラサナ・ディアラの欠場を機にこれまでのダブル・ボランチをあきらめ、4-3-3の新しいフォーメーションに移行したのは、W杯合宿に入ってからのことだ。アンリを控えに回し、エヴラを主将に抜擢してからも間もない。ドメネク監督が記者会見で語ったことは、“すべてが未知数”であることをいちばんよく知る者の言葉とも言えそうだ。